『りょうさん、私ここは初めてで何がなんだかわからずで…。
よくここのゲームはご利用されるんですか?』
『そうですね。寝る前の暇つぶしに。ゆかりさんこそ、こんな夜更かししててもいいんですか?
お肌に悪いですよ(笑)』
英雄以外の男性とこんな話をするのは久しぶりだ。
ゆかりの店は女性店員のみしか雇っておらず、客層もほぼ女性のみだ。
翔太の学校やサッカーのママ友とは話をよくするが、やはり女性だ。
つい男性との久しぶりの会話に夢中になっている自分に気づかなかった。
『いつもこれくらいの時間まで夕飯の後片付けとかでバタバタなんですよー。
今日はたまたま明日がお休みなので夜更かしです♪』
りょうは眈々と返信していく。
『いつもこんな時間まで大変ですね。ゆかりさんは頑張り屋さんだ。
明日お休みってことはお仕事もされてるんですか?』
『そうなんです。仕事と家庭の両立、がんばってます。』
『僕は在宅での仕事なので、 自分の時間も取りやすいですが、
仕事も家庭もだとなかなか自分の時間も取れませんね。
たまにはこうして自分の時間を作ってリフレッシュしないと。
そして明日からがんばる。
なーんて。
今晩はちょっと悪い奥様になっちゃいましょう!(笑)』
なぜかすっとゆかりの心の隙間に入ってきたりょうとの会話…。
ドキドキしながらも英雄以外の男性と話す事に気持ちの高ぶりをおぼえた。
こうしたたわいもない話をしながら相手の緊張を解き、
2人の秘密の時間へと引きずり込むりょうの会話に、ネットに慣れていないゆかりは簡単にはまっていく。
軽い催眠術にもかかっているようだ。
休み前の深夜、
一人きりの部屋、
英雄以外の男性との会話、
夫婦の見えないすれ違い、
罪悪感と期待感の入り混じった感情…。
全てがゆかりを麻痺させていく。
『りょうさんはお話がとても上手ですね。なんだか色んな事話してしまいそうです。
愚痴っちゃうかもですよ♪』
『何でもどうぞ。
男性って基本的に女性の話を聞くのが苦手なんですよ。
でも、僕はどちらかというと聞く方が好きなんです。
変わってますよね。
僕でよければ話し相手になりますよ。』
くくく、こんな台本みたいな展開あるかね~。
こいつは簡単に落ちそうだぜ…。
ゆかりは蜘蛛の巣に自ら絡まってしまっている事に気づくはずもなかった…。
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