長女の香とは、相変わらず、すれ違ったままです。香が家にいて私が帰宅すると、同じ空間でいることに耐えれないのか、私と入れ替わるように、無言で家を出て行きます。もちろん、行き先などは私にはわかりません。近頃では外泊することも多くなりました。ただ、高校へは、遅刻しながらも、毎日通っています。私は朝起きると、私と子供たちのお弁当と朝ごはんを作り、子供たちより早く家を出ます。私が帰宅して、その時香が外出していなくても、空のお弁当箱と、着ていた衣服が洗濯ネットにまとめて、洗濯かごの中にあります。私の衣服と絡むのが嫌で、せめても…の思いでそうしているのでしょう。最近多い、年頃の娘さんをもつ世の男性みたいな虚しさを感じる反面、ほっとします。例え、衝突が多いとは言っても、香は私の娘です。母親として、いつも香のことは気にしています。お弁当箱や洗濯カゴが、香の無事を確かめる、連絡手段になっています。
そんなある朝、いつものように朝ごはんとお弁当の用意をするのに起きようとすると、身体がだるく、少し熱っぽい感じがしました。もう少し横になりたいと思いながら、ごはんの支度をし、家を出ました。会社に向かう道で、軽いめまいもしましたが、何とか会社までたどり着きました。ただ、あまりのしんどさにぐったりしていると、上司や同僚が気遣ってくれ、その日はそのまますぐ家に帰りました。
何とか家についたのが、午前11時過ぎ。
子供たちは学校で、家には誰もいない…
玄関の鍵をさして回すと、扉が開きません。
…司が閉め忘れたのかしら?
もう一度鍵を回して扉を開けると、上で物音がします。靴をみても、全員のものが出ていてわかりません。
「司?香?誰かいるの?」
物音のする二階へ階段をのぼりました。
すると、私の寝室の扉が勢いよく開き、
急いだ様子で香が飛び出しました。
「香?何してるの?」
しんどさで張りのない声で呼び止めましたが、私から目を逸らすように、小走りで通り過ぎ、階段をかけ降り、家を出て行きました。確かめるために寝室に入りました。すると、押し入れの、私の下着がしまってある引き出しが開いていて、
ブラやショーツが散乱しています。他は特に変わった様子がないのですが、妙なことに、下着がいくつか無くなっています。しかも、どちらかというと、かなり使い古して、恥ずかしいですが、クロッチが黄ばんだ大きなシミのついたものが、一つ残らず無くなっています。
「…香が持ち出したの?どうして?あんな汚い物を何のために?」
私はすぐに、香の携帯へ電話しましたが、呼び出し音が鳴るだけで、電話に出ません。2、3回かけ直したところで、
通話拒否されました。一階のリビングに降りて、家の電話やメールもしましたが、次々と拒否されました。体調不良と、何が何だかわからない出来事で、身体の力が一気にぬけ、腰を下ろしたソファーで寝てしまいました。
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