(疲れたなぁ)
私は真っ暗な住宅街の道を一人で歩いていた。
今日は少し前に誕生日を迎えた友達の発案で、仲の良い友達三人と女子会をしました。
しかし正直に言うと、最近お酒が飲めなくなってきた。以前ほど美味しいとも思わないし、
飲んだ後に力が抜けて眠くなる感じがあまり心地良く思えない。
(まあ、みんな楽しそうだったからいいべ)
二次会のカラオケでフリータイムぎりぎりまで歌っていたので、時刻はもう午前三時をまわっていた。
流石に、この時間帯だと駅前でも人通りがほとんど無いうえにタクシーも捕まらない。
車もたまに通り過ぎる程度なので、カラオケに入る前の雑踏からは想像できないほど静かだった。
(この辺りはあんまり通ったことないなぁ)
自宅に帰るまでの道中、大きな那珂川を渡るための橋まで歩くと遠回りになるので、私は普段通らない道を歩いていました。
(ん?)
ふと、川沿いを歩いていると見た事がない風景に視線が留まる。
道路が不自然に途切れ、川に小さな橋が掛かっているように見える。
(あれ?ここ、何処なんだろう?)
何の気なしに土手沿いにある小さな橋を眺めると、対岸に向かってきちんと渡れる橋のようです。
(あ、この橋は那珂川の上を渡してるんだ)
それは歩行者専用の小さな橋でした。
(向こう岸までが遠い)
那珂川を跨いで掛かっているその橋は、両端にバイクが通れないように道の中央にポールがそれぞれ設置されており、岸から岸までざっと50メートルほどある。
(っていうか、これは・・・)
私は気付く。
住宅地の中に突然現れたこの橋は、車が通れるほどの道幅も無く、自転車でさえ一度下りて押さなければ通れない。
下の土手を歩く人からも見えず、土地勘のある人か私の様に迷ってここを通らなければ橋の存在にすら気付かない。
もちろん傍に上から見られるような大きな建物も無く、近くに掛かる大きな橋からは程よく遠いので橋の様子までは解らないだろう。
この橋は屋外空間でありながら、実際に橋の上に来ないとその様子が解らないという閉鎖空間になっているのです。
つまり誰かが通らない限り、誰も私の存在には気が付かない。
ドクン、と私の胸が熱くなる。
(福岡にこんな場所があったんだ)
そもそもこの橋の存在自体が異様なのです。
すぐ近くには歩行者も車も通れるもっと大きな橋がありよほどの事が無い限りそちらを利用するでしょう。
恐らく昔から有った橋だが利用者が少なくても取り壊す機会が無くて残ったままなのだ、と私は推測した。
(ここなら)
上からも下からも見えない。誰も来ない。
顔が火照る。酔いは既に醒めているはずなのに、思考が働かない。
(大丈夫、一瞬なら絶対バレないはず)
そう思った時点で、私はふと考える。
一瞬なら、確かに誰も橋に近づいて来ないかもしれない。絶対見られることはない。
しかし、本当に望んでいることは、そうでは無い。
私が求めているのはスリルだ。絶対にバレない、という状況はあまりにつまらない。
(そうだ!)
心の中で私は『ルール』を決め、着ている服をその場で脱ぎ始める。
衣類を一切身に着けない。それは、裾を捲って局部を晒すのと大きく意味合いが違う。
脱いだ状態と、はだけさせた状態では、いざという時の対処の速さが変わってくる。
はだけさせるだけならすぐに元の状態に戻せるが、完全に脱いだ状態では服を着る
手間がかかり、咄嗟に隠すことができない。
やるなら脱ぐ。
そこに生まれたリスクの大きさで、得られる快感の差が生まれるのです。
(よし)
全裸になった私は、脱いだ服と鞄を足元に置いて橋に立つ。
これは今、私が決めた『ルール』だ。
今からこの橋を全裸で渡り、向こう端まで着いたら再び戻ってくる。そこで初めて服を着ることができる。
つまり橋を一往復するまで服を着てはいけない。
あくまで私が勝手に決めたルールだ。強制力も罰則も無い。別に変えてもいい。
しかし、私にとっての露出はゲームに近い。見つかればゲームオーバーだが、ルールを破ったらそれもまたゲームオーバーなのです。
(もう決めたんだから、やらなきゃ)
これはゲームだ。
そう自分に言い聞かせるように恐る恐る、私は足を踏み出す。
橋の長さは僅か50メートル。往復なら普通に歩いて一分ほど。
しかし、恐怖で足がすくんでなかなか前に進めない。
走れば一分もかからない挑戦である事は頭で解っているが、走る勇気などとても出ない。
呼吸が乱れ過呼吸になりそうです。心臓がバクバクする。
もう引き返そうにも、徐々に引き返す距離も遠くなっていく。
橋の半分ほどに差しかかる時、引き返したい気持ちが一層強くなるが私はルールを破らない一心で耐える。
向こう岸まで着けばどの道戻らなければならないのです。
引き返したいという思いはだんだん小さくなる。私はようやく橋を渡り中央のポールにタッチする。
(後は戻るだけよ)
その時です。
ブィーーーン
背後から聞こえてくるバイクの異様なマフラー音。
判断は一瞬でした。私は全力で橋の上を走る。
橋は対岸に向かって一直線上に伸びている。その先にはバイク停めのポールが設置されている。
その距離は僅か50メートルと短い。いくら私の足が遅いと言っても走れば10秒ほどでたどり着ける。
10秒以内にバイクの主がここへ辿り着けば、私は見つかる。
橋の半分を越えてからも、私は脇目も振らずに走り続ける。何故ならここは完全な一本道。隠れる場所は無いのだから向こうまで逃げるしかない。
走ると共に乳房が激しく揺れる。揺れる胸に痛みも伴うが、今は気にしていられない。
橋を渡り切り、足元の荷物を引っ掴んでその先にある木陰に駆け込む。
住宅地側の道に出ると、素早く近くの裏路地に入って身を隠すが幸い誰も居ない。
(こんな時間になんで人が、っていうか、見つかった!?)
上がる息を押し殺して、私はじっと身を潜めます。
やがて対岸にマフラー音を響かせながら原付バイクが走り去るのをじっと待ちました。
やがてバイクは私に気が付いた様子も無く、その場を離れて行った。
(バレてなかった?)
ほっ、と息を吐くが、身体の熱は冷めない。
見つかりそうになった事と、全裸で橋の上を全力疾走した事、そして今もまた新しい場所で露出を行っているという事実が、私の頭の中でグルグルと駆け巡っている。
(そういえば橋の上では、まだしてないや)
ソレを行うことに躊躇はほとんど無かった。橋の中央まで戻った私は橋の上で仰向けに寝転がった。
自然と伸びた指先は陰毛に隠された小さな蕾、陰核を撫で始めます。
指先で敏感になった陰核を三度撫で上げた時、下腹部に力が籠り膨らんだ。
(い、逝くっ!)
脚の爪先が攣りそうなほどピンと伸び、私は全裸の格好で橋の上で果てました。
裏路地で服を着て、私が自宅に戻る頃には既に空は明るくなり新聞配達員さんのバイクが住宅街を疾走していました。