俊雄が本社で新人研修を受けた年、同期は五人だった。男が三人、女が二人。
その新人たちの指導役を任されていたのが、入社四年目の柊木陽子だった。
陽子が人事部に配属されて三年が経ち、
「今期から新人教育を任せたい」と人事部長に声をかけられたのは、その少し前のことらしい。
彼女は迷わず引き受けたと、あとで人事の先輩から聞いた。
まず取りかかったのは、新入社員のデータに目を通す作業だったという。
みんな、いい大学出てるのね。舐められないようにしないと。
そんなふうに考えながら俺たちのプロフィールを眺めていたのだとしたら、あの頃の彼女の態度にも納得がいく。
学生時代から美貌で男たちにチヤホヤされてきた陽子は、自然と人を見下ろす位置に立つようになっていた。
その女王様めいた気質は、研修で初めて顔を合わせたときから、すでににじみ出ていた。
「私が皆さんの教育係を務めます、柊木陽子です」
会議室の前に立った彼女は、落ち着いた声でそう名乗った。
初めて目にしたときから、俊雄はその美貌と、すらりとした立ち姿に目を奪われていた。
自分とは正反対だ、とも思った。
モテない学生時代を過ごしてきた俊雄にとって、柊木陽子は一瞬で「手の届かない存在」になった。
そのせいで講習のあいだも、内容より彼女の横顔ばかりを追ってしまう。
何度か、鋭い視線で現実に引き戻された。
「鎌田くん、どうしたの? 私の顔に何かついてる? しっかり集中しないとダメよ」
注意されているはずなのに、その声を向けられるのがどこか嬉しかった。
自分だけ名指しで叱られているような、その感覚が。
そんな日々が続き、三か月の研修期間が終わろうとしていたある日のことだ。
俊雄は、柊木に個別に呼び止められた。
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