私ではなく、妻の妹の話である。正確に言えば、その夫のことだ。
これがろくでもない男で、正直ヤクザものである。筋金入りならまだしも、定職も持たずにフラフラとしているだけの遊び人を気取った愚か者である。
義妹は、結婚に一度失敗して二度目の伴侶にこの男を選んでしまった。バーでホステスをしているときに口説かれたらしいが、顔だけはいいので、寂しさも手伝い、つい、ほろっとしてしまったのだろう。だが、ふたを開ければ、まともな仕事もせずに金を無心するだけの甲斐性なしだったわけだ。おまけに気に入らないことがあると、すぐに手を上げるDV男でもあったのだから始末に負えない。
男の本性に気付いて別れようとしたときには遅かった。義妹には、まだ幼い娘が二人いて、その二人を人質のような形で盗られてしまったからだ。幼いとはいっても、すでに上の子は5年生にもなっていたから自分の足で逃げ出すことはできた。問題なのは3年生のほうで、これが義弟から離れなかった。
離れなかった理由はわからないが、深刻だったのは性的虐待を受けているのがはっきりとしていたからだ。
妻に頼まれて下の娘を取り返すために彼らの住むアパートに行ったことがある。かねで解決できるのならと、多少なりの金額を封筒に入れて訪れた。
応対に出た義弟は私が部屋に入ることを渋っていたが、かねの存在を匂わせると態度を一変させてすぐにドアを開けてくれた。まだ昼間だったというのにカーテンは閉めっぱなしで、不快な匂いのする部屋だった。薄暗い部屋の中に一歩足を踏み入れて、思わず息を飲んだのは、そこに一緒だった姪が裸だったからだ。
彼女は私の姿を見ても臆することもなく、裸のまま部屋の中を行き来していた。
どうして裸なんだ、と訊ねると、義弟は、さっきまで寝ていたからだと、薄ら笑いを浮かべながら答えた。
姪を帰すつもりは鼻からないらしく、それでもかねだけは欲しかった彼は、面白いものを見せてやると言って姪を呼んだ。
そして胡座をかいて座る義弟の膝の上に乗せたのだ。姪と向かい合わせになりながら、奴は自分のペニスを掴み出すと、姪の玩具のような性器にあてがった。そして、やれ、と義弟が言ったと同時に姪は小さな尻を落としてそのペニスを体内に隠していったのだ。
痛がる素振りはなく、姪がそういった行為に慣れてしまっていることを容易に教えてくれた。そして彼女は小さな尻を上下させながら、義弟にしがみついて切なそうな声まで出したのである。
口をだらしなく開ききっていて、どこか正気ではないようにも思えた。
義弟は驚く私に、金をくれるなら、あんたにもやらせてやる、と言った。むろん応じるはずはなく、お前、正気か、と私は激しくなじっただけだった。
義弟の腕の中にある背中はあまりにも細くて小さかった。そんな女の子に、なんてことをと憤りもしたが、怒りが持続しなかったのは、姪がそれを喜んでしまっているからだった。
どうやって手懐けたのかなんてわかるはずもないが、あの時の痴呆のような姪の表情を見る限りでは怪しいクスリでも使っていたのかもしれない。
私の叱責に開き直った義弟は、お前らの金なんかいらない、とうそぶいた。そして、かねはこいつが稼いでくれるとも言った。こいつとは、むろん姪のことだ。
あまりの異常な光景に吐き気まで覚えて、逃げるようにアパートを出たが、その事実を私は家族に伝えなかった。伝えたところでどうなるものではなく、真実を知ってしまえば、さらに苦しむだけになると考えたからだ。
だが、私が独りで抱え込んでいるあいだに、義弟は姪を連れてどこかへと姿を消してしまった。
3年前のことで、いまだに彼らの行方はわかっていない。