ビルマ戦線での事。
日本軍退却の際に、家族3人と酌婦10人を抱えた日本人商人が、食人の風習を持つ部族の支配する地域からの脱出の機会を失い取り残されていた。
昨日まで取引相手だった部族の長から、「祭礼の際に神に捧げる人間を一人だけ差し出すように。そうすれば残った者は安全に退去させる。」と要求があった。
部族長の家の側には木で作られた檻がある。
犠牲となる人間はそこで飼われ、祭礼の日に引き出されて神への捧げ物として、水、火で身体を浄められた後に殺され、その身体は解体されて部族民に配られることになる。
しかし実際は、犠牲者には他の部族の女を拐ってくる事が多く、殺されるまでに部族の若者などに性的な虐待を受けるし、殺され方も絞殺などではなく、生きたまま腹を裂いたり手足を切断するなど残酷で犠牲者を苦しめるのが目的かのような方法であった。
商人は普段は酌婦達を親身に世話をし、酌婦達も彼を信頼し慕っていた。
しかし、商人は妻と12歳の長女、2歳の長男がおり、何としても家族3人は国に無事に帰したかった。
当然「酌婦の誰かを犠牲にしよう」と考え、酌婦達に部族長の話を伝えた。
酌婦達は仕方ないと思った。
主人には恩義も借金もある。
逆らえない。
一番歳の若い18歳の酌婦が泣きながら手を挙げた。
国に残している病気の母親と弟の為に自分を売った女の子だった。
18と偽っているが本当の歳はまだ16だった。
商人の長女も良く遊んでもらって慕っていた。
商人は重い気持ちでその若い酌婦を部族長の所に連れて行った。
側近達に囲まれた部族長は商人に告げた。
「生け贄は一人で良い」
「さっき一人、私が生け贄ですと言って来ているではないか」
商人は誰の事か分からなかった。
他に残っていた日本人がいたのだろうか?
とりあえず顔を見てみよう。
部族長の家の横の檻には、大勢の部族民が集まっていた。
なかなか檻の中が見えない。
しかし、檻の中から聞こえた声は商人が知っている声だった。
部族民を掻き分けてやっと檻の中で見たのは、全裸の12歳の長女だった。
無邪気に部族民の子供と部族の言葉と日本語を教えあっていた。
商人が「どうしてお前が来てるんだ?」と尋ねると長女は落ち付いて答えた。
日本人だから約束はきちんと守らなくてはいけないっと何時も教えられてる。
自分を信じてこんな処まで来てくれた酌婦のお姉さん達は皆無事に親許に帰してやらなければいけないってお父さんが言っていた。
お父さんとお母さんには弟がいる。
お父さんの為とお姉さん達の為には、私が残るのが一番良いと思った。
全裸で正座してそう答えた。
それを聞いて商人はただ「分かった。お前は日本人だ」とだけ言って涙を見せずに去って行った。
実は部族長は外国人からの教育も受けたことがあり、それまで日本軍にも色々な便宜も受けてきた。
その為、自分の部族民に内緒で秘かに長女を逃がそうとしたそうである。
しかし、長女自らが「日本人は約束は守ります」と言ってそれを断った。
せめて生きてる間だけでも人間らしく暮らさせようとしたが、長女は檻から出なかった。
そして祭礼の二日前からは、「食べられる時にお腹に汚いのが残っているといけないから」と言って食事を断ったそうである。
連合軍が進駐してきて調査が行われ、長女が部族民に自分からあげたと言う服と下着が押収された。
関係者から「あの子は酷くされたけど最後まで声を上げなかった。」と話が聞かれた。
酷くされたのは性的な虐待なのか、殺され方なのかは不明である。
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