第37章 宝物の朝
海が目を覚ますと、矢島がすぐ横に添い寝をしていた。
大きな手が、ゆっくりと海の頭を撫でている。
「起きたかい?」
「……梵様……ここは……?」
「カーテンの中だ。みんな片付けをしてるよ」
会場の喧騒が、遠くに聞こえる。
機材を運ぶ音や、人の話し声。
「打ち上げするらしい。呼ばれたが、どうする?」
「……梵様が行くなら……ついていきますよ」
「じゃ、服を着なさい」
「はい……」
海が上体を起こした瞬間、秘部から白濁したものがゆっくりと垂れ落ちる感触があった。
(梵様の……嬉しい……凄く……凄く……幸せ……)
昨夜の辱めも、羞恥も、身体に残る痛みも、すべてが今の幸福感を増幅させていた。
矢島は濡れタオルで、丁寧に海の身体を拭いていく。
「ドロドロだな。ハハハ」
「……もぅ……梵様っ……」
「さぁ、早く着なさい」
「はぃ……ふふ」
打ち上げ会場のSMバー。
軽く食事をとりながら、レディーや客たちから「海ちゃん、すごかったよ~」とはやしたてられ、海は真っ赤になって俯いた。
それでも、矢島の隣にいられることが、何より嬉しかった。
バーの奥の方で、騒がしい声が聞こえた。
四人の男たちに囲まれた女性がいた。
ほとんど抵抗できない様子で、手足を抑えられ、顔を踏まれている。
「中出しだー! 雌豚~!」
という笑い声が、はっきりと聞こえた。
矢島の表情が、わずかに変わった。
「あれ、常連か?」
レディーに小さく聞く。
「イベントから流れてきた一見さんです……」
矢島は静かに席を立ち、その場に近づいた。
リーダー格の男の胸ぐらを、一気に掴む。
「お前、この子の排卵日、知ってるのか?」
「し、しるかよ!」
「責任は取るんだろうな?」
「コイツはレイプ願望の雌豚だからいいんだよ! コイツも本望なんだ!俺の性奴隷なんだよ!」
矢島の声が、低く、冷たく落ちた。
「主が排卵日も知らんで、中出しだ? 笑わせるな」
そのとき、海も女性のそばにいた。
いつもの室長の顔になって、優しく声をかける。
「大丈夫? 彼の言うことは、本当なの?」
女性は一瞬、目を見開き、それから小さく頷いた。
「私は……変態なんです。レイプ願望が、あって……安全に……体験……」
言いかけて、突然、声を詰まらせた。
涙が、ぽろぽろとこぼれ落ちる。
「でも……でも……」
海は何も言わず、その女性を抱きしめた。
背中を、ゆっくりと撫でる。
矢島と、目配せを交わす。
「お前ら、プレイならそれなりのルールがある、プレイとしてでなければ、これは犯罪だぞ」
「責任を負える主なら何も言わん」
矢島は他の三人にも、鋭い目を向ける。
「そもそも、お前に人の主になる資格はない」
三人はしどろもどろになり、後ずさった。
「お、俺たちは……コイツが性奴隷だって……」
「お前の素性なんて、すぐ割れる。捕まりたくなければ、普通に暮らせ。こっちの世界で見かけたら……いいな」
男は転げるようにして逃げていった。
残りの三人も、慌てて後を追う。
海は女性の肩を抱き、カウンターへ連れて行った。
矢島がレディーに声をかける。
「すまんな。今日は俺の貸切にするから、みんな飲んでくれ」
レディーは申し訳なさそうに、頭を下げた。
「開放者さん、ありがとう。どうしようかと思ってたんです……恩に着るわ」
「構わないよ」
いつもの、楽しいバーの空気が、ゆっくりと戻ってくる。
女性はレディーに預けられ、海は矢島のそばに戻った。
「海、帰るぞ」
「はぃ……梵様」
帰宅後。
海はいつものように全裸になり、四つん這いで廊下を進む。
「さぁ、ケージでお休み」
「はい……梵様……」
ケージの中で小さく丸くなり、安心したように眠りについた。
矢島は、その様子を目を細めて眺め続けていた。
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翌朝。
海が目を覚ますと、矢島の姿が見えなかった。
不安に駆られてケージの隙間から外を探していると、矢島が戻ってきて扉を開けた。
「出ておいで」
海は安心して這い出てくる。
「さぁ、食べなさい」
少し深い皿に、ミルク粥が盛られていた。
海は二股の舌でペロペロと舐め、一生懸命にすする。
食べ終わる頃、矢島が呼んだ。
「ベッドへおいで」
「はい……」
「横においで。昨日の写真を一緒に見よう」
寄り添ってスマホの画面を眺める。
そこには、昨夜の海の、ふしだらでやらしく辱められた姿が並んでいた。
思わず目を背ける。
「ちゃんと見なさい」
「……はぃ」
拘束された海の横に写る看板。
『開放者の最高傑作』『宝物』の文字。
それを目にした瞬間、海は矢島にぴったりと身体を寄せた。
頭をポンポンと撫でられ、最高の幸福を噛み締める。
見ているうちに、見られ、触られ、舐められた感触が蘇ってくる。
「ンッ……ンッ……」
「フフフ。私もだよ」
矢島は血管の浮いた熱いものを見せた。
「梵様……握っても……いいですか?」
「ああ。ご褒美だよ」
海は慎重に握り、形を確かめるように緩めてはまた握る。
胸に顔をうずめ、矢島の腕に抱かれながら、自分の哀れな姿が映った写真を見つめ続ける。
(私の幸せ……この一時の……ためなら……何でもできるわ……梵様……)
足を矢島の足に絡めて、甘える。
「フフ、今日は甘えん坊か?」
「梵様……幸せ……です」
「海、キスをしておくれ」
矢島の静かな声に、海は少し目を見開いた。
そして、ゆっくりと顔を寄せる。
まず、二股に割れた舌先で、矢島の唇を丁寧に舐め上げた。
上唇から下唇へ、ゆっくりと、ねっとりと。
自分の唾液で、たっぷりと濡らしていく。
唇が艶やかに光ったところで、ようやく口を重ねた。
柔らかく、深く。
海の舌が、矢島の唇の隙間から割り入る。
二股の舌先が、矢島の舌を探り、絡め、吸い寄せる。
互いの舌が絡み合い、唾液が混じり合い、糸を引く。
ちゅっ……くちゅっ……という、いやらしくも甘い水音が、静かな部屋に小さく響いた。
海は目を細め、母性を帯びた優しさで、矢島を包み込むようにキスを続けた。
急がず、深く、丁寧に。
唇を離したとき、糸を引く唾液が、二人の唇の間に残った。
「ふふ……梵様も……甘えん坊、ですか?」
「気持ちいいな……海」
「はぃ……感じて……しまって……ンッ……あんっ……」
「凄い事になってるな。溢れ出ているぞ」
「んーーーンッ……」
矢島が唇を離し、静かに言った。
「気づいていたかい? 海の顔には、誰も触れさせてはいないことを」
「えっ……」
「舌を割った日から、お前の顔は私の唯一無二になった。
誰も知らない所が、顔なんだ。
元彼たちも、お前の舌を知らない。
本当なら二本、三本咥えさせて羞恥心を煽るものだが……
この口も、この顔も、私の独り占めの部分なんだ」
「はぁ~ンッ……梵様っ……梵様っ……」
「だから、他の人間とキスなんてしないでおくれ」
「しません! するはずないです!
梵様に言いつけられない限り!」
「ああ、いい子だ。私の宝物。
跨いでおくれ」
「……はぃ……」
海はゆっくりと矢島に跨り、熱いものを受け入れた。
熱いものが奥まで満ちる感触に、海の腰が小さく震える。
唇の間から、甘い吐息が漏れた。
「はぁ~ンッ」
「……入りましたよ……梵様……」
「腰は動かすな。言いつけだ」
「……はぃ……ンツ」
矢島は新しい傷を、一本一本、指で丁寧になぞっていく。
太腿の傷、お腹の傷、乳房の傷。
なぞられるたびに、海の身体が小さく跳ね、喉の奥で声が詰まる。
痛みと甘い感覚が同時に走り、息が乱れる。
「はぅん…」
二人の肌に挟まれたクリトリスのピアスが、小さく突き上げてくる。
そのたびに、海の腰がわずかに痙攣した。
「あっ…梵様……奥に……ずっと……当たってます……」
声は掠れて、甘く震えていた。
「気持ちいい……梵様の……形……です……」
「梵様……腰……動かさなくて……いいんですか……?」
「どうした? 腰を振りたいのか?」
「……いえ……我慢……出来ます……」
歯を食いしばるようにして答えながらも、海の内腿は小刻みに震えていた。
動かさないようにと自分に言い聞かせても、奥に感じる熱が、徐々に限界を押し上げていく。
矢島が乳首を指で軽く弾く。
身体がビクンと弾んだ瞬間、奥のものが子宮口をゆっくりとかき回した。
海の背中がわずかに反り、唇から熱い吐息が漏れる。
声にならない声が、喉の奥で鳴っていた。
「動かすなよ」
さらに念を押されるように言われ、海は歯を食いしばる。
指先が矢島の胸に力なく沈み、肩が小刻みに震えた。
「……だいじょうぶ……です……」
「我慢強いな、海。フフフ」
「……はぃ……だいじょうぶ……です……」
それでも、息はすでに上がり、頬は紅く染まっていた。
腰を動かさないまま、ただ奥に満ちている感覚だけで、海の意識は徐々に白く染まっていく。
「海、まだ朝だぞ?」
「……大丈夫です……梵様……私……幸せです……」
声はもう、はっきりとした形を保てていなかった。
吐息混じりの、甘い掠れ声。
「ああ、私もだよ、海」
「……感じて……しまい……ます……」
矢島が静かに命じた。
「海。腰を動かさずに、そのまま逝きなさい」
その一言だけで、海の身体は限界を超えた。
背中が大きく反り、指先が矢島の肩に食い込む。
声にならない喘ぎが、喉の奥から漏れ出した。
身体が小刻みに痙攣し、奥で強く締め付ける。
「……梵様が……入ってる……っ……」
掠れた声で、それだけを繰り返すように唇が動いた。
何もしていないのに、ただ「逝きなさい」と命じられただけで、
海は激しく達した。
「イッ…………クッ……………ッ」
身体が痙攣し、矢島のものを強く締め付ける。
その締め付けに応えるように、矢島の熱いものが奥深くに注がれた。
二人は繋がったまま、しばらく動かなかった。
荒い呼吸だけが、静かな部屋に満ちている。
海は矢島の胸に顔を埋め、小さく呟いた。
「……また、梵様の言葉だけで……いってしまいました……」
矢島は海の頭を撫でながら、低く答えた。
「ああ。それが、お前だ」
海は繋がったまま、矢島の胸に頬を寄せ、目を閉じた。
余韻に浸りながら、ただその温もりを感じていた。
昨夜のバーでの出来事が、ふと蘇る。
(梵様は……本物の主だ。私は、その梵様の宝物でい続ける……)
海は、静かに目を閉じた。
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