正直、勇は焦っていた。
端から見ればパニックになっていたともいえた。
京の”夏休み中にエッチしたいね”と言う言葉に、
一人で勝手に暴走していた。
但し、そういう場所が無い、その問題を解決出来てないままに、
これまで友人から借りるのを拒んでいた
エッチな本やビデオを幾つか借りていた。
だがそうしているうちに夏休みも半ばに差し掛かり、
勇は更に焦りだしていた。
「勇、これは何かなぁ~~?。」
考えながら家のソファーに寝転がっていた時、
不意ににやにやしながら勇の顔を覗き込む母親。
その手には勇が借りて隠していたエッチなグッズが握られていた。
げっ、と思わず口ににしてしまう勇。
当の母親は呆れた様な顔をして「あんたもしっかり
男の子やってのねぇ。」と途中からからかう様な顔をしながら言った。
「私としては、もう少し上手く隠して欲しかったわね。」
息子のいかがわしいグッズを見付けて咎めていというよりは、
からかうネタを見付けて面白がっている、と言ったところだった。
勇としては怒られなかったから、良かったとしたいところだったが、
ここまでからかわれると、逆に恥ずかしいものがあった。
そしてもう一つ母親にバレているものがあった。
「あんた、彼女出来たでしょ。」
それはなんとしても隠したいと思ったが、
元々あまり外出しない勇がここの所毎日の様に出掛けている上に、
あれだけ無頓着だった服装も気にするになった。
この二つを決めてに、あっさり勇は白状していた。
「いいのかなぁ、彼女さんいるのにこんなの集めちゃってぇ。」
もはやどうしたら良いのか解らない程恥ずかしかった上、
にやにやしながらからかう母親は非常に厄介だった。
「ねえ、勇の彼女さん、家に呼びなさいよ。」
突然の母親の一言にへ?となったが、すぐにそれはマズいと思い、
全力で首を横に振ったが、「だぁ~め。」と、
今度は鬼の形相で圧倒され、結局京を呼ぶ事になった。
しかも翌日に・・・・・・・。正直嫌な予感がした。
そして翌日・・・・・・・。
「あらぁ、可愛い彼女さんじゃない。勇には勿体無いわね。」
玄関先での初対面、母親は京を見るやはしゃぐ様に言った。
「ありがとうございます。おば様。」
お世話のつもりか、京も笑顔で返していた。
「さっ、立ち話しもなんだし、入って頂戴。」
「はいっ、お邪魔します。」
かくして女二人が先に家の中に入り、勇がそれに続く形になった。
キッチンが併設された狭めのダイニングルーム。
その中央のにあるテーブルを挟んで勇と京はイスに座った。
少し遅れて母親がお茶を持って来てそれぞれに配ると、
自分は京の隣りのイスに座った。
そこからが悪夢だった。お互いに軽い挨拶をした後、
あろう事か母親は勇がエログッズを隠し持っていたのを暴露したのだ。
もう終わった。勇の心の中にどうしようもない後悔が走った。
だが、意外にも京は母親の話を聞いて大爆笑し、
その後、二人で勇の話で盛り上がっていた。
内容を詳しく聞く気はなかったが、勇をからかうものや、
いじり倒す内容が所々聴こえて来た。
京に失望されなかったのは良かったのだが、
これはこれで相当恥ずかしかった。
そして気付いた。この二人が似た者同士だと。
それからしばらくして「どう、勇の部屋、見ていく?。」と、
母親が唐突に提案し、京は「はい、勿論。」と返した。
そして母親の案内で二階に上がり、勇の部屋へ入った。
入ってすぐに勇は驚いた。あれだけごちゃごちゃしていた部屋が
掃除され、整理整頓されていたからだった。
よくこの短時間でと勇が思っていると、「じゃあ、後は
二人でゆっくりと。」と言いながら母親は部屋から出て行こうとし、
勇とのすれ違いざま小声で「大変だったんだから、感謝しなさい。」と
言われ、内心恥ずかしくなっていた。
そして「ね、座ろうよ。」と京に促され、二人共ベッドに座った。
そして座ってすぐ、京は「なかなか面白いお母さんだね。」と
少しからかう様な表情で言った。
当の勇はまだ恥ずかしさが抜けず「うん。」と力無く応えていた。
「でも、嬉しいな。」
「え?。」
突然の京の言葉に勇は戸惑った。
「エロ本とかの事。あれ、私がエッチしたいって言ったからだよね。」
「うん、でもなんで嬉しいの?。」
「初めての事だから、怖かっんじゃないかな、と思ったの。」
「怒ってないの?。」
「最初はちょっとね、でもそう思ったら嬉しくなったの。」
自分両手を胸に当てながらそう笑顔で言う京。
「でもごめん、ちょっと見たいって思ってたのあった。」
「うん、やっぱりそこは男の子だね。」
少し湧いて来る罪悪感。京の優しい声が余計にそうさせていた。
「怒ってない?。」
「うん、許してあげる。」
その言葉に少し安堵していると不意に京は立ち上がり、部屋を見渡した。
「でも意外だったなぁ、勇君の部屋、ちゃんとしてるなんて。」
「う、うん。」
今更母親にやってもらったなんて言えなかった。
「もしかして、お母さんにやってもらったとか、かな?。」
あまりの不意打ちに勇はぐっと顔を歪めてしまと京は笑い出した。
「あははは、やっぱりそうなんだ。」
何も反論出来ない勇。それを京はからかっているようだった。
「もしかして、夏休みの宿題京さんの家でやろうって言ったのも?。」
「うん、そうだよ。」
笑顔で返して来る京。それが勇の心には痛かった。
そうして夕方には京は帰って行った。
すみません続きます。
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