めくるめく官能世界に程遠く
先ずは会社の現状を知るべく、古参従業員と共に挨拶回りから始めた。
「年明け後入社しますりょうです、なにぶん経験不足で、みなさんには何かとご迷惑を
お掛けすると思いますが、宜しくお願いします」
従業員名簿に目を通し、他の古参の人達にも問題の未亡人について訊ねてみた。
亡くなられた古参が離婚後、スナックで働いていたバツイチ女性を見初め、寮に住むよ
うになり、お互い結婚に幻滅していたので、ご主人が亡くなるまで内縁のままだったと
いう。
未亡人の評判は従業員には概ねよく、気さくでおとなしく人付き合いもよいというけれ
ど、一つ気になったのが、社外での男性付き合いが、ご主人が亡くなる直前まで相当数
あったという噂だった。
口のわるい者の中には、ご主人が一服盛られたかも、などと軽口を叩く者もいた。
父と未亡人との間に男女関係が有るかどうか、誰も確証がなく、類推の域。
父が女性に甘いのは、我が身に置き換えればなるほどとも思える。
けれどしかし、男女関係の有無に拘わらず、女性の身持ちの固さなど、父にはどうでも
よいことなのだろうか、と正直戸惑った。
※元投稿はこちら >>