雫は件の大学に在るプールへと突然の様に姿を見せた。
彼女はCの可愛い制服姿のまま、勝手知ったる我が家と云った様子でスイスイと奥の方へと進んで行く。
雫「あの~・・」
「今、お取込み中・・ですか?」
彼女はプールサイドに立っているコーチに声を掛ける。
コーチ「えっ?何?」
「聞こえないよ!!」
場内は学生達の歓声と叫び声で沸き立っている。
彼女は今一度、大きな声を張り上げて男に聞く。
雫「今、お忙しいですか~?!!」
コーチ「んっ?!」
彼は彼女の顔を見直して驚いた顔を見せた。
コーチ「おお~!!」
「君は、確か・・桑島の仮弟子で北川さん肝入りの?!!」
北川とはクラブに於ける彼女の真のコーチで大学OBの事である。
彼は今、水中で練習している桑島を指差しながら彼女への返答をする。
コーチ「後、少しで終わるから」
「チョット、待ってて下さい!」
北川と云う人物の威光が余程凄いのか、彼は手のひら返しの様に彼女をもてなして行く。
コーチ「お~い!桑島ぁ!!」
「お客さんだぞ~!!」
今日最後の練習を終えて、典史はヘトヘトに成りながら彼女の方へとやって来た。
典史「何?どうしたの?!」
「何でここに?」
彼の驚きの声に、彼女の方が更に驚いて応える。
雫「何でって・・・」
「今日、約束してたじゃないですか!」
典史「約束?」
雫「あぁ~!!」
「完璧に忘れてる~!!」
「酷いよ~!・・サイッテ~!!」
彼は彼女の膨れた頬を見て、すぐさま思い出した。
典史「ああ!!思い出した!!」
二人は低調だった先日の記録更新への挑戦を諦め切れずに、再度その場を設けてリベンジを果たす予定であったのだ。
典史「ごめ~ん!!相原!」
「また別の機会に、ちゃんと・・」
彼女は彼の言葉を途中で遮って、一般論をとうとうと述べて行く。
雫「一つの記録を出す為には、どれだけの準備が必要になるか・・」
「分かってますよね?コーチ?」
典史「はっ、はい!!」
雫「一度上げてしまったコンディションを維持する事が
どれ程大変な事かも」
「当然、分かっておられますよね?」
典史「ハイッ!!分かっております!!」
雫「であるならば、何故、貴方は約束を破って迄
ここに居るのですか?」
典史「そっ、それは~・・」
彼は頭を掻きながらコーチの方へ視線を送ると、コーチはどこ吹く風と云った風体で口笛を吹く真似をしている。
「桑島ァ~!!頑張れ~!!」
「負けんじゃねえぞ~!!」
「〇体大魂で一気に乗り切れやー!!」
「桑島サ~ンッ!!頑張って~!!」
「そんな娘に負けちゃイヤ~!!」
男子や女子部員達の黄色い囃子言葉が飛び交っている。
そんな彼は、ほとほと困り果てて彼女に詫びを入れる。
典史「相原っ!許して!」
「お願いだから・・ねっ?」
雫「あいはら~?」
「ゆるして・・だぁ~?」
彼は彼女の怖い目に怯んで、最上級のお詫びに変化させて行く。
典史「相原様、どうかこのワタクシめを」
「お許し頂けますでしょうか?」
彼の言葉を汲んで、彼女が条件を出して来る。
雫「いいわよ! ただし!」
典史「但し?・・」
雫「私と勝負して勝ったらの話だけれども・・ね?」
典史「はい?・・・しょうぶ、ですか?」
雫「ふふふっ(笑)」
「ガチンコ勝負・・よ!!」
彼は彼女と水泳で真剣勝負を行う事になって仕舞った。
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