職権乱用ではありませんが、会社での話です。
私(男です)の勤める職場はいちおうリゾートホテルっていうのかな、そんな場所で勤めています。
会社の中には主たる部門で3部門あり、1:接待部 2:輸送部 3:料飲部 とでもしておこうと思います(実際はもっと細かいですが)
私はその中では輸送部に所属しており、ホテル専属のマイクロバスドライバーなんてやらせて頂いてます。年齢は42です。
今回お話する、その彼女が我が社に来たのは昨年の4月。新卒で入社しているので年齢は23前後かと思われます。部署は接待部、名前を「松尾ゆかり」さん。としておきましょうか。
松尾さんのイメージは・・・ 正直、最初見たときは眼中にすら入らないくらい、地味~~~・・・。な子でした。(今でもその地味さは変わりません)特徴といえば背が低い。小柄。ブサイクではないが、カワイイとは絶対に言えない。彼氏とかいなさそう。実は陰でジャニーズとか好きそう。友達はいない。
長所を言えば、家庭環境や育ちはきっといいのでしょうね。髪の毛や肌は白くてキレイです。きっとタバコとか酒とかジャンクフードを食べないんでしょうね。カラダの芯から健康そうな、そんな雰囲気もあります。ま・・・。一言でいえば真面目を絵にかいたような子でした。
そんな松尾さんも予想どおりこの会社でイジメられ始めました。他にも同期入社の子はいましたが、他の子はニコニコしていたり愛想よかったりするのに、松尾さんだけ「ツーン・・」と話しかけないでオーラを出しているのです。人付き合いが苦手なんでしょうねぇ。
まぁ、、こっちも最初から一切、眼中にない子だったので、今からお話する「とあるきっかけ」みたいなのがあるまでは何の関心もなかったのですが。
それから10か月が過ぎました。ですからこの話は今から約2か月前。2月の寒い時期の話になります。
私の勤めるホテルにおいては、既に説明したとおり部署ごとに分かれています。ですが、人手の足りないときは接待部の人間でも送迎車両を運転する事もあるし、輸送の人間でもロビーやフロントに立って接客する事もあります。「ちょっと手伝って!」の一言で部署を越えてなんでもするのが私の会社の特徴といえると思います。
そんな感じで、今年の2月の話なのですが、清掃やベッドメイクのパートのオバチャンが複数名が風邪で休んで人がいない。みたいな状況があったのです。
「次に入ってくる客の部屋がまだ片付いてないんだけど、もし暇ならやってきて!」ということでたまたまその時、事務所にいた松尾さんと私が急遽、ベッドメイキングにいくことになったんです。
これが松尾さんと初めて会話を重ねた時でもあったし、共同で作業をした瞬間でもありました。
そんな感じだったのですが、松尾さんも10か月くらい勤めあげてそれなりに仕事に慣れてきていたんでしょうね。最初の頃は同じ従業員だということで、すれ違いざまに軽く会釈くらいしかしない関係だったのですが、その時は私からの「そろそろ1年なるよね。もう慣れた? いろいろあるでしょこの会社w」という問いかけから、少し余裕が出始めていたのか松尾さんは「特に人間関係とか色々ありますよね~」なんて心を開いてくれたような感じになったのです。
いうなれば私もこの会社に来た時は散々、嫌な先輩にイビラれたし。だいたい新入生が会社のどんな理不尽なシステムでぶち当たるっていうのは私なりにも経験してきたつもりではいます。
それから私と松尾さんは年齢こそ離れてますが、私は松尾さんの良きアドバイザー、松尾さんからすれば私は安心して愚痴や本音を話せる理解者。そんな感じでホテル内での仕事中に相手の姿を見たら、他の社員には絶対に見せないような特別な笑顔で挨拶したり、優しく話しかけたりする関係になっていきました。
不思議なものです。私は私で妻子もいるし、今更20代ちょっとの子に、なにか変な気を起こすつもりは毛頭ありません。それに松尾さんの事を好みである訳でもないのです。もし僕が松尾さんと同じ20代なら、まず相手にしないであろうキャラクターなのです。
ですが、その反面の気持ちとして僕が今、40代だからこそ、そんな20代の子といい雰囲気?になっている事に戸惑いを隠せない私も居ました。これは正直な気持ちです。
ですが、そんな雰囲気があるのも会社の中の少しの時間だけ。退社して家に帰れば仕事とは違う、別の私に戻らないといけないのでした。だからこそ、、松尾さんの事をこれといって家に帰ってまで回想したりする事はなかったのです。
ただ、後で知ったことですが、松尾さんはそうではなかったそうです。
後で知る彼女の言葉を先に借りれば、「入社してから今まで、誰かから優しく話かけてもらった事なんてなかった」「気持ちを理解してくれる人がいるとは思わなかった」「田村さん(私)の存在は、私にとっての支え、そして励みになっていた」
・・という具合に、完全に異性として見られてしまったそうなのです。
今この時の事を考察すれば、今までの人生で「異性」というものが身近になかったからこそ(付き合った事もないと言っていた)男に対する免疫がなかったのだと思うのです。
それなりにオトコを知ってる子、それなりに遊んできた子であるなら、それまでの経験で真剣になっていい相手と、なってはいけない相手の区別くらいつくものだと思うのですが、松尾さんはそういう意味ではあまりに初心だったという事でしょうね。
ですが、その時私はまだ松尾さんの気持ちに気が付いていなかったのです。そりゃ当然ですよ。年齢も二回り近く離れている。それにコッチは妻子持ち。むしろ就業形態も松尾さんはこれから将来がある新卒の正社員であるのに比べ、私なんて出世街道からはとうに離れた契約社員のバスのオッサン。
そんな相手である私に松尾さんがどう思ってるかなんていう気持ちなんて、予想すらしませんでした。
そんな松尾さんの秘めたる気持ちを知らないまま、僕は毎日のように松尾さんにだけは特別に接し、仕事の事も出来る限りの事は教えてあげました。時には嫌な上司の愚痴を聞き、彼女を励まし・・・しているうちに、彼女との会話が、職場の中での一瞬だけでは収まらなくなってきたのです。
「いつか飲みに行ってがっつり話すかw」なんて言うのは時間の問題でした。
私からすれば何もナンパしたとか、彼女を酔わせてとか、そういった意図は一切ないんです。そして・・・その言葉から程なくして松尾さんと個人的に会う約束をこじつけるまでになってしまいました。
それからお互いが翌日が休日である勤務日、夕方19時頃に会社の最寄の駅で待ち合わせる事にしました。松尾さんのイメージは就業中もプライベートもあまりかわりませんでした。(そりゃそうです。仕事中のブレザースタイルの制服の上にトレンチコートを羽織っただけなので)
そして手ごろな個室居酒屋に入り、一杯やりながら会社の話をしたり、人間関係の話をしたり、そこは会社の延長線という事でよかったのですが、問題はその居酒屋から出た時の決断が、これからの私たちの関係をあってはならないものにしてしまったのです。
確かに、私も酒が入ってましたし、松尾さんもほろ酔い加減でした。「この後どうする?」と会話に出た時に「じゃ、そろそろお開きにしましょうかw」となっておけば、この後の展開にはならなかったはずなんです。
ただ、、酒のせいではないですが不思議と明日も休みだし、このまま別れるのも名残惜しいと思った私は、「まー、僕の家はちょっとさすがにこれないんだけど、もしよかったら松尾さんがどんな場所で生活してるのか見せてもらえない?いやほら、よく本を読むっていってたからさ。どんなジャンルの本が置いてるのか興味があってw」
なんて言った私がいたのです。すると松尾さんは「いいですよw」と軽く承諾しちゃったんですよね。そりゃそうです。。。その時は松尾さんは私に対して、既に特別な何かを持っていた子なのですから。。