第二章 視線の残香 情報処理室から会議室へ向かう廊下を、海は部下の若い女性と並んで歩いていた。 「あ、海室長。見て、あの人」 部下が小声で囁いた先、自販機の前で佇むくたびれた背中があった。 「あれ、営業部の万年係長の矢島さんですよね……なんか、冴えないっていうか」 海は小さく微笑んで、静かにたしなめた。 「そんなこと言っちゃだめよ……ふふ」 その瞬間、男性がこちらに顔を向けた。 矢島梵、五十六歳。 一瞬、目が合った。 ズキン…… 海の胸の奥が、鋭く疼いた。 (父さんが生きていれば、このくらいの歳かしら……?) そう思った瞬間、再び胸の奥がズキンと疼いた。 海は慌てて視線を逸らし、部下とともにその場をすれ違った。 それからというもの、社内で矢島と遭遇する機会が妙に増えた。 朝のエレベーター、昼休みの休憩スペース、夕方の廊下……何度もすれ違う。 最初のうちはただ「父さんの歳を重ねているから、気にかかるだけ」だと思っていた。 しかし、何度目かのすれ違いの後、海はふと自分の異変に気づいた。 (……え? 濡れてる……?) 歩いている最中、下着がじんわりと湿っていることに気づいた。 秘部が熱を持ち、蜜が少し溢れている。 海は足を止め、顔を赤らめた。 (どうして……? ただすれ違っただけで……?)
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