めくるめく官能世界に程遠く
午前 神前結婚式、身内披露宴、お色直し赤い色打掛、母親(2人)に花束、お色直しウ
ェディングドレス写真、まゆみウェディングプランナーに心付け
午後 実家の役所へ婚姻届提出、婚姻届受理証明書取得、菩提寺墓前へ報告、母に花束
(持ち帰り)、知り合いの寿司屋で夕食、バス電車バス、帰宅
「ふうー、ただいまー」
「はあー、ただいまー」
玄関に入り、抱擁、まゆみのいい匂いにクラクラしながらキス。
「まゆさん、お疲れさまでした」
「あなたもお疲れになったでしょう、すぐお風呂沸かしますね、はい、お茶」
「ありがとう、うーん、この香り、まゆさんが淹れてくれるお茶が一番美味しい」
「うふ」
「赤い色打掛、とてもよかったよ」
「そうう、ありがとう、ウェディングドレスは写真だけになりましたけど、ごめんなさ
いね」
「いや、今思うと、みんな和服なのに、あの席上でドレスはまゆさんが浮いて見えたと
思う」
「そうね、やはりプランナーさんに相談した甲斐があったわ、赤ちゃんのように生まれ
変わって生きていくという女性の強い意志を示されたほうがよいと言われて、赤い色打
掛に」
「うん、始めの頃はね、まゆさんが、こんなにもしなやかで粘り強くて自信に満ちた女
性とは正直思っていませんでした、脆くて弱くて浮舟のようにゆらゆらと不安げで、気
が気でならなかった」
「まゆみを変えたのはあなたです、いつもあなたがいてくれるからなの、あなたとなら、
どこまでも流されてもいいです、見捨てたりしないでくださいね」
「まゆさん、初めに言ったはずですよ、僕は貴女を裏切らない、見捨てたりするものか」
りょうは思った。
つき合った男に流され裏切られ見捨てられ、けなげにもそれでも信じようとした過去の
悲しさや淋しさが、まゆみの心の底には沈んでいるのだろうと。
沈殿したものを浄化するには、ただ清流をうわべに流すだけでは解決しない。
過去を忘れるのでなく、懐かしい通過点だったと笑えればよく、そのためにも、心から
生きがいがあると思うこと、思わせることが不可欠なのだろうと。
「まゆさん、紅葉を観に明日、北海道へ行こう」
「えっ、どこですって」
「北海道の定山渓温泉」
「なんでまた」
「前に言ったでしょう、日本縦断紅葉の旅、日本縦断が無理なら、せめて紅葉が始まる
北の大地だけでも」
「今日の明日だなんて、予約もなしに行けるわけないじゃないの、あなた、どうかなさ
っているわ、熱があるのかしら・・・そうでもなさそうね」
「ひとを病人扱いしないでくれる、予約はとっくに取ってありました」
「えっ、いつ、いつお取りになったの、どなたかと行かれる予定をしていてキャンセル
になったとか、どなたなの、ねえ、誰なのそのひと、私の知っているひと、まさか女の
人ではないわよね」
「女性ですよ」
「なんですって」
「落ち着いて」
「これが落ち着いていられまして、私達結婚したのよ、あなたは私の夫なのよ、主人な
のよ、旦那さまなのよ、その人が妻の私に内緒で女の人と旅行の約束って、なんなの」
「そうポンポンポンポン言わなくても・・・本人が落ち着かないと話にもなにもならな
いでしょうに」
「・・・えっ」
「まゆさんと行く予約をしておいたの」
「えっ、ぜんぜん聞いていないわ」
「まゆさん、赤ん坊のことばかり話すから、話すタイミングというか忘れていたという
か」
「んもう、あなた、ちょっとここにお座りになって」
出たあー!
「どうしてそんな大事なことを忘れられるわけ」
「忘れちゃったもんしょうがないでしょう」
「健忘症?お医者さんへ行かれたほうがよろしくてよ」
「うん、行ってみる、で、これが予定だけど、どうする、キャンセルするなら今のうち
だよ」
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駅 JR 駅 バス 帰宅
「あなた・・・ごめんなさい、ステキ」うるうる
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