※※※カンナに見られていたヤヨイ※※※
その少女の名はカンナ。
サツキやヤヨイが受けているレッスンを受講している少女達のうちの一人だが、他の少女達とは一線を画した超然とした雰囲気の持ち主。
カンナが他の少女達と会話をしている風景は、ついぞ見られない。
梅雨真っ最中の土曜日。
レッスンが終わり、いつもの通り少女達が三々五々、帰宅の途に着く中、これもいつもの通りカンナは独りで家路を辿る。
駅に着いて改札口に向かうカンナの数メートル先に見覚えのある少女の姿。
(あの子、確かヤヨイっていったっけ?)
土曜日なので少女達は皆、私服。
濃いグレーの半袖のワンピースに身を包んだ私服姿のヤヨイ、いつもと若干雰囲気が違う為、カンナにはその少女が本当にヤヨイなのか確信は無かった。
それに、そもそもが他人に接触しようとしないカンナにすれば、それは一瞬の思考に過ぎず、次の瞬間にはワンピースの少女への興味は一切失われていた。
乗り込んだ電車が走り出し、同じ電車の中、思いがけない程近くにカンナに背を向けて立っているのは、先程のワンピースの少女。
見るともなしに見ているうちに、少女の様子が変なことにカンナは気付いた。
一言で言えば落ち着きが無い。
幼児が尿意を我慢するように、脚を頻繁に組み替えて立ったままモジモジし、しきりに手をお尻から太腿に沿って動かしながら、スカートの裾を気にしているような素振りを繰り返す。
(・・そんな短いスカートじゃないんだから大丈夫だって。)
確かに少女が身に付けているグレーのワンピースは薄いデニム地、もしくは厚手のコットンのような素材らしく、色からしても下着や身体のラインが透けるようなものではない。
スカートの丈にしても膝が見え隠れする程度だ。
(トイレかな?)
と、その瞬間、降車駅に着いた電車のドアが開き、少女は電車を降りると足早にトイレの方向に向かう。
(やっぱりトイレだ。)
が、その予想は外れた。
少女はトイレの前を素通りすると、真っ直ぐに改札口から地上出口に向かって階段を登る。
(何だったんだろ。)
少し遅れて地上出口に辿り着いたカンナを待ち受けていたのはバケツの水を撒いたような、としか表現出来ないゲリラ豪雨。
傘はあるが家まで15分程の距離だが、歩く間にずぶ濡れになることは避けられない。
(凄いな、天気予報。外れないもん。)
その時代、天気予報の精度は格段に向上しており、予報に逆らって豪雨の中を出歩く人影は見当たらない。
意を決して傘をさすと家に向かってカンナは歩き出した。
と、10メートル程前方の小路から人影が現れ、カンナと同じ方向に向かって歩き始めたが、その後ろ姿には見覚えがある。
(さっきの・・ヤヨイ?)
確かに何度か駅で見かけたような気もするので、同じ駅を使っているかもしれないが、ヤヨイの制服からすれば通っている中学の学区は駅の反対方向。
従ってヤヨイの自宅からは遠ざかっているとしか思えない。
しかも傘もささずに豪雨の中を歩く少女は、遠目に見てもずぶ濡れだ。
珍しく他人に興味を持ったカンナ。
ヤヨイらしき少女はカンナの住むマンションの前を通り過ぎ、マンションの横にある公園に入って行く。
(え?何で?こんな時間に?何の為?)
俄然、興味の湧いたカンナは階段を一段飛ばしで3階まで駆け上がり、階段の踊り場、公園を一望できる位置に立って少女の姿を探す。
(・・・いた!)
ヤヨイらしき少女は公園敷地内の一番奥、日本庭園を模したようエリアに向かい、大人の背丈程もある巨大な庭石の陰に入って行く。
どうやら道路から、つまり通行人から死角の位置を探しているようだ。
少女の動きを目で追いながら、カンナ自身も階段から共有の通路を移動すると、再び少女の姿を視野に収めた。
「え?」
そこで少女が取り始めた予想外の行動、思わず上げた自分の声の大きさにはカンナ自身が驚く程だった。
少女は肩から下げていたバッグをベンチに置き、周囲をキョロキョロ見渡すと、やおら手を胸元に持っていき、上から順番にワンピースのボタンを外し始めたのだ。
当然、ボタンを外せばワンピースの前身ごろは開き始めるが、開いた前身ごろから覗くワンピースの下には素肌しか見当たらない。
「・・そういうこと・・。」
思わず呟いたことすら気がつかないままに、カンナは少女の次の行動に注目した。
『そういうこと』、つまりヤヨイらしき少女、いやヤヨイは一切の下着を着けずにレッスンから帰宅の途に着いたのだ。
しきりに電車の中でスカートの裾を気にしていたのは、ワンピースの下には一切の下着を着けていないことを、万が一にも周囲の人間に知られない為の行動だったのだ。
「あ!ちょ!そ!」
『あ!ちょっと!そんなこと!』が一度に口から出てしまったのであろうが、カンナが驚くのも無理はない。
ヤヨイは立ったまま、片手を片方の乳房に、もう片方の手を股間に潜り込ませると身体をくねらせ始めたのだ。
(じゃぁ・・電車の中で・・モジモジしてたのは・・。)
そう。
ヤヨイが堪えていたのは尿意ではなく淫らな欲望。
しかも下着を着けずに外出することにより、自ら性衝動を昂らせ、しかも自身が露出行為により性的に昂ることを理解している、だからこその不審な行動だったのだ。
バッグの中からスマートフォンを取り出したカンナは、画像撮影機能を起動し、ズームでヤヨイの露出行為を撮影し始めた。
この時代、スマホの撮影機能は本格的な撮影にすら使われることもある程に向上しており、暗視補正機能によって液晶画面の中では半裸の身体をくねらせている少女の姿がはっきりと見て取れた。
そうこうするうち、不意にヤヨイは身体を反らせるとガクガクと脚を痙攣させ始める。
(・・イッたんだ。)
絶頂を迎えたヤヨイは余韻を味わいながらも、我に返ったかのように周囲を見回すが、生憎、垂直方向に視線を向けることは無い。
いつの間にか小降りになった雨の中、ワンピースを全開にしたまま、手洗い用の水道まで歩くと蛇口をひねり、手のひらで受けた水を股間にかけ始めた。
(?)
何度か股間に水をかけるとヤヨイは股間を手のひらで隠すような仕草をしながら、指を蠢かす。
と、次の瞬間、もう一度ヤヨイは身体を反らせながら小刻みに身体を震わせた。
(・・洗ってたんだ。洗ってるうちに・・触っちゃって・・またイッちゃったんだ。)
他人に興味を持たないはずのカンナ。
そんなカンナの顔に浮かんだ微笑みは、獲物を必中の射程に収めたハンターのそれであった。
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