めくるめく官能世界に程遠く
女子高生の学力を知るために自宅へ伺うのが早道なのだけれど、どこの馬の骨とも分か
らない者を家に入れる不安は予想以上に大きいもの、そこで、先ずは親子さんと喫茶店
で話し合った。
女子高生の成績表と月末テストを概覧してみた。
「成績もよくお出来になる様ですし、別段、補習が必要とも思えませんけれど」
「それがね、この2か月ほどで月末テストが急に下がり始めたんですの」
「そうですね、でも、一時的なスランプでしょうから、やる気を起こすきっかけがあれ
ば、聡明な娘さんのこと、そう気になさるほどでもないと思いますけれど」
「そうでしょうか、それならよろしいんですが」
女子高生が口を開いた。
「お兄さんに数学をお願いしたいんです」
ずいぶんはっきりした子だと思った。
確かに、三角関数や不等式はつまづき易いけれど、一度公式に慣れてしまえば、この子
なら難なく通過できるはずだ、それなのに、何故・・・・
「娘がこう言うもので、どうでしょう」
「僕は一向に構いませんよ」
女子高生がほっとした表情を見せた。
「それで、お代はお幾らをお支払いすれば」
「僕は娘さんには助けて頂いて本当に感謝しています。成績が上がるまでの僅かな期間
の臨時ですから、そちらでお決めになってくださいませんでしょうか」
「困りましたわね」
「分かりました、では、週1、月4回で計千円でどうでしょう」
「はい??」母子して顔を見合わせ、キョトンとしていた。
「それだけあれば、昼に月見蕎麦が食えますので」
例の女子高生の笑い声が店内に響いた。
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