愛は率先して野菜を切る。包丁は使えるらしく中々うまい。その事を褒めると可愛らしい笑顔を見せた。俺はその笑顔にドキッとした。「愛の笑顔いいね…かわいいよ」と言うと愛は目を大きくしてから慌てて顔を伏せ耳まで赤くした。その言葉で手元が狂い「痛いっ」と言って指を切った。俺は慌てて救急箱を取り出し、愛の手を掴み洗わせ消毒した。幸い傷は僅かな物だった。絆創膏を貼った。「大丈夫?」「はい…晃一さんが変な事言うから…」と俯きながら言った。「そっか…ゴメンね…でも本当の事だよ」と言って頭を撫でた。愛は顔を上げ俺を見た。涙で目が潤んでいた。そして何かが切れた様に泣き出した。俺は愛を優しく抱きしめ頭や背中を撫でた。暫くして愛は泣き止んだ。涙と鼻水で俺の服が汚れた。「うわっ鼻水が…」「ゴメンナサイ…」「いいよ…それより飯の続きしよう」「…ズズッ…はい」と再び飯を作り出した。作りながら、愛のあの涙の意味を考えた。多分辛かったのと嬉しいのと安心したのとが一気に噴き出したんだろうと俺は思った。
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