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【神時録:第二片】 雨上がりの犬
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雨上がり。
曲がり角の出会い頭で、お散歩中のワンちゃんとすれ違った。足が短くて胴が長い、可愛いワンちゃん。
普段なら気にも留めないはずなのに、なぜかこの時だけは、その子の表情に釘付けになってしまった。
大きなお目をぱっちり開いて、眉毛なんて無いのに見事な八の字に下げて、「🥹」と困り果てたような顔。飼い主さんが、首輪のリードを引く。
ピンと張ったロープを伝い、力がワンちゃんの首輪へと到達する。
首輪が小さく食い込み、ワンちゃんの顎が受動的に震えた。
絶望しているような表情。
けれどその瞳は潤っていて、「やらなくちゃいけない事(従うべきこと)」は、完全にわかっているようだった。
(――そうだね。君はただ、自分の今のどうしようもない気持ちを、誰かに知ってほしかっただけなんだよね)
曲がり角での、ほんの一瞬の光景。
なのに、私にはそれが走馬灯のようにゆっくりと流れ、その子の心情と、恐ろしいほど深く共鳴してしまった。
私は……後戻りのできないこの世界に、完全に足を踏み入れようとしているのだろうか。
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