「藍莉さ、こっちの方上手い、って言われんだよね。」と言いながら、自分の人差し指を口に咥えた。
その意味するものを悟った圭介は、踵を返し、「…興味ない…」と歩き出した。
それに並ぶように、彼女もバックを後ろ手に持ち歩き出した。
「なんでついて来るんだ…」と思った圭介に彼女は、
「興味ないの?こんなに若くてピチピチした可愛いコが誘ってるのに?」
「…」圭介は無言で歩いた。
「パンツ見たじゃん?あれでも?」と彼女はまた話してくる。
「見たんじゃなくて、見せたんだろ…、ってか、なんでついて来るんだ?」
「ん〜、おじさんならサポ無しでもいいかな〜、って思ったからさ笑」
それを聞いて、圭介は歩を速めた。
彼女はそれを見て諦めたのか、立ち止まった。そして、大きな声で、
「おじさ〜ん、今度遊ぼうね〜」と手を振っていた。
「あんなコが絵里香の友達だなんて…」
圭介は悶々としながら家に向かったのだった。
数日後、圭介は絵里香と食事に来ていた。
妻は介護の仕事をしていて、今日は夜勤、祖母も友達と温泉に出かける、ということで一晩圭介の家に泊まる事になっていた。
せっかく娘が泊まりに来るので、料理をするつもりだったが、絵里香に拒否され、回転寿司屋に来ていたのだ。
食事をしながら圭介は、
「こないだ車に乗せた…藍莉、ってどう言うコ?」と聞いてみた。
「えっ、なんで?気になる?」
「いや、絵里香の学校の事とかあんまり聞かないし、友達もわからないから…どういうコなのかな、って思って…」
「ふーん、そうか。藍莉はねぇ…どっちかと言うとサイコパス。」
「えっ?」圭介は思わず聞き返した。
「なんていうかさ…普段はこないだみたいに大人しいんだけど…例えば、何かに夢中になったりとか、人が変わるというか…口調とか…でもね、それはホント、たまにだから。全然普通、普通。」
なるほど、圭介はなんとなくわかるような気がする。
車に乗ってた時と、公園で声をかけてきた時が、あまりにもギャップがあり過ぎた。
絵里香は続けて、
「なんか親がさ…毒親みたいだし…」
毒親?どういう事だ?と思ったが、それ以上は聞けなかった。
その次の日
定時で終わった圭介は、スーパーに寄っていた。今日の酒の肴を選んでいると、
「おじさん!?」と、声をかけられた。
そこには黒髪を下ろし、ノーメイクでメガネをかけた夏服の女の子が立っていた。
一瞬誰か分からなかったが、すぐ藍莉だと気付いた。
「おじさん、買い物?」そう尋ねる藍莉に圭介は無言で頷いた。
「今日は何食べるの?ふーん、お刺身かぁ。」そう買い物カゴを覗き込んでくる。
カゴを隠した。
買い物を終え、スーパーを出ると、藍莉もついてきた。
「なんで…ついて来るんだ?…」
「藍莉んち、こっちだもん。」
それ以上は何も言えなかった。
藍莉はいろいろ話しかけてきたが、誰かに見られたりでもしたら、早くこの場を去りたい、そんな気持ちがいっぱいで、
「ああ…」「うん、そう…」と適当に返事していた。
気のない返事をされていることに気が付いた藍莉は少し考えて、
「私とエッチしたい?」と聞いてきたことに、圭介はそこまでの流れで「うん」と言ってしまった。
言ってからハッと気付き、
「いや!違う!そうじゃない!」と慌てて言い訳をした。
藍莉はプッ、と笑って
「おじさん、面白い笑笑」とクスクス笑ってる。
圭介は気を取り直してまた聞いた。
「なんで…あんな事してるんだ?…」
藍莉は、う〜ん、と考えるような素振りをしている。
「お金か?」
「う〜ん、それもあるけど…セックスするのが好きだからかな、気持ちいいし笑」
圭介はそれを聞いて、はぁ、とため息をつき、少しおいてから言った。
「あのさ…その時はいいんだ、大丈夫、って思っても…将来、絶対後悔することになることがあるんだよ…。だから…だから、自分で少しでも後ろめたいことがあるんなら…やめたほうがいい…。」
藍莉はびっくりしたような顔をしている。
そして、取り繕うように、
「な、なぁに〜?説教?そんな、親も言わないようなこと言わないでよぉ〜。」
と誤魔化したように言った。
「もし君が俺の娘だったら、ぶん殴ってでも首に縄を付けてでもやめさせる…。でも、君は俺の娘じゃない…。だから、こういう事を言うしか…ないんだ…。」
続けて言った圭介の言葉に、藍莉は明らかに動揺してるのがわかった。
藍莉は一瞬、気付かされたように真面目な顔をしていたが、
「じゃあさ、」と切り出してきた。
「おじさんが藍莉とエッチしてくれたら…そしたら、やめるよ。」と、いつもの調子で言ってきた。
それを聞いて、圭介は顔をしかめ、無言で歩き出した。
歩きながら、「バカにしやがって…」とイライラしてきた圭介は、そのまま足早に家に向かった。
藍莉はその後ろ姿を見ながら
「あ〜あ、怒らちゃった…ダメだなぁ、私…」と自分に呆れるように言った。
そして、独り言の様に言った。
「やべっ、好きかも…おじさん…。」
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