めくるめく官能世界に程遠く
駅前バス停、バスが来た、バスに乗ろうとした、おっとっと、腕を掴まれ引き戻された、
まいだった。
「お兄さん」
「危ないな、もう、びっくりするでしょうよ」
「ごめんなさい、はい、成績表」
実力テストの成績表だった。
「おお、すごいね、トップクラス」
「お兄さん、まいと約束したわよね」
「なんだっけ」
「・・・・」
駅ビルの女子トイレ化粧室でまい着替え、女子トイレの前でひとりポツンと立って待つ
のもバツがわるく、雑貨店に入り一巡。
「やっと見つけた、どこへ行っちゃたかと思ったわ」
「あんなところに立っていたら、他の人の迷惑になるよ」
「へえー、そう、うふ」
「なに、その不適な笑い」
「うふ、眠くなるんじゃなかったかしら」
「オープンスペースは気流が流れているから大丈夫なの」
「そうなのね」
「さっ、OL嬢、カフェへ行きますか」
「キス」
「お魚」
「とぼけちゃって」
デイユースのホテル
「まいさんが成人を迎える頃には、きっと素敵な彼氏にエスコートされて来るのだろう」
「・・・・そうね」
まいはりょうに背を向けて、遠くの景色を見ながら、深いため息を吐いた。
少しの間、背中を丸めたままでいたけれど、何かが吹っ切れたように涙を拭い、体を返
してりょうに笑みを送り、目を瞑って、りょうのキスを受け入れた。
りょうは自分が大変な誤りを口にしたことに暫く気付かなかった。
まいは持てる力を振り絞って成果を上げた、それもこの日のためだけに・・・・
青春真っ只中の少女に1年後、5年後など意味はなく、今この時がもっとも大切な瞬間だった。
「まいさん、ごめん、余計なことを言ってしまった」
まいに涙が溢れた、りょうに心が通じた、まいの嬉し涙だった。
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