今日は仕事の代休日で実家に帰ったら、鯵のおいしい
干物があったので持ってきたとのことで、片手に大きな
紙袋を提げていました。
　そのお返しに私は彼に夕食を一緒にと誘い、居間に通
しました。
　県外に出てる息子の代わりのような気持ちで、私は料
理に腕を振るいました。
　「ご馳走様でした。とてもおいしかったです！」
　膨れたお腹を手で何度も叩く仕草をしながら、谷岡は
本当に嬉しそうな顔を見せていました。
　それから小一時間ほど雑談して、私がコーヒーの後で
お茶の用意をするのに台所に立った時でした。
　台所の流し台の前にいた私の背後に、ふと誰かが近づ
いてきてる気配がして振り返ろうとしたした瞬間、何か
大きなものに全身をいきなり拘束されてしまったのです。
　「あっ…ううっ…な、なにっ」
　と慌てて声を出そうとした私の唇が、唐突に顔の上の
方から誰かの厚い唇に塞がれてしまったのでした。
　私の両腕に太い腕が強い力で巻き付いていました。
　一瞬、何が起きたのかわかりませんでした。
　何の予兆もなく突然に塞がれた私の口の中に、分厚い
舌が歯をこじ開けて侵入しようとしていました。
　私は当然条件反射的に、防御の姿勢をとって抵抗しも
がこうとしました。
　もがきながら襲ってきてる相手が谷岡であることに気
づいたのですが、太い片腕だけで小柄で華奢な私の上半
身は固く拘束され、もう一方の手で頭を上からわし掴ま
れ抑えつけられるようにして顔の動きを封鎖されていて、
立ったままなす術もなく身体を強く密着させられてしま
っていたのです。
　口の中で歯を閉じようとしたのですが、若い谷岡の力
まかせの分厚い舌が深い部分にまで入り込んできていて、
私の小さな舌は狭い口の中で右往左往するだけでした。
　そして口の中で逃げ惑う舌をついには捉えられ、谷岡
の厚い舌の餌食となり荒々しく絡みつかれてしまったの
です。
　まったく予想もしていなかった若い男からの激しい恥
辱の猛攻に、私は何一つ打つ手立てもなく抱きすくめら
れ唇を奪われ吸われてしまったのでした。
　そのままの態勢で私は長い時間、谷岡の荒々しい責め
を受け続けました。
　私は息苦しさと羞恥の中で、まるで心のない細い鉛筆
のように立ち竦むしかありませんでした。
　まったく身動きできない異常な拘束状態と、長く口を
塞がれたままで、私の息苦しさは更に増幅し、意識が薄
れかけようとした時でした。
　私の頭を強く抑えていた谷岡の手の力が抜け、唇も一
瞬離れました。
　「な、何をっ…あうっ」
　息を荒く乱しながらも私は、いきなり理不尽な行為に
及んできた谷岡の顔を睨みつけ、声を荒げて強く叱責し
ようとした矢先でした。
　彼の片方の手がセーターの上からいきなり、私の胸を
まさぐりにきたのです。
　「や、やめなさいっ！…あうっ、むむうっ」
　再び谷岡の唇が襲ってきて、私は唇を塞がれてしまっ
たのです。
　そのまままたしても長い時間、私は谷岡に抱き竦めら
れ、唇を吸われ乳房を激しく揉みしだかれ続けたのでし
た。
　そして私はそこで意識を完全に喪失してしまったよう
です。
　それからどれくらいの時間がたっているのかわかりま
せんでした。
　意識を失くしている間、私はこれまでに見たことのな
い夢を見ていました。
　それは男の人に抱かれている恥ずかしい夢でした。
　相手が誰なのかわかりませんでしたが、私はどこかの
室の団の上で全裸で仰向けにされ、裸の男に覆い被さら
れていました。
　そして下腹部の奥深い秘所を、顔のわからない男にゆ
っくりとした律動でつらぬかれているのです。
　もう何年も感じたことのない妖しい官能の炎に、私の
身体は次第に熱く燃え上がらされようとしていました。
　「あっ…ああっ！」
　と私はその淫夢の中で、官能的な愉悦の頂点に達した
かのような熱い昂りの声を上げ、仰向けのままの裸身を
仰け反らせようとしたところで、はっと我に返り意識を
取り戻したのでした。
　茫漠としたままの目の上に和室らしき天井が見えまし
た。
　見ていた夢の時と同じで柔らかい布団の上だというこ
ともわかりました。
　布団の上で私はやはり夢と同じで、全裸で仰向けにさ
れていて、あろうことか剥き出しにされた両足を深く折
り曲げられた状態で、身体の中を深くつらぬかれていた
のです。
　まだ少し朦朧とした目に、ぼんやりと男の人の人の顔
と裸の身体が見えました。
　谷岡浩二の顔でした…。　

　　　　　　　　　　　つづく