ダラダラと生産性のない屈託のない話題が楽しかった。
こんな日常がとても満足で。いとおしかった。
女性となって一年があっと言う間に過ぎていった。
ミサキも京二さんもすっかりお馴染みになって、いっつもいる顔になっていた。
そんな、ある日。
私もすっかり女になっていて。
京二さんを少し気にし始めていた。
「なぁ、ゆうちゃん?今夜、いい肉てに入ったからもってくわ。みんなでやこーぜ」
電話の向こうの京二さんの笑った白い歯が頭に浮かぶ。
「うん。京二さんありがとう。あたしは、じゃあミサキが帰る前にお野菜とか、買い出しにいってきとくね」
私も馴れたものだ。
しれじれ女てして話している。
「お?じゃ、それは頼んじゃおっかな!ヨロシクたのむわ」
「はい。じゃ、また夜に」
そう電話を切ったわたしは心弾んでいた。
木漏れ日が気持ちいい6月。
この日は、酷く暑かった。
薄手の紫陽花色のワンピースが自分でも爽やかで、この時期に好きな服の一着だった。
メイクも青系を選んだ。
ミュールは白でややヒールの高いものを選んで、バックは白の日本製のショルダーにした。
家を出て、まっすぐバス停までの10分。
真夏日に照らされ汗ばみながら。でも気分は爽やかだった。
バス停の日陰に腰を降ろして額の汗を拭うとファンデーションが剥がれてハンカチに薄茶色に付着していた。
まずいと思ってファンデーションをバックから出して埋め直した。
やがてバスが到着して、乗ってみると座れないくらい、人が詰まっていて、ちょっとガッカリした。
だけど、丁度エアコンの吹き出し口の真下で、涼しい風か顔から首筋へと汗を爽やかに乾かしてくれた。
そんな時だった。
あれ?いまの…
腰の辺りから、ちょっと触られた気がした。
やがてそれは偶然ではないものと変わった。
腰から、ゆっくりとワンピースの裾に目掛けて降りて行く。
あ…痴漢?
裾のあたりまでいくと、今度はゆっくり丸いお尻を大きな手のひらで柔らかく包み、ゆっくりと、でも意思をもって興味に揉みはじめた。
や、やっぱり!痴漢だ…どうしよう…
身体の奥深くに眠っていた、黒々した欲望がマグマのようにブクブクと身体中に溢れ始めた。
うっ…っ!
もう、これだけで自分の身体じゃないみたいだ。
次第にお尻からはい回っていた得も知れぬ手は、女の部分に到達していた。
ジュブッ
熱いものが、堰を切ったように右の内腿からつたって溢れた。
腰から全身にガクガクと痙攣が伝染する。
暑いのに鳥肌が立ち、だらしなくヨダレをたらして耐えている自分の姿がバスの窓にうつる。
ダ、ダメ…な、なんか くるっ!
痴漢の指が中に侵入した時だった。
全身に電流が走り、全てが真っ白な世界に引き込まれていった。
「さ、次だ。次の停留所で降りるんだ」
そう腕をガッチリつかまれて、わたしは意思を身体の感覚に殺されて否と成らなかった。
痴漢の男に腕を引かれるまま、そう言うホテルの入り口に吸い込まれた。
頭で拒んでも身体が許さなかった。
むしろ、身体は男を望みさえした。
見知らぬ男。
見知らぬ場所で。
初めての女を思い知らされた。
それも、痴漢という下劣極まりない者に。
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