会員制の地下アイドル。
どんなものか知らなかった俺もいけないが、正直ここまで過激だとは思ってもみなかった。
驚きを越え、しばらく放心状態のまま、さっきまで景織子がいた舞台を見つめていた。
ひょっとしたら景織子は辞めてしまうかも知れないな。
舞台には、熱心なファンがレオタードの切れ端を探しまわっていた。
会場の外ではメンバーによる即売会、いわゆる物販が行われていた。
一番人気の玲奈ちゃんには行列ができて、ファンがお姫様だっこをした写メを撮っていた。
来場回数によって出来ることは違うようだが、男性の胸や腕に30秒抱き着いて決めポーズで写メを撮る。
玲奈ちゃん、ほらもっと強くっ、おぉ~結構力強いわ~
力比べのように強く抱き着かせて、華奢な脚は男性客に絡みつく。
景織子みたいに160を超えると敬遠されるというのが良くわかる。
しかし今日の景織子は玲奈と同じくらい人気だった。
あれ?さっきの衣装じゃないの?とか来る客は口をそろえて、先ほどの衣装の撮影を求めていたが、それは、さすがにな、断って正解だ。
景織子を見た感じだと、深刻な表情でもなく、俺の杞憂のようだった。
しかし見ていると、玲奈が景織子にかなり対抗意識を燃やしていたのが目についた。
上手くやれば、玲奈も行けるかもしれない。
その夜は、景織子の母親を招いて、俺とマリーと景織子の4人で、簡単な打ち上げをすることになった。
個室居酒屋で今日の売り上げ33万円を景織子と母親に手渡しする。
うわぁ、うそみたいっ、たった10分くらいでこんなにもっ。
母親は大はしゃぎで、景織子の頬に何度もキスをして喜びを爆発させる。
景織子も恥ずかしながらも嬉しそうに笑顔を見せている。
良かった。
しかし母親の興味は、すぐに別の方に向かい、挙句の果てにまだデパート間に合うかしら、友人のプレゼント買わなくっちゃなどと退席し始める始末だ。
景織子、独りで大丈夫?夜は一人でお留守番することも多いの?
小さくうなずく。
それは、ちょっと怖いわね。
トカちゃんさ、悪いけど、家までちゃんと送り届けてもらえるかな?
あ、大丈夫です、一人で帰れます。
そうは言うが、やはり中学一年生の少女をこんな繁華街から一人で帰すのは危険だ。
ああ、いいよ、ちゃんと送り届けます。
そうね、その方が安心よ景織子。
あ、ちょっと待って。
別れ際にマリーは俺に何かを手渡した。
これ、使ってね。
手の中にあったのは、アフターピル。
今日のうちに事を進めろという事らしかった。
電車の中でも、しばらく景織子と共通の話題が見つからず、差しさわりのない俺のアイドル遍歴や、昔はこの辺りに何があったとか、俺は今日の特別講演の事や物販の出来事などから話題を避けるようにしていた。
先ほど母親の前では笑顔を見せたが、それもぎこちない笑顔に見えたからだ。
男たちのオナニーを目の当たりで見たんだ、12歳の景織子には相当なショックだったと思う。
正直よく俺と一緒に帰ってくれたと、俺を信用してくれたことが嬉しかった。
あの、トカちゃんって本名ですか?
えっ?真顔で聞いてくる景織子をみて、あぁ、このくらいの歳の子はなんでも素直に受け止めるんだなと感心してしまった。
トカゲの尻尾切りなんて説明はしなかったが、自分もよく知らないけど、トカゲさんなんだ、というと、かわいいけど可哀そうなんだよという。
ちょっとドキッとしたが、どうやら100日後に死ぬトカゲさんという話があって・・・と昔SNSで話題になった多分、ワニの事を急に話し出す。
俺はいつワニと気がつくか面白くなって、一生懸命に話す景織子ちゃんをじっと見つめる。
かわいいなぁ・・・。
最初に俺が景織子ちゃんが良いと感じたのは、物静かで、古風な雰囲気があって、大正時代のうちのおばあちゃんというSNSで話題になった少女にとても良く似ていたからだ。
若い男性には、この魅力がわからないのかもな。
あっ!
ん、どうしたの?
あ、トカゲじゃなくて・・ワニでした・・。
顔を真っ赤にする。
あ~かわいいな。
俺は思い切って、SNSの写真を景織子ちゃんに見せることにした。
ね、この横顔、景織子ちゃんにすごく似てると思わない?
え、え?私こんなにキレイじゃないです、くちびるだって厚ぼったいし・・。
それがいいんじゃないか。
男性は、そういう厚めの唇が好きな人が多いよ、それに縦に皺が出てるからセクシー・・・。
咳払いで気がついた、正面に立つ俺と同じ年くらいの女が険しい顔でこっちを睨んでいた。
最寄駅から家に向かう途中でも景織子ちゃんは、俺のどうでもいい話に付きあってくれた。
さっきの唇が厚めの女の子が男子が好きって話、本当ですか?
本当だって。
絶対うそです。私のくちびるを見すぼらしいって言われた事もあったんですから。
それは、羨ましかったんだと思うよ、ほら口紅って塗るじゃない、あれも大きく目立つようにするためなんだから。
ぶ厚い過去にいわれたコンプレックスなのだろうが、本当に俺には、瑞々しい果実やゼリー菓子のようなぷるんとした唇で、赤い舌が顔を覗かせると、どうかなってしまいそうな愛らしい妖艶さに胸が苦しくなる。
そうなんだ・・・。
あ、ミラー今度100均で買おうかな。
?
前髪はチェックしたいけど、くちびるが見えるから持ってないんです。
え、今でも100円で買えるの?
はい、今、色々なミラーがあるんですよっ。
そんな和やかな、恋人同士とはいかないまでも、仲の良い親子くらいには見えるのではないだろうか。
あ、もうこの先なんで・・・。
そう、まるで中学生に戻ったかのような時間が突然終わりを告げた。
そ、そう・・じゃ、じゃあ気を付けてね。
何を言っているのだ、本当は、時間の許す限りもっと景織子ちゃんとこうして話ていたい。
景織子ちゃんも見せたことのない穏やかでキラキラと輝くような表情をせっかく見せてくれるようになったのに・・・。
一瞬の沈黙、あ、あのトカゲさんっ、やっぱり家の前まで良いですか?
アパートの二階、階段から一番遠い角の部屋。
灯りはついておらず、母親は帰宅していない。
お母さん帰ってる?
首を振る。
階段の下まで来た。
少しうつむき加減で、声が少し震えていた。
良かったお茶飲んでいって・・。
うん。
こっち。
階段を上りながら手を伸ばしてくる景織子ちゃん。
膝上のスカートからは、真っ白な綺麗な12歳の脚が目の前にあった。
俺は手を伸ばし、小さな手をそっと掴む。
柔らかくそれでいて弾力にとんだ皺ひとつない綺麗な手を握るだけで興奮する。
そのまま手を握り部屋の前までくる。
防犯用に取り付けられた灯りが二人を照らした。
どうぞ、早く入って。
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