彼女たちのコーチ役を務める桑島典史(のりふみ)は日本随一の規模と実績を誇る体育大学の3年生であり、自らも短距離水泳の選手であった。
だが彼の持つ記録に目立つ数字は全く無く、むしろその理論を以て結果に繋げて行く姿勢と努力が大学や諸先輩から重宝がられている。
今回の彼女たちへのコーチ役も、半ば強制的にOBから押し付けられた様な恰好であった。
とどのつまり、彼は周囲の人間からして都合の良い男なのである。
そして性格も至って温厚で、普通のイケメン風な容貌でもあり、気遣いの出来る性格から女子にも受けが良くそれなりにモテた。
だからこそOBや諸先輩方からの風当たりも尚一層強くなる。
OBの大先輩「桑島クン?暇してるんじゃな~い?」
「ごめんね~!忙しいところ」
民間のスイミングクラブでコーチを務めているOBからの電話一本で、その話は決まって仕舞った。
相手と成る少女二人は地域でも特に目立った活躍をしている選手で、大学関係者も目を付けている者達だと云う。
そんなこんなで、彼は仕方なく二人の少女のお守り役を仰せつかる事になった。
だが生来の研究熱心さに水泳バカの気質も手伝ってか、三人は共に三人四脚の形で次第に記録を伸ばして行く。
そして彼女たちはこの一年程で充分に日本代表を狙える位置まで登り詰めていた。
雫「ねえ~、澪?」
澪「何?・・今、忙しいの!」
「後にして!」
二人は幼馴染で共に同じ学校のC3であった。
お昼休みの時間に二人して英会話習得の為の練習を積んでいる。
来年の海外遠征に向けた準備としての勉強である。
雫「桑島ってさあ・・」
「彼女とか居るのかな?」
雫のくだらない話に澪は何時もお愛想を述べるだけである。
澪「さあ?・・桑島コーチにだって・・」
「彼女くらい、居るんじゃない?」
雫「マジか~?!・・」
「ぅ~ん!・・」
「まあ、それなりに顔はまともだしなぁ~」
澪は雫のリアクションに軽い不審を抱く。
澪「貴女、まさか・・」
雫「なに?まさかって?」
澪「桑島コーチの事、好きなの?」
彼女のストレートな物言いに雫は狼狽えて仕舞う。
雫「なっ、なに?・・」
「そんな事、ある訳無いじゃん!!」
「澪は何時も飛躍し過ぎだよ~!」
雫は照れ隠しをしながら言葉を濁して行く。
彼女は妙に乙女な雫の、そんな仕草を寸分も見逃さなかった。
澪(ふぅ~ん!コーチの事がねぇ~!)
そして当日の授業が全て終わって、二人は放課後にいつものスイミングクラブで落ち合って練習を開始する。
雫「桑島のやつ、今日は遅いな~」
雫はキョロキョロと周囲を見渡して彼を待っている風である。
澪「雫、貴女?・・」
「どうしたの?それ・・」
「クラブのスイムウエアーは?」
クラブ独自に支給される物は、太ももが半分程隠れる長さを持つスパッツ風デザインのワンピースである。
だがその胸の位置にメーカーロゴが入った、純白のセクシーなハイレグ競泳水着は初めて見る物であった。
雫「えっ?・・ああ!これ?」
「これ、は・・・」
「あっ!!そうそう!」
「いつものヤツはね、少し破れちゃったの・・」
「だから、新しい物が来るまでね!」
澪「ふぅ~ん・・」
「そうなんだ?」
雫の焦る様子と言い訳気味の言葉に、彼女は更に疑念を深めて行く。
その男を誘う様な透け気味の水着は、どう見ても意図的としか思えない。
胸の微かなポッチに加えて、濡れて薄っすらとピンクに浮かぶ乳輪の色。
更に股間のワレメに食い込む一筋の美しいライン。
その全てが彼女の計算された結果の様にも見える。
形の良い胸は77CMと極小さめだがウエストは大きくクビレて、控えめな大きさの美しいヒップラインへと繋がっている。
そして短距離選手らしく肩は張り気味では有るが、腕と脚は細長く肌はきめ細やかで、気の強い彼女のイメージとは似ても似つかない様相である。
更に細面の顔に整った眼鼻と小さな口で喋るボブショートの彼女は、アイドル顔負けのルックスを誇っていた。
澪「今日はコーチ、いらっしゃら無いって!」
「何か、用事が有るとかで・・」
雫はその言葉を聞いて、いきなり怒り出す。
雫「なに?」
「それならそうと最初から言ってよ!!」
雫は怒りながら一人で練習を始めて仕舞った。
澪はそんな彼女の姿を見ながら、或る思いに耽って居た。
そんな思いを馳せる彼女をよそに、雫は一方的に言葉を吐いて行く。
雫「私、用事を思い出した!」
「帰るね!」
澪「えっ?なに?・・」
「まだ、来たばっかりじゃないの?」
雫「ゴメンっ!!澪!」
「クラブには貴女から報告しといて!」
澪「はあぁ~?」
呆れる彼女を尻目に、雫はとっとと帰って仕舞う。
そんな、いきなり取り残された彼女は、只々立ち尽くすだけであった。
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