演技のしどころです。困り果てたお姉さんを装いきれるかどうかにかかっていました。目に涙を浮かべたまま、途方にくれてみせます。演技しながら、(どきどきどき)自然と涙が頬を伝い落ちていました。茫然自失を装ったまま、ザックのところに戻ります。(どこから見てるの?)(絶対いるよね?)見極めなければなりませんでした。服を盗まれたわけではありません。場所を動かされただけでした。はだかの彼女が慌てふためく姿をこっそり眺めようとでも思って、おそらく軽いイタズラ感覚でやったはずです。(どうせすぐにみつけるからって)(そう思ったんでしょ?)でも、このお姉さんは自分の服をみつけることができていませんでした。誰もいないひとりぼっちの野湯で、「ぐすっ・・ぐすっ・・」全裸のまま立ちつくしてしまっています。(あなたのせいで)(この人、泣きそうになってるじゃない)その間ずっと、一糸まとわぬオールヌードでした。覗かれてるとも知らずに、「ぐすっ・・・」憐れにも若い男にはだかを見られまくりになっています。(もうだめ、涙が)(涙が・・・)細くて華奢なからだつきでした。焦燥のあまり、完全に顔がこわばってしまっている彼女です。アンダーヘアが薄くて、(あああ)角度によっては股の割れ目が見えていました。どうしていいかわからなくて困っているふりをそのまま続けます。(このお姉さん、かわいそう)(かわいそうすぎる)あまりにも不憫なこの女を目の当たりにして、さすがに彼も罪悪感にかられている可能性がありました。もしかしたら、いきなり飛び出してきて・・・私のほうに服を投げ返してくるような展開になることも考えられなくはありません。(でも)いまさら出てきて、(私に顔を見せるなんて)あの子にそんな勇気、あるはずない・・・(どきどきどき)途方にくれている演技をしたまま、相手の様子を窺っていました。やはり、そのような気配はありません。(だいじょうぶ)(問題ない)内心、最高に興奮している自分がいました。(どきどきどき)この女に選択肢はありません。全裸のまま死んだような目になりながら・・・力なく素足をスニーカーに突っ込んでみせます。卑怯な男・・・(見てるくせに)意地悪・・・変態・・・(こっそり私のことを眺めながら)ひとりで鼻の穴ふくらませてるんでしょ?どこから見られているのか本当にわかりませんでした。でも、たぶん・・・(たぶんこっち側)山道側に背を向けていました。よろよろになりながらも前屈みになって靴ひもをしっかり結び直します。あの子にとって、(そう私は)大人っぽい美貌の女子アナ・・・でも、どんなに知性的なお姉さんだろうと同じでした。立ったまま前屈みになったりしたら、(ほら、この女も)お尻の真ん中に穴があるのが見えています。
...省略されました。