俺がわざと、少し呆れたような言い方で
「お前、社長に俺と付き合ってるって言ったのか?」
と聞くと、紗季は少し顔を赤らめながら
「付き合ってるじゃん。セフレだけど」
と言った。
知らない内に俺は、レイプ犯からセックスフレンドに昇格していたらしいかった。
「まあ、そうかもしれねぇけど、社長は恋仲だと思ってるぞ?」
「別にいいよ、アイツになんて思われたって…」
「けどよぉ…」
「セフレだって彼氏だって、どうせいつかは終わるでしょ?一緒じゃん」
確かに、仮に恋仲だとしても、外でデートとかする金も時間も俺にはない。それは社長も分かってるはずだ。だとしたら、ヤることは一緒だ。
「けど、もし俺がお前を捨てたなんてことになったら、お前の親父に叩き殺されそうだな」
俺が冗談めかして言うと
「その時はあたしが飽きたからフッたって言うから大丈夫」
と言った。まあ、仮に俺が紗季に飽きたとしても、自分の方から振ったことにする。それが、社長の娘としてのプライドというものなのだろう。もっとも今の所、そんなもったいないことをする気はさらさら無かったが。
ところが、異変はこれだけでは済まなかった。社長に『交際』を認めてもらって以来、工場長がやたら丁寧に、仕事を教えてくれるようになったのだ。この部品はどういう所に使われるから、納品先はどこどこで、ここの精度が特に重要、などと聞きもしないことまで教えてくる。
俺は直感的に『ムコ扱いだな』と思った。
紗季は社長夫婦の一人娘なので、この工場を存続させるためには、紗季にムコを取らせ、継がせるしかない。紗季の『彼氏』である俺を、その候補にと考えたのだろう。他人には冷淡だが身内には甘い、社長が考えそうなことだ。
俺は早速紗季にこの異変を報告したかったが、どう言ったらいいものか。ハッキリそう言われた訳でもないのに『ムコ扱いされている』なんて言おうものなら、俺が紗季の家の財産を狙っているみたいだ。まだ中学生だった紗季の部屋によばいをかけ、手錠やガムテで拘束までしてレイプした俺が、さすがにそれは厚かましすぎる。俺は悪党だが、そんなことを考えるのは、俺のキャラじゃない。
仕方がないので俺は、次に紗季の部屋に行った時、ついでに思い出した風で
「社長にお前とのことを認めてもらってから、どうも仕事を詳しく教わるようになっちまって…」と、事実だけを告げた。
紗季は最初キョトンとしていたが、少しして
「へぇ、良かったじゃない。認められてるってことなんでしょ?」
と、まるっきり他人事のように言うので、俺は話が続けられなくなった。
まあ、紗季の年齢なら、家が金持ちだということは分かっても、それを自分が引き継ぐとか、そのためにムコを取らなければならないとか、全然ピンと来ない話だろう。
だがあと数年して、紗季にもいくらか世間が分かってきたら、どうなるか?
マトモに考えれば、俺みたいな男に大事な資産や工場を任せるなんざ、とんでもない話だ。俺をムコにする話がでたら、速攻で別れて、追い出そうとするだろう。
だが一方で『女は子宮で物を考える』なんて言うヤツもいる。
俺のチンポに快感を与えられるのにすっかり馴染んでいる紗季は、コイツを手放すことを惜しんで、とんでもない判断をするかも知れない。
赤ん坊の頃から施設で育った俺に、世間はトコトン冷淡だった。大して努力もしなかったが、努力せずに何かが手に入ったり、ラッキーな思いをしたことは、数えるほどしかない。紗季の身体を手に入れることができたこと、くらいだろう。
もしそんな俺が、何かのまちがいで、そこそこの会社の社長に収まることができたなら…冷たい世間ってヤツに、少しはリベンジしたことになるのだろうか。
完
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