めくるめく官能世界に程遠く 女房の火消し
「補習の女子高生が、友達になって欲しいというので、OKしたよ」
「あなた、女性をなんにもわかってらっしゃらないのね、その子が、どうしてあなたと
お友達になりたかったか、おわかり」
「だからその、面白いとか興味深々とか」
「それは二の次、三の次、もっと大きな理由は、好きな彼に振られて、勉強にも身が入
らないほど淋しいからよ」
「そりゃそうでしょ、振られて楽しい人はいないもの」
「それだけわかっていて、どうしてその先が読めないのかしら、今、彼女が求めている
のは、ただ面白可笑しいお友達なんかではないわ、泣きたいくらい独りぼっちの自分を
支えてくれる人よ、あなたはその大事な役目をお引き受けになったんですよ」
「えっ、どういうこと、それじゃ、そのなんたらカレー子以上の美味しいカレー氏にな
れって」
「食べ物と一緒にしないでくださいません、せっかく今夜カレーにしようと思ってたの
にー」
「あ、わりぃ、わりぃ、すいませんです」
「あなたのことですもの、フィアンセがいることなど、おっしゃっていないのよね」
「聞かれてないし」
「後からでは遅いの、今のうちに知らせないと、彼女を余計に傷つけることになるわ」
「じゃ、明日にでも会って言うよ」
「ダメよそれは、嬉しくて仕方ない彼女を天国から地獄へ突き落すようなものよ、そう
だ、あなた、その子をここに連れてらっしゃいな、女どうし話せば、いろんなことが見
えてくるし、開けてくると思うわ、終り次第、その子の家まで私が送りますから、心配
なさらないで」
「で、僕はその間、どうするのさ」
「理由をつけて大学へ戻っちゃいなさい」
「ええー、ひとりであの幽霊が出そうなとこへ戻れってか、怖いんですけど」
「怖くて淋しくて心細くて泣きたいくらいに独りぼっちになって、女性を知るのも一つ
の経験よ」
「へーいへい、そんなもんですかねー」
(夫の不始末 女房の火消し 女頼りの八百八町
家庭のかしら エプロン半纏 伊達じゃない)
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