すべてを捨てて、彼女を誰も知らないところへ連れ去ろう…
あれからの俺は、ずっとそんな事を考えていた。そのために色々な計画を建てては変えの繰り返しだった。
だが正直、考えはまとまらなかった。
なぜか…答えは簡単だ。俺自身がその行動に恐怖を感じていたからだ。
仮に彼女が同意して、よくドラマにあるような逃避行を続けられるか。
できないだろう。聞いた話だと身元を抹消し、新しくすることができると聞いたが、それにはかなりのお金が必要だ。
全くお金がないわけではないが、2人ともそうするには全然足りない。
あとは俺の年齢だ。この年になると再就職にもいろいろ制限がある。
ほそぼそ食いつなぐことはできるかもしれない。
だが、それによって彼女の気持ちが離れていくのが怖いのだ。
あくまでも彼女の気持ちが今までと変わらず、俺の行動に同意したうえでの話だが。
そんな葛藤に苛まれながら、彼女との関係が少しずつ薄れていくような感じで一月過ごした。
だがそれは俺の思い過ごしだったのかもしれない。
ある日、彼女からのメッセージが届いた。
母親が来てから、彼女からメッセージを送ってくることはなかった。
ばれては居ないのだが彼女自身、後ろめたいものがあったのだろう。
そんな状態だったので、俺は目を疑いながらもメッセージを開いた。
そこには
「あのね、今度連れて行って欲しいところがあります。」
そうあった。
「どこに行きたいの?行けるところに連れて行くよ。」
そう文章を入力したあと、思ってもいなかったメッセージに俺も浮かれてしまったのだろう、🎵等という絵文字を送ったのだ。
それから少し間をおいて送られてきたメッセージ。それを見て俺は思わず目を疑い、「マジか…?」そう口走ってしまった。
彼女からのメッセージは、
「ラブホテル…1回行ってみたい。」
彼女の口から、(というかメッセージだが)ラブホテルに行きたい、等という言葉が出てくるとは全く思っていなかった。
「やっぱりそういうとこ行くのは、私じゃ無理かな?」
続けて送られてきたメッセージにすぐ返信した。
「髪下ろして、服装を気をつければ大丈夫だと思うよ。」
俺も繋ぎ止めたい、というのは少し大げさかもしれないが、気持ちが正直切羽詰まっていたので、すぐ返信した。
「うん、わかった」
今までならなんとも思わないような、どうってことのない返信だが、その時の俺には余裕がなかったのだろう、あっさり塩対応だな…、そう感じていたのだった。
どうかしたの?何考えているの?
そんな事を聞きたかったが聞けなかった。
それでもせっかくの彼女からの申し出だから、いろいろと計画を建ててみた。
まず俺は、ネットでいろんなホテルを検索した。まずは部屋の内装や設備だ。
キングサイズのベッド、アラビアンナイト映画に出てくるようなベッド、いろんな照明が楽しめる部屋、ジャグジーのお風呂…きりがなかった。
あとは食事やアミューズメント、フリータイムでいられる時間帯etc…
若い女の子に喜んでもらえるようにするのもなかなか大変だ…
そして行き着いたのは、郊外にある割と大きめなラブホテル、そこのスイートルームに決めた。
大きめの丸いお風呂にブラックライトの照明とジャグジー。
部屋もかなり広く、ベッドはキングサイズ、ベッドの横の壁は全面鏡張り。
それとちょっとした小部屋があり、そこにはSMルームとなっており、Xの形の磔台もあった。
俺は彼女に対してピュアな感情だから、そう言う気にはならないから必要ないかもしれないが。
フリータイムの時間は2部制で朝の6時から15時、昼の12時から22時の2部制だ。
前の方に延長をつけて、朝から夕方までたっぷり楽しもう。
そして今週の土曜日、彼女も俺も丸一日時間が取れる日を選び、その当日となった。
そして当日、中間地点にあるスーパーの駐車場で待ち合わせた。
車の中で待っていると髪を下ろしてTシャツとジーンズ、大きなバッグを持ってやってきた。
彼女の私服は3回目だ。あの頃はまだ中学生だったから、私服も今どきの女の子らしい格好だったが、前髪を上げてどちらかというと地味めな服装に5歳くらい年齢が上がって見えて、一瞬彼女だと分からなかった。
「それ、何持ってきたの?」
彼女が持ってきた大きなバッグを示した。
「あ、これ?内緒」そう言って、何かを含んだ笑みを見せた。
車のなかではやはり緊張していたのだろう。だんだんと口数が少なくなってきた。
そんな彼女を見て、黙って手を握った。
そして彼女も握り返してきた。
やがてホテルが見えてきた。
「入るよ、いい?」俺がそう言うと、緊張で表情がなくなったその顔で、2回コクコク、と頭を上下に振った。
予定していたスイートルームの駐車スペースに車を停めると彼女は、
「ふうぅ~…」と大きく息をはいて、車から降りた。
階段を登りドアを開けると、予想以上の広さの豪華な部屋だった。
「えっ…スゴっ…」彼女は思わず呟いていたのが可愛かった。
彼女はまるで大好きなアミューズメントに来たかのように、感嘆の声を上げながら、部屋のいろいろなところをみて回っていた。初めてラブホに来たことの緊張感よりも、目の前の豪華な設備に心が躍っているらしい。
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