まるで少女達の存在なぞ、忘れ去ったかのように歩き続ける男。
時折、振り返りつつ心配そうな視線を友人に投げ掛けるミドリ。
ただ果てることしか頭に無いアオイは、二人の後を追って足を進めていた。
数分ほど歩けば、再開発の計画から漏れてしまったかのような住宅街。
行き交う人影も車の数も決して多くはない。
三人が辿り着いたのは、住宅街の外れに位置する小さな公園。
数名の幼児が砂場や遊具で遊び、或いは意味もなく走り回っていた。
公園内を見渡せば、ほぼ幼児と同数の母親らしき集団が、横目で子供達の様子を伺いながら、お喋りに興じている。
公園の敷地、幾つかの遊具が並ぶ一角に向かう男と付き従う二人の少女。
並んだ遊具は、シーソー、ブランコ、その横に鉄棒。
その幼児用の鉄棒は三本の支柱により、ふたつが構成され、各々の高さが二段階になっている。
低い方は七十センチ程であろうか、アオイの下腹部より、やや低い位置に横向きの棒が鈍黒く設えられていた。
「ちょうどいい高さだね・・。」
「?」
「・・押し付けてごらん。」
『ちょうどいい高さ』、『押し付ける』
僅かに距離を置いて立つミドリは、男の指示を耳にした瞬間、思わず息を呑む。
ミドリにも、そして少なからぬ少女達が、局部を硬いもの、、その代表的な例が机の角だ、、に押し付けることで偶然にも経験する甘い痺れ。
そして、殆どの少女が、それが淫らな愉しみであることに気付き、少なくとも他人の眼に触れる場所では避けるようになっていく行為。
今、男はアオイに対して『その行為』をするように指示したのだ。
端的に言えば、屋外、かつ周囲に他人の眼がある場所における自慰行為。
ミドリであれば、そして殆どの少女が、中学二年生ともなれば指示された行為の意味を理解し、この状況において指示された行為を遂行することを、結果はどうあれ躊躇うであろう。
だが、恐らく、、いや、間違いなく、アオイは指示された行為の意味するところを理解していない。
少なくともミドリは、何かに局部を押し付け、その圧迫感により得られる快感について説明したことはない。
ミドリの懸念を他所に、訝しむような表情を浮かべながらも、少女は鈍黒い鉄棒との距離を詰めていった。
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