【萌芽】~奈々編~
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ご主人様と奈々との濃密な時間はあっという間に過ぎさり、濃厚接触者の待機期間を終えた。
世の中はコロナ蔓延の未曽有の危機に直面し、生活も働き方も大きな変革が起きていた。
奈々にとっても、ご主人様とのこの期間は、人生を大きく変えるものとなった。
現に、これまで真面目に生きてきた奈々にとって、
一人の人を好きになり、お付き合いをし、愛を育んでいく…
この一連の流れが一般的な常識であり、それ以外を考えたことすらなかったし、
現に今もそうありたいと心から願っていることには変わりがない。
しかし、そんな奈々が、特定のパートナーを作る気がなく、不特定多数の女性と関係を持つ
ご主人様との関係を継続していることは、正直、自分でも理解できなかった。
時に人は理屈ではないのだ…
脳と身体に深く刻み込まれた、ご主人様の記憶…
完全に心も掌握され、抑えることの出来ないご主人様へ対する愛…
人生で初めて、人を愛すると言うことを悟った気がしていた。
兎に角、ご主人様のすべてが愛おしいかった…
ずっと傍に居たい…
ご主人様の腕の中で、抱きしめられながら寝ていた時、
それだけで心がすっごく満たされていた。
その感情を上手く言葉で表現できないが、すごい安心感というか
永遠に続いてほしいと思える、心が満たされている時間だった。
今は婚約していた女性とお別れした傷が癒えないだけで、
いつかきっと自分だけを見てくれることを固く信じ
ご主人様との関係を継続することを自ら選んだ。
正しく、人は感情に基づき行動し、理屈や理論で自分を正当化する生き物であることを悟らされる。
そして、奈々は今日もご主人様にすべてを管理される…
待機期間を終えると、ご主人様はすぐに関東に戻った為、しばらく会えなくなっていた。
会えない時間が愛を育むかのように、奈々のご主人様へ対する思いは膨れ上がるばかりだった
といっても、ご主人様が本社の戦略室に移動にする為の
引継ぎや引っ越しの準備期間に約4ヵ月間程、忙しくてあまり会うことができなくなるだけで
新年度からは、ご主人様は名古屋勤務になり、週末は新大阪のマンションで生活する予定なっていた。
この間、奈々はご主人様に1つ隠し事をしていた。
それは、待機期間が終了し、すぐに彼氏とお別れをしていた。
もう完全に気持ちがないのに中途半端に付き合っていくことは、
彼氏にも申し訳ないし、幼馴染で親同士も仲の良い関係でもあることから、
これ以上、周りを裏切ることはできなかったからだ。
彼氏は、奈々が別れを切り出して、初めて、その存在の大きさに気づいたようで
別れたくないと必死で泣いて拒んでいた。
そして、いつも友達優先の彼氏が、まさか泣いて縋ってくるとは想像していなかった。
彼氏を裏切ってしまったのは自分自身であることから、胸が張り裂けそうだった。
きっと昔から何をするのも一緒だったことで、家族のうような近い存在になってしまい
どこか甘えがあったんだと思う…
それは、奈々自身も少なからず、そういう部分があった。
別に彼氏を嫌いになった訳でもないだけに胸が苦しかった…
でも、別れても幼少期からずっと一緒に過ごしてきた大切な幼馴染には変わりはない。
いつか、彼氏もそう思って貰えることを心から願って、彼氏との関係に終止符をうった。
付き合いが長いだけに、しばらくの間、奈々の心もしんどい日々が続き、
気が付くと、ご主人様とのあの期間がまるで夢だったかのように、平年通りの慌ただしい師走を迎えていた。
でも、会社で庄司の顔を見る度に、あれが夢でなかったことを痛感させられる…
ビデオ通話オナニーや電車でのこと…
感触や匂いまで鮮明に脳裏に蘇ってきては、その羞恥にパンティをはしたなく濡らしていた。
ご主人様との約束事の中には、相変わらず、自ら汚したパンティは
トイレに入る度に、自ら綺麗に舐めるとるのがルールであり、
しばらくの間は、庄司と一緒の業務の時は大変であった。
ただ、せめてもの救いは、この頃の庄司は、スマホゲームに夢中になっており
休憩中も昼休みも、暇があると常にスマホをいじって、一人の世界に閉じこもっていることが多かったので
お昼を一緒に食べる機会も減っていことだ。
気まずい奈々にとっては都合が良かったが、いつも仲の良すぎる2人に
何かあったのかと勘繰るスタッフが現れるほどだった。
そんな、平穏な日々が続いていた。
一方、その頃、ご主人様も、奈々の知らないところで、重要なミッションを遂行していた。
玲との自宅での性交の最後に、兵頭不動産のITコンサルの契約を自分と結ぶように旦那を説得することを命じていた。
これはご主人様にとっても、今後の構想に大きく関わってくるので
関東に戻ってすぐに提案書を作成し、玲にメールで送っていた。
その提案は、まさに子育て奮闘中の玲に寄り添った血の通ったものだった。
オフィスに行かなくても、自宅や出先でも仕事ができる仕組み、
情報を集約することで、無理、無駄を省き、スマートに働ける。
そして、場所の制限が無くなるだけで、
予想以上に効率よく仕事ができる、目から鱗の提案だった。
玲は娘との時間も大切にできる提案に感動して、ご主人様の思いやりにキュンとした。
自分の生涯最後の飼い主として、ご主人様に仕える決意を固くさせるものであった。
玲は、この提案書を持って、先日、マンション契約をした人から打診を受けた旨を浩二に相談した。
コロナの影響で、働き方も大きな変革が起きており
中小企業が、もっと働きやすい環境を気軽に整えていけるようなモデル事案を増やしていく会社の方針が決まり
せっかくご縁を頂いたので、不動産会社のモデル事案として、
今回、コンサル料は無料で兵頭不動産のお手伝いをさせて欲しい思いを玲に伝えさせていた。
当然、システム導入などの経費は自分たち持ちだが、システム構築の設計などのコンサル料は無料ということで浩二もこの話に食いついてきた。
実は、浩二も父親から事業を譲り受け、アナログの職場をデジタル化したいと丁度考えていたこともあり
今回、モデル事案に協力してやるというスタンスで、存分に使えるだけご主人様を使い
働きやすい環境を手に入れようと助平根性丸出しだった。
奈々の知らないところで、兵頭不動産とのITコンサルが着々と動き始めていた。
この決断が、若夫婦にとって致命的なものになっていくとも知らずに…
ご主人様は、多忙の中、空いた時間で、ZOOMを利用して浩二や玲と打合せを重ね、
業務の細かい内容のヒアリングを行っていた。
その中で、浩二は横柄な態度で無理難題の要求を繰り返してきた。
協力してやっているんだからというスタンスの強いオーラ全開だった。
ご主人様は、いずれ浩二も罠にハメる予定でいたが、
少し早めることを決断した。
そして、誰にも気づかれることなく、その任務は呆気なく完了していた。
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