「私に見てほしいんでしょ」
ぽつりと落ちた陽子の声に、俊雄はびくりと肩を震わせた。
「えっ、、、」
陽子に心の中を見透かされているようで、抵抗する気持ちが薄れていく。
「自分の気持ちに正直になっていいのよ」
子どもを諭すような穏やかな口調に、股間を押さえる両手の力が抜けていく。
心のどこかで、こんな状況を望んでいたのではないか──そう思うと、もう言い訳はできなかった。
「、、、はい」
喉の奥でかすれた返事をして、俊雄はゆっくりと股間から手を離した。
自分のいちばん恥ずかしい部分が、何の防ぎもなく空気にさらされる。
視線を上げられないままでも、陽子の目がそこをじっと見つめているのが分かった。
恥ずかしさでその場から消えてしまいたいのに、どこかで「見られている」という感覚が、身体の奥をじわじわ熱くしていく。
「勃ってるわね」
陽子に言葉で指摘され、俊雄は全身が熱くなるのを感じた。
恥ずかしさとは裏腹に、股間の熱はさらに増していく。
「私の言うこと、聞けるわよね」
「は、はい」
「両手を上げたまま、ドアの前に立つのよ」
「えっ、ドアの前ですか?」
「そうよ。早く行きなさい」
「わ、わかりました」
俊雄が両手を上げたまま、よろよろとドアの前まで移動すると、陽子はその横に立った。
「このドアの向こうには、まだ残ってる人がいるのよ。私がこのドアを開けたら、どうする?」
「えっ、こ、困ります」
口ではそう言いながらも、俊雄は両手を上げたまま、ドアの前から一歩も動かなかった。
逃げようと思えば逃げられるのに、その場に釘付けにされているようだった。
今このドアを開けられたら、全裸の自分が丸見えになってしまう。
そう分かっていながらも、俊雄は腕を下ろすことも、その場から逃げ出すこともできなかった。
どうするかを決める権利を、もう自分ではなく陽子に預けてしまっている──そのことに、うすうす気づきながら。
口では「困ります」と言いながら、両手を上げたままドアの前から動こうとしない俊雄を、陽子は横目でじっと見つめた。
逃げ道が残されているのに、自分でそこに立ち続けている。
(ふふふ、思った通りね。これから、もっともっと恥ずかしい思いをさせてあげる)
ドアを開けるつもりなど、最初からない。
ただ、開けるかどうかを決める権利を、自分に預けて震えている俊雄が、愛おしくてたまらなかった。
この男が、どこまで従ってくれるのか。
試してみたいという気持ちが、さっきよりもはっきりと形を持って膨らんでいく。
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