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車の鍵

投稿者:博多の久美子 ◆8c3IMSHlp6   kumiko.k
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2024/06/29 15:34:28 (b9Qw5PbV)
 初春の深夜二時、私は深夜のドライブに出かけていました。
いつもの様な露出ドライブでは有りません。まだ(?)服はちゃんと着ているし
目的地だって有るのです。

そこは自宅から車で1時間程で到着する空港傍にある公園。
何度も来ている私の露出スポットです。

(よし……急いで準備よ)

 私は駐車場の一番隅の方に車を停め、ロックはしないまま鍵を持って外に出る。
そして公園の中を歩き遊歩道から外れて街灯に照らされていない場所へ向かう。
灯りが無ければほとんど何も見えない暗闇。その状態で手に持った車の鍵を途中の公園内の
木の枝に引っ掛ける。そのまま道を引き返して車内に戻り、服を脱ぎ始める。

(緊張するわ)

 今夜の私の決めたルールはこうです。車の鍵を外のどこにあるか解らないようにして、
車の中で服を全て脱いだ後、車から出て外から鍵をかける。
服は車内に放置するため、鍵を見つけない限り服を着ることはできない。

(服は閉じ込めないって、考えたけどやっぱりそれじゃダメ)

 ルールを作って自分で退路を断つ。そこで生まれたリスクが興奮を掻き立てる。
服を全て脱ぐと、私は音を立てないようにそっとドアを開けて車内を出る。

 事前に何度か試してよく解っている。私の車は外側から鍵をかけるのが簡単だ。
ドアの外側の取っ手を引いた状態で内側のドアロックを押し込み、そのままバタンッ、
という音と共にドアが閉まる。ガチャガチャと何度か引いて確かめてみるが開く気配は
全く無い。

(ああやっちゃった! 本当にやっちゃった)

 衣服は車の中。身に着ける物は何も無い。これでは、嫌でも暗闇で木に引っ掛けた鍵を
何がなんでも探さなければならない。
服をすぐに手元に有り着られる状況とそうではないのとでは緊張感が全く違う。
今はどうやったって、すぐに服を着られる状況になるまで数分以上かかる。
鍵を見つけるのに手間取れば、もっと時間が掛かるかもしれない。
 
 不確定要素が異常なまでに不安を煽る。
心細さで胸が締め付けられ、呼吸は自然と速くなる。空気は寧ろ寒いくらいで体が震えているのに汗が止まらない。
だが、これはスリルがあった。自分自身が望んでいたものなのだ。

(早く鍵を見つけないと)

 素っ裸のまま、私は車を離れていく。
先ほどのように遊歩道を堂々と歩くのでなく、茂みなどの陰を使って進む。
時間帯的にここに居るのは私と似たような性癖にそれを目的で来る人達。
万が一、誰かが来た場合、身を隠せる物は何も無い。
頭がクラクラするような感覚に耐えながら、遊歩道の途中まで辿り着く。

(確かこの辺りのはず)

 目印は付けていないがおおよその場所は解る。
闇夜で木の枝に引っ掛けた鍵はパッと見では判別しにくい。
見つからない時は本当に果物狩りの様に手探りで探さなければならないだろう。
目を凝らし、木の枝に神経を集中させる。
最初の数分はまだいい。5分・・・10分と時間の経過で焦りが明白に表れる。

(ど、どうしよう。全然見つからない)

 予想以上に手間取ることで恐怖心が大きくなる。
荷物は全て車の中。鍵を見つけられない事にはどうしようもない。

(もしこのまま朝まで見つからなかったら)

 嫌な想像が浮かぶ。明るくなれば当然人も通り始める。
そんな中服を着ることも出来ず帰ることも出来ず鍵を探すしかない裸の女。
この時期なら午前五時には明るくなっているだろう。家を出たのは二時頃。
公園に来てからどのくらいの時間が経ったか定かではないが、仮に一時間とすれば、
残り二時間ほど。最早、露出を楽しむ余裕など今の私には有りません。

(さ、寒い)

体が冷えてきたのかそれとも恐怖のせいなのか、全身の震えが止まらない。
二時間と言わず、一秒でも早く見つけなければ身体がもたないかもしれない。

(もう嫌なんでこんなことに)

半泣きになりながら後悔する。鍵を隠す必要は無かったのではないか?
服を車に閉じ込める必要は無かったのではないか?そもそも車なんて使わなければ?
どれか一つ保険をかけていれば、全裸で果物狩りなどという今の惨めな状況は避けられた
はずである。以前に同じ様な露出を成功させたせいで慢心していたのかもしれません。

(マジでねえぇべ)

しばらく探しても鍵は見つからない。

(駄目だもう限界)

北海道育ちの私でも寒さが身体に堪える。
一旦鍵探しは止めて、どこかで暖を取らないと動けなくなる。
とは言っても、この近くで隠れられる所となると場所は限られる。

(やっぱり、あそこしか思いつかないな)

 公園に設置されている、公衆トイレ。
暖かいと言うには程遠いが風を遮断してくれるだけで全然マシであった。
私はトイレの個室に入り、蓋を閉めた便座の上で膝を抱えて体育座りになる。
とにかく今は体を温めるのが先決です。

(温まったらすぐ鍵を探さないと)

 しかし疲労もピークの状態で腰をかけてリラックスした所為か、急激な眠気が私の瞼を
襲いました。心身共に疲れ果てている私がその睡魔に抵抗する術は無く、そこで意識は
ぷつりと途切れた。

(あ、私一瞬寝た?)

目が覚め、一瞬自分の置かれている状況を思い出すのに時間がかかる。

(・・・・・・)
(そうだ、鍵!)

僅か一瞬でも寝てしまった事を後悔し慌てて日和個室の扉を開ける。
そして、トイレを出ようとしたところで足が止まる。

(嘘!)

 景色が先程より鮮明に見える。草や土の色、木や建物の位置、公園の一部がぼんやりと
見え始めている。そこに広がる光景は朝が近い事を私に告げています。
休日の未明。私の鍵探しはまだ終わっていない。
どこかの木に引っ掛けた車の鍵を見つけなければ私はずっとこの状態のままです。

(ああっ失敗だ! あたしは馬鹿だ!)

気が緩んで寝落ちしてしまったことを後悔する。
明るくなったこの状況では外に出れば見つかる可能性が跳ね上がる。

(どうしよう・・・?)

考える。考えるしかない。考えるのをやめたら、そこで終わりです。
外に出れないなら再び暗くなるまでトイレに居続けることになる。
もちろん食事は一切取れないが一日だけなら何も食べなくても平気かもしれない。
しかし、問題は別のところにある。

(考えろ、考るのよ久美子)

当たり前のことだが、このトイレの利用者が存在する。
どの程度の頻度で利用されるかは解らないが、休日だし普通に考えても昼間に
家族連れや公園利用者が居るだろう。
つまり私がここに留まる限り、いつかは来てしまう誰かと遭遇する・・・

(やっぱり無理だわ・・・)

 薄々気付いてはいましたが、残る選択肢は一つしか無いことに。いつまでもトイレに
隠れていても事態は進展せず、それどころかいつかは見つかってしまう。
ならばもう腹を括って外に出るしかないのだ。
私はトイレの入口付近から薄暗い外の様子を窺う。今現在が何時なのか正確には
解らないが、まだ早いのか人はおらず、誰か通るような気配も無い。

 当然、外は少し明るくなってきている。深夜よりも遠くの距離から見られる
可能性が有る為、警戒しなければならない範囲もぐっと広がる。
しかし裏を返せば暗くて見つからなかった車の鍵を見つけるチャンスが有る!

(早朝に散歩する人が来る。行くなら、早く行かないと)

 頭では解っているが脚が動かない。
トイレという一時の安全地帯が私を本能的に縛り付けている。
ようやく一歩を踏み出しても、足元がおぼつかない。脚がガクガクと震える。
露出の時、最後の一枚、ショーツを下ろす時の様な感覚になる。

 普段はこんな明るい時にこんな場所で露出などしない。
それは何より、他人に見つかる事を恐れているからである。
元は私の慢心が招いた事態とはいえ、これは自分にとって望まない露出。
スリルが快感になることもない。頭の中は既に、スリル<恐怖でしかない。

 何度も周りを確認しながら、ゆっくりと私は歩を進める。
胸と股間は手で覆っている。どの道その姿を見られれば終わりであることに変わりない。
しかしその行為に意味は無いと理解しながら手で隠さずにはいられない。
茂みなどの陰に隠れながら進み、鍵を掛けた木の辺りまでは辿り着く。
だが、そこで完全に足が止まる。

(む、無理、こんな所、絶対無理!)

 遮蔽物となる木の数は多いが明るくなった景色内に白い全裸の私の姿は鮮明に
映し出される。そんな場所で裸の姿で居れば絶対に見つかってしまう。
しかし、鍵がこの辺りにある可能性が高いのも事実。
どうにせよ、鍵が見つからない限りこの露出が終わることは無い。
危険でも希望があるなら、それに賭けるしかない。

(誰も来ませんように)

 そう自分に言い聞かせるように、私は姿勢を低く保ったまま、茂みの陰から木の枝を
見つめる。しかし明るいとはいえ小さな森の中。これではパッと見てどこに鍵が有るかは
解らない。誰かが来る前にと急いで探すがなかなか見つからない。

(おかしい、この辺ずっと探したのに無いなんて・・・)

そもそも探す場所が違っていたのでしょうか?
暗闇で鍵を掛けた木の場所がそもそも記憶と違っていたのでしょうか?

(じゃあ、もう少し手前?)

目線を移す。遊歩道から入った場所辺りはまだ探していない。
遊歩道は公園の外側に位置しているため、かなり道路が近い。
誰かが通りかかる可能性も高くなる。とは言え、私に迷っている時間は無い。
最後の希望にすがるように、私は遊歩道へ向かいました。

遊歩道からなるべく見えないように茂みに隠れつつ、私は木の上に視線を行き渡らせる。
しかし、特に何も見当たらない。

(嫌、ここからじゃちゃんと見えないもっと近付かないと)

 だが、道路は目の前。誰がいつ通るか解らない状況で茂みから身を乗り出すのは
危険すぎる。危険であるはずだが、先ほどからずっとこの状態であるため感覚が
麻痺していたのかもしれない。
私は特に確認もせず立ち上がり遊歩道の先に立つ人影を目にする。
すぐにまたその場にしゃがみ込み、口に両手を当てて息を殺す。

(人!人が居る!いつから居たの!?見つかった!?)

 油断していました。車や自転車とは違い、野外空間で歩行者が近付く前に音だけで
気付くのは難しい。そのために周囲を何度も確認していたはずなのに、肝心な時に怠って
しまった。今までは気が付かなかった足音がする。
ざっ、ざっ、と遊歩道の土を踏む音が徐々に大きくなる。

(やだ、こっち来る!)

 恐怖で身体が動けずに隠れていると、足音が途中で止まる。
その後、ピピピという電子音がして周囲も静かになった。
私は近付いて来ないのかと、恐る恐る茂みの陰から様子を見る。

 わずか数メートル先。遊歩道を人影が歩いてくる。
ジョギングでもしていたのか上下ジャージ姿で休憩中のようだ。
この時間に公園をジョギングするのが日課の様な雰囲気です。
しかしこの距離からでは人影の性別や年代は解らない・・・・

(見つかっていない?)

ふと、人影が振り返り、何かに気付いたように木に近づいて行きます。

(あああああっ――――――)

人影が一本の木の枝の先をまじまじと眺めています。
私は人影の視線の先に有る、それが何であるかを悟りました。

(私の鍵だ!)

最悪の状況に陥った。ずっと探していた車の鍵が今、他人の手中にある。
人影は眺めている、それが何の鍵であるか解ったのかもしれない。
ぐるりっと周囲を見渡している。

(どうしよう・・・)

 鍵をそのまま盗られたらもちろんマズい。車まで盗られるかもしれない。
しかし鍵をどこかに届けられてもマズい。交番だろうが公園の管理者だろうが、
人の手に渡れば私がそれを回収する手段は無い。
そんなことになるくらいなら、今ここで出ていって正直に話すか・・・
全裸の姿をこの人影に見せるか・・・

(どうしよう……どうしよう)

この人影が男なのか女なのか?
男なら良い人なのか悪い人なのか?
女なら親切な人なのか意地の悪い人なのか?
様々なことが思い浮かぶがやはり怖い。足がすくんで動けない。
目には涙もこみ上げてくる。
呼吸も荒くなってくるが、音だけは漏れないように手で押さえる。

しばらく鍵を見つめていた人影が、やがてジョギングの再開とばかりに
ゆっくり走って公園を去って行った。

(置いてった?)

男が完全に公園から遠ざかったのを見計らい木に駆け寄る。

久「あったぁぁぁ」
 
私の車の鍵が、木の枝に引っかかっている。
自分でどこかに届けるのが億劫だったのかもしれない。
無責任な行動ではあるが、私にとっては最も有難い選択でした。

 私はすぐに駐車場に戻って車の中に入り服を着ます。
服を身に着けエンジンを掛けると暖房を全開にします。
その瞬間どっと疲れが来て私はまたその場ですぐに眠り込んでしまいました。

 車外から聞こえる子供の声で目が覚めました。
時間はもうお昼前・・・・私は昼食のため何処かに立ち寄ろうとしてミラーを
見て気が付きました。

(この顔じゃ、何処にいけないわ)

家路を急ぐ私でした。
 
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3
2024/06/29 17:45:12    (x6wEPROb)
自ら退路を断ってギリギリのスリルを味わうストイックな変態な久美子さん、素晴らしいです。
文章も小説を読んでいる気分にもなれて引き込まれました。
2
投稿者:たけし
2024/06/29 16:01:35    (UWVw.alK)
臨場感あふれる筆力もあいまって、
最後まで楽しく読ませていただきました。
波乱万丈、どきどきの露出体験でしたね。
次回作も期待いたしております。
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