めくるめく官能世界に程遠く
「あなたが小樽の人気スポットのお店で足を止められたのは精々5分ね」
「どこを覗いても女性ばかり、なんかね、拒否反応で睡魔が襲って来そうで」
「うんうん、とってもよい反応だわ」
「まゆさんの匂いを嗅げれば、どんなに女性が周りにいてもすぐ覚醒するよ」
「うふ、とってもいやらしい旦那さま」
「女性は小樽のどこに魅力を感じるの、てんで分からないんだけれど」
「雑誌やネットで話題のお店とかかしら、きっと小樽の雰囲気作りが女性向けなのね」
「ふーん、お客は女性、男はお呼びでないと」
「ええ、でも、それって、女の風見鶏の怖さ知らない、とっても危ないことかも」
「小樽の散策にお伴していて思ったの、あなたが小樽に来たかったのは、ただ物見遊山
の観光ではなかったんでしょ」
「ん?」
「小樽運河のはずれにあるほとんど観光客の行かない公園の「赤い靴親子の像」を身じ
ろぎもしないで眺めていらしたわ、あなたが本当に見たかったのはあの像だったのね」
「うん、そうだね」
まゆみは「赤い靴親子の像」を眺めるりょうの固く閉じた唇が像に語りかけるように
微妙に動いていたので、これ以上訊いてはいけない何かしらへの思いがあるのだろうと
察した。
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