「お待たせ」
「あ、柊木さん、その格好は……」
不意に視線が上から下へと滑り、俊雄は慌てて目をそらした。
「ふふふ、私はサービス残業よ」
陽子は冗談めかして笑う。
「えっ、そ、そうなんですか。私のために、すみません」
「大学の卒レポじゃないんだから、落ちたら卒業できないってわけじゃないけど、、、。
鎌田くんだって、最初から罰点つけられたくないでしょ?
私だって、教育係に罰点つけられたくないし」
「は、はい。ありがとうございます」
礼を言いながらも、喉がひどく乾いているのを自覚する。
研修中には意識しなかった陽子の艶やかさに、胸の鼓動がいつもより速くなっていた。
「そんなに緊張しなくていいわよ。
鎌田くん、私の講習のとき、ずっと私の顔を見てたわね。すごく視線、感じちゃったわ」
「あ、す、すみません。つい、その、、、。」
うまく言葉が出てこない。
「つい、どうしたの? 怒らないから、言ってみて」
そう言いながら、陽子は椅子を少しこちら側へ寄せる。逃げ道をふさがれるような感覚に、喉が鳴った。
「はい。実は、柊木さんを初めて見たときから、ずっと憧れてたんです。それで、なかなか集中できなくて、、、。すみませんでした」
二人きりということもあってか、俊雄は、自分でも驚くほど素直に口を割っていた。
「そんなふうに思っててくれたのね。私だって、悪い気はしないわ」
陽子は目尻を少しだけ緩める。
「私の、どこがいいの?」
しばらく黙ったまま、俊雄は言葉を探した。
「、、、容姿は、もちろんなんですけど、、、
でも、それだけじゃなくて。いつも隙がなくて、はっきりしてて。
叱られてても、不思議と安心するというか、、、。」
自分でも何を言っているのか分からなくなり、声がしぼんでいく。
「だから、つい見てしまって。ついて行きたいって、思ってました」
口に出した瞬間、体が熱くなっていくのを感じた。
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