私という人間はもともと恵まれた環境に育ったと今では思います。普通に高校、大学と行かせてもらい、大学卒業後は1年くらいアメリカに短期留学もさせてもらいました。
ここまでは・・・順調でした。
日本に帰国後、私が一番先にやらなければならない事は人より1年遅れた就職活動でした。ですが、自分は頭のどこかで「特別な人間」とでも思っていたんだと思います。普通に大卒だし英語もそれなりに話せる。だから特別なんだと。
ですがどの会社に就職しても、きっと運転免許すら持っていない、英語を話せるとはいうが資格というもので証明する事が出来ない。そんな理由なんだと思います。普通の企業に内定をもらう事に困難を極めました。
そんな時、私の頭の中にアメリカで過ごした時の、ある思い出がフラッシュバックしたのです。
それはアメリカでお世話になっていたファミリーの葬儀に参加した時でした。私はあの映画で見るような棺桶のまま土葬する、あのシーンに心を打たれてしまい、(そうだ、葬儀会社で勤めよう!!!)と思い立ったのです。
「その会社」に応募する前は、私の心は晴れ晴れしていました。どのよう人であれ必ず迎える「死」その最後のフィナーレを飾る事のお手伝いが出来たら、自身の人間性や品格の向上になるんじゃないだろうか。と夢と希望を膨らませていました。
その会社がブラック企業であるということを知らず・・・・。
その会社をABC葬祭という名前をしておきます。なぜABCと名付けたのかというと、この部分に一般的な苗字でも入れようものなら、実際に存在する葬儀会社に触れてしまう事になるかもしれないからです(それだけ葬儀会社はピンからキリまで沢山あります)
ABC葬祭は私が住む県の中での小規模な会社でした。もはや既に、この段階からブラック企業である素質を備えた会社であったのですが、まず家族経営のワンマン社長。仕事の出来ない社長の甥とかいう役員。そして社長に媚びを売る、自称:社長の古くからの知り合い。経理の事も何も知らないのに現場の財政に口を出してくる社長夫人。YESマンの社員。。。それに輪をかけて体育会系の気質。
まず基本的に葬祭業というのは、①儀式 ②搬送 ③お花 ④料飲 ⑤営業 の5つの部門に分かれています。
①儀式
実際に葬儀を取り仕切る係。祭壇の設営、式中の司会、私たちの会社では黒服と呼んでいました。
②搬送
故人をお亡くなりになった病院、施設、警察、自宅へとお迎えにいく、または火葬場へ出棺するために霊きゅう車を運転する部門です。
③お花
お通夜、葬式、初七日、以降の各種法要で生花祭壇を作る部門です。
④料飲
精進落とし、通夜振る舞い等で食事を提供する部門です。
⑤営業
営業です。
この①~⑤の部門を、大きい葬儀会社なら全部、同じ会社でやってしまうのですが、私が働いていた会社は小さな会社でしたので、①儀式の全部 ②搬送の一部(寝台業務だけ。霊きゅう車は別会社に依頼する)⑤営業 だけをやっている会社でした。
③お花 ④料飲は完全に別会社に依頼をかけていました。
この葬儀会社に勤めた私は新人であれベテランであれ、一人で①②⑤の仕事を全部やらなければなりません。
1日の流れはこうでした。
朝の8時に出社。それから死亡連絡が入るまではずっとデスクワーク。死亡連絡が入ってから病院にお迎え。そして故人を葬儀会館に安置した後に葬儀の打ち合わせ。打ち合わせした内容で③お花④料飲の協力会社に発注 式準備(祭壇の組み立て)司会進行 後片付け・・・。
毎日、家に帰るのは夜の21時~22時の間でした。
ですが、、ここでは仕事の事はもういいんです。問題は・・・対人関係でした。
ただでさえ重労働、長時間の拘束で心も身体も疲弊してくるのです。そんな中で心の支え、身体の差さえとなったが、この仕事は「死亡連絡」が入らなければ何も始まらない業種なので、何もないときは本当に何もないんですね。
一日中、インターネットして定時の17時に終わるときもありますし、場合によってはそんな状況が1か月続くこともありました。だから、立て続けに忙しくなった時に文句がいえない、というのもありました。
ですが、対人関係において心が休まる(いや身体も・・・)時は一瞬たりともありませんでした。
というのも葬儀業界の仕事って薄っぺらいんです。例えば通信業とかなら10年単位で新たしい技術が進化していき、企業もそれについていかないといけないと思うんですね。だからこそ、ひとくくりに通信業っていってもいろんな資格があるはずなんです。
ですが、葬儀業界って今も昔も変わらないんですよ。最近になって「家族葬」が増えてるとかいいますけど、ただ規模が変わっただけでやってる内容は同じなんです。
言い換えれば、、、誰でもできる仕事なんです。
そんな誰でも出来る仕事だから、「この業種を20年やってるぞ」と自慢してくる古参社員でさえも、入社2年目の私と「基本的には」やってる仕事内容は変わらないんです。20年目であれ2年目であれ、①②⑤の仕事をするだけ。
だから余計に、古参社員は自分のプライドというか立場を守ろうと後輩には必要以上に強く当たってくるんですね。まー、、意地なんでしょうね。20年やってきたんだ。っていうのが自分の心のよりどころなんだと思います。それしかないんです・・。
そして仕事内容が今も昔も変わらないっていう事は、おのずと会社環境も昭和のままなんです。というか進化させる必要ががないんです。
今では個人情報保護法っていって誰かの情報は守られていますけど、葬儀業界ではそんなもの最初から守れないんです。
例えば一般からの問い合わせで「〇〇さん、お亡くなりになったんですってね。参列に伺いたいのですが、どの会館で式をなさるのですか?」という質問に「個人情報なのでお答できません」なんて言えないですよね?w だから葬儀業界は進化しなくていい業界なんです。
それこそ20年やってるという人に20年前と今と何が変わったのですか?と聞いてみた事があるんです。彼は言いました。「霊きゅう車が新しくなったり、パソコンが新しくなったりはしたけど、業務内容は何も変わってない。規模自体は昔のほうが大きかったけど、今は縮小しているだけ。何も変わってない」でした。
話が脱線しましたが、うちの会社がどの系統のブラック企業かというと、残業代とかはちゃんと支払われるので問題なかったのですが、ただただ・・・ハラスメント系の会社であるのは間違いありません。
もともと葬儀業界は体育会系だと言われています。その理由は「誰でも出来る仕事。そして給料が安い」からです。そんな仕事をまず、、、頭のいい人、高学歴な人はやろうと思わないですよね。
だから、、タチの悪いめんどくさい人種が集まりやすいのです。
ぶっちゃけ言えば、キャバクラとかに近いんじゃないかなって思うんです。水商売という点においては。
それに、年齢層が基本高いです。その理由は葬儀業界の仕事で20代そこらが司会進行したり、霊きゅう車のドライバーをする事に需要がないんですよね。お客さんが不安がるというか。だから50代くらいのオジサン達がもっとも花形となれる仕事でもあります。
そんな、、体育会気質で、、年齢層が高くて、、タチの悪い連中が集まってる組織に、、ポツンと20代の女なんかが入ったら。。。どうなるか想像がつくようなものです。
私はこの会社で想像を絶するパワハラとセクハラを受けてきました。次回はそのハラスメントの内容について詳しくお話したいと思います。