僕が初めて恋をして精通した頃の話だ。それは甘くもあり、苦くもあった。
僕が通っている小学校は田舎と都会の中間と言える街にある。
僕の担任である女の先生が初恋の人だった。しかし、残念ながら付き合っていた男がすでにいた。
その人は僕が通っている小学校のOBでもあった。先生の名前はかほ、大先輩である男の名前は裕也。
かほ先生と裕也先輩の付き合いは長く、かほ先生もまた小学校のOBで、裕也先輩とは2歳上の幼馴染の関係にある。
かほ先生は22歳の新人で裕也さんは20歳の大学生だった。子供の僕が介入できる余地は最初からどこにもなかった。
2人の関係をクラスの皆で知った際はよくからかったものだが、その際に聞いた話ではかほ先生と裕也先輩が結ばれたのは
先生が大学生、裕也先輩が高校3年生のときで、裕也先輩の家庭教師として再会した日から交際し、そのまま恋愛関係になった。
当然、僕は裕也先輩に嫉妬した。それでも裕也先輩もかほ先生同様、憧れのかっこいい人でもあり、かほ先生を幸せにできる人はこの人しかいない
と思ったのもまた事実だ。
裕也先輩は大学生ながらも働いている身で仕事の都合上、母校に来ては壁の修繕、校庭の植物の手入れなどを手がけ、後輩である僕たちには大先輩にして
頼れるお兄さんとしての関係を築いていた。男子にも女子にも人気でそんな時、彼女のかほ先生と再会したのだから、誰もが運命の再会だと思った。
もっともかほ先生のほうは裕也先輩との再会は計算済みで、サプライズとして自身が勤める学校の名前を言わなかったそうだ。
そしてある日、小学校の庭園に石膏像のモニュメントを設置する企画を聞いた。そしてそれはかほ先生を模した物に決まった。ただし、身体の一部の像というわけではない。
かほ先生の裸を模したヌード像だ。それを聞いた際は僕はもちろん、全校生徒の男子や男性教師も顔を赤くしてドキッとした。なぜ裸のかほ先生になったかというと、石膏像職人もやっている
裕也先輩の進言で学校を守る女神は、教師で卒業生でもあるかほ先生がふさわしいからというのが一番の理由だそうだ。それを作るのが同じ卒業生である裕也先輩だからそれも感激だ。
もちろん、自身の裸の像を造ることを宣言されたかほ先生も顔を赤くしたことは言うまでもない。
像を造るにあたってかほ先生のご両親は了承済みだそうだが、やけに早いなとも思った。前々から話し合って決めていたのだろう。