第36章 開放者の最高傑作
土曜日の夜。
お台場の会場に着いたとき、海の足はすでに少しがくがくしていた。
昼間の予行演習の余韻が、まだ身体に残っている。
「少し見て回るか。色々楽しいぞ」
「はぃ……」
矢島に腕を組まれたまま、会場を練り歩く。
ここは昼間の街とは違う世界だった。
菱縄で全身を締め上げられ、ゆっくりと歩く女性。
椅子にされて動かない男。
大きな釣り針を身体に刺し、血を伝わせながら展示されている女性。
海の心が、少しだけ軽くなった。
(……ここなら、私の姿も、浮いていない。みんな、同じ穴の狢……)
すれ違う人々が、次々と矢島に挨拶をしてくる。
男女を問わず。
「開放者さん、お久しぶりです」
「開放者さん、久しぶりのブースらしいですね」
「ああ。私の宝物の展示だ」
「えええ! その格好で連れてきたんですか? 鬼畜~」
海は矢島の腕に寄りかかりながら、誇らしい気持ちでその会話を聞いていた。
(梵様は……ここでは「開放者」と呼ばれている。私は、その開放者の宝物……)
開場30分前。
会場が慌ただしくなり始めた。
「私たちもブースに行くぞ」
中央の一段高い場所へ連れて行かれる。
そこに、禍々しい金属のフレームが据えられていた。
プレートには「開放者の最高傑作」と刻まれている。
(嬉しい……? 怖い……? 恥ずかしい……? 自分でも、よくわからない……)
フレームの横には、王様のような豪華な椅子。
矢島の席らしい。
「開場したら二時間、そこにいろ。私はここで見ているよ」
「はぃ……」
すでに海の息は荒かった。
(二時間……ずっと、見られる。梵様に、見られながら……)
「おいで。これを」
ボールギャグを口に嵌められる。
言葉を奪われ、涎がすぐに溢れ始めた。
「さぁ、全部脱ぎなさい」
「ぅーぅー……」
「脱ぎなさい」
恐る恐る、すべてを脱いだ。
エナメルのドレスも、キャップも、サングラスも。
全裸になった海は、フレームに両手両足を固定される。
足は真横に大きく開かれ、すべてが丸見えになる。
両手も動かせない。
(……本当の、展示品。私は、ただの物……)
開場。
全体の照明が薄暗く落ち、各ブースにスポットライトが当たる。
海にも強い光が降り注いだ。
すでに溢れている愛液と、ボールギャグから垂れる涎。
乳首ピアスとクリトリスピアスが、ライトを受けてキラキラと輝く。
ものすごい爆音の音楽が響き、その振動が身体を揺さぶる。
海は徐々にトランス状態へ落ちていった。
(音楽が……身体の中に入ってくる……頭が、ぼんやり……)
矢島が近づき、写真を撮る。
カシャッ カシャッ
「うーーーっ……うーーーっ……」
首を横に振りながら声を上げると、涎がしぶきになって飛んだ。
イヤーカフを着けられる。
「聞こえるか?」
こくこくとうなずく。
「綺麗だ……海。私の自慢の宝物だ。今日は大勢が私の宝物を見に来る。耐えられるか?」
「うーーううーー……」
(梵様……私を、宝物って……嬉しい……怖い……でも、梵様の宝物として……耐えなきゃ……)
最初のゲストが来た。
「すげーーー」
近づいてくる。
「コレ、触ってもいいんですか?」
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「ああ、展示品だ。傷はつけるなよ」
「はい~ うわーすげー おお~ネチョネチョだ~」
「ンーーーッ……ンーーーッ……」
乳首を摘まれ、秘部を弄ばれる。
指が滑る感触に、海の腰が小さく震えた。
(触られてる……知らない人に……でも、梵様が見てる……見てるから……いい……)
「うわー乳首に穴開いてる」
「ンーーーッンーーーッンーーーッ……」
「うーーううーー……」
(梵様……見てますか……? こんなに触られて……見てますか……?)
時間切れ。
「ありがとうございましたーー」
ゲストが去ると、矢島が近づいてきた。
頭を優しく撫で、頬にキスをする。
「あんなに触られるなんてな。床を見ろ。池が出来てるぞ」
「ンンーーンッ……」
(池……私の愛液で……恥ずかしい……でも、梵様に言われると……熱い……)
その声だけで、秘部がひくひくと反応した。
次のゲスト。
また触られ、クリトリスピアスを激しく擦られる。
「ンーーーーーーーツ……ンーーーーーーーツ……」
(だめ……そこ……弱い……梵様……見てる……? 見てるから……感じちゃう……)
時間切れ。
矢島が丁寧に濡れタオルで身体を拭いていく。
「見てたよ、海。乱暴に触られるお前を」
「ンンーーンッ……うううううーーーーっ……」
(見ててくれた……よかった……)
「ああ、見てた。しっかり務めろ」
次はボンデージ姿の女性と、四つん這いの男。
「あら、開放者さん、お久しぶり~」
「ああ、玲子ちゃん。それは最近の豚かい?」
「ええ、そうなのよ。ほら豚! 開放者さんの宝物にご挨拶しなさい!」
四つん這いの男が、海の秘部に顔を埋め、舐め始めた。
「ンーーーーーーーツ……ンーーーーーーーツ……」
(ああああ……気持ち悪い……舌が……入ってくる……でも……梵様が……見てる……)
涙と涎で顔がぐしゃぐしゃになりながら、海は矢島を見た。
矢島は足を組み、熱い視線で海を見つめている。
イヤーカフから、低い声が届く。
「惨めだな。豚がなめてるぞ。記念撮影だ」
カシャッ カシャッ
「ううううーーーーっ……」
(梵様ーーーっ……惨めな私を……撮って……)
「玲子ちゃん、その豚、そこに仰向けにしなよ。私からのご褒美だ」
人が集まり始める。
矢島が海の後ろから髪を鷲掴みにし、耳元で命じた。
「オシッコをしなさい」
「うーーーーーっ……うーーーーーっ……!」
海は必死に首を横に振った。
ボールギャグが邪魔で言葉にならない。
(梵様~……ダメです……人にかけるなんて……嫌です……うーーっ……)
心の中で叫び続けても、身体は矢島の命令に従おうとしてしまう。
「しなさい」
その一言で、スイッチが入ったように、尿が勢いよく噴き出した。
仰向けの男の顔に、熱い液体が降りかかる。
「うーーーーーッ……うーーーーーッ……!」
海は涙をポロポロと流しながら、なおも顔を横に振り続けた。
止められない。
梵様の命令だから、止められない。
(出てる……止まらない……みんなに見られて……梵様の命令で……出てる……)
その後もゲストは次々と訪れた。
四人で全身を舐め回す者、匂いを嗅ぐ者、尻を撫で、舐める者。
そのたびに、矢島は愛車を洗うように丁寧に海の身体を拭いた。
(拭いてくれる……梵様が……私を、大切に……掃除してくれる……)
二時間が過ぎた。
「よし、うちは終わりだ」
円形のカーテンが降り、ブースが遮断される。
フレームから降ろされ、ボールギャグを外された瞬間、海は声を上げた。
「梵様ーーーーーーーーーっ……!」
号泣する海を、矢島は静かに抱きしめた。
熱いキスを落とす。
海も、二股の舌で絡みついた。
周囲の喧騒が、カーテン越しに聞こえてくる。
さっきまで大勢に見られ、触られ、辱められていた記憶が、一気に蘇る。
その羞恥が、今はただ、矢島を求める気持ちに変わっていく。
「梵様……梵様……」
いつになく、強く腕にすがりつく。
騒音の中で、二人きりの時間が、かえって濃密に感じられた。
矢島は海を抱き上げ、カーテンの内側で、ゆっくりと一つになった。
「あーーーーんっ……あーーーーんっ……」
(さっきまで……あんなに見られていたのに……今は、梵様だけ……)
「梵様ーーーーーーーーーっ……ぎもぢいいいいいのぉぉぉぉぉぉ……」
「梵様……見てて……ください……私を……」
海は、喧騒の向こうにいた人々のことなど忘れ、ただ矢島の中で果てた。
矢島も、深く注ぎ込んだ。
疲労と、安心と、幸福感に包まれて、海はそのまま矢島の腕の中で眠りに落ちた。
矢島は抱きしめたまま、ずっと頭を撫で続けた。
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