1の続き
12畳ほどある部屋で俺と徹はゲームをしており、その後ろのソファーでは美香が寝息をたてていた。
しかしゲームどころじゃない。どうしようか頭の中で考えすぎて手が疎かになる。
「ススム君、どうしたの?ゲーム超ヘタになってるじゃん。」徹が何も知らずに声をかけてくる。
「いや、別に…。最近やってなかったからさ。」もう上の空での返事だ。
後ろで美香が寝ている。徹がいなければ俺は美香を自由にできる。どうやって徹をこの部屋から出そうか。
考えても思いつかない。徹がトイレにでも行ってくれれば、と考えたが徹は行く気配もない。
行ったとしてもトイレに行く時間だけではたかがしれている。落ち着き無くポケットに手を入れると何やら手にあたった。
何だろう?と取り出してみると、さっき母親からもらった千円だった。
もう、これを使うしかない・・・
「ねぇ徹君、もっとお菓子食べたくない?」俺はゲームの画面を見る徹に話しかけた。
「え?食べたいけど、うちにはこのチョコしかないよ。」徹が画面から目を離さずに言う。
「じゃあ、これで買ってきてくれる?徹君の好きなもの買っていいから。」そう言って徹の前に千円を出した。
徹はゲームに夢中だったが、好きなものを買っていいという言葉でこっちを見た。
「え?本当にいいの?」徹はすぐに食いついてきた。俺は心の中でガッツポーズをした。
そして徹は、近所のコンビニに向けて部屋を出て行った。
ついにこの部屋には、俺と寝息をたてる美香の2人きりになった。
コンビニは割合近くになる。10分前後が俺に許された自由な時間だ。俺は足音を立てずに美香が眠るソファーに向かった。
美香はソファーの上に横たわっている。その前に立ってまじまじと美香を見つめてみる。
テニスのおかげで健康的に日焼けをしている美香の眠る姿は、白雪姫という感じではないが、褐色の南国美女のようだ。
とても美しい・・・。俺は息をのんだ。この美しい美香に10分だけ俺が好きなことをしていい。
しかし、俺は眠る美香を前に固まってしまった。ここまできて一歩を踏み出すことに迷いが生じてしまった。
さらに、性の知識はネット世界から得ているが、童貞ゆえ何をしたらいいのかが分からないという情けない状態でもあった。
俺は極度の緊張と興奮で膝が笑うような状態だった。
『女のカラダって本当にいいぜ。お前らも早く彼女つくってヤッたほうがいいぜ。』
体の制御がきかない状態の中、俺の頭の中に嫌味な声がこだました。
「木村、お前は黙ってろよ・・・」俺は心の中で呟いた。
俺の頭に声を響かせたのは木村雄助、中学になってから俺がつるむようになったグループの一人でリーダー的な奴だった。
木村は、チャラい感じだがイケメンだから、学校でも1,2の美女と言われる谷川玲奈を落とすことに成功した。
谷川玲奈というブランドを得たことで、木村はただのチャラ男から、学校中の男から噂される存在となった。
そうなってからの木村は嫌味な奴へと変わっていき、グループの中でも上から目線の発言をするようになった。
俺の頭に響いた発言も、そのうちの一つで、玲奈とした後日に自慢気に言ったのだ。
木村にはイラッとしたが、既に女の身体を知ったという実績がある。悔しいが仕方がない。
グループには他に山崎浩太と奥山晋吾の2人がいる。山崎は同年代に興味がないらしく、出会い系をやっているらしい。
そこで出会った20代の人妻とキスまでは終わったと言っていた。
奥山に関しては俺と同じで女っ気がない。女と喋るのが苦手で、奥山もまだ童貞のはずだ。
しかし、プライドだけは高く、親戚の友達と上手くいきそうになり初めてキスをしたと言っていた。
奥山はドヤ顔で、キスは甘酸っぱくて良かった、などと俺に自慢していたが、木村や山崎には積極的に言わない。
誰が聞いても嘘だというのがバレバレだった。経験者の木村や山崎の前で話すと、ウソだとばれるので俺に話したんだろう。
奥山は、ウソをついても俺より優位に立ちたいと思っている器の小さな奴だ。
奥山のウソはさておき、グループ内では木村も山崎もキスは既に経験している。
俺自身もこんな状況になると奥山よりも先にキスをしたいという欲が出てきた。
木村の言葉が更に頭をよぎる「奥山のはくだらないウソだ。だけどお前はモテそうだからすぐにキスぐらいできるんじゃないか?」
俺の心は決まった。よし記念すべきファーストキスを美香としよう。まずはキスからだ!
何をしようか悩んだ時間を惜しみつつ、俺はゆっくりと屈み、顔を美香の寝顔に近づけていった。
可愛い美香の顔がどんどんアップになっていく。同時に俺も緊張と興奮が頂点に達し、脚がカクカクとなりだした。
脚が言う事をきかない状態を必死に抑え、美香のプルンとした唇に標準を合わせてゆっくりと重ねるようにした。
「・・・・・」なんて柔らかい・・・。
感嘆の声が漏れそうだった。俺の唇は今までにないくらい柔らかい物に触れていた。
俺のファーストキス。美香も初めてなのか。そんな事を考え愛おしい気持ちで唇を離した。
心臓の鼓動が体中に響いている。しばらくボーっとしてしまったが我にかえった。目の前では美香が何事もないように眠っている。
しまった。普通キスをするときは舌を入れるんじゃなかったか?
自分の部屋や木村の家で、AV鑑賞をよくするが、キスは舌をねっとりと絡ませるのが一般的だ。
中学生らしい淡いファーストキスの後は、男として、AVのような生々しいキスをしたくなった。
そもそも軽いキスでは、キスの味なんてわからない。やはり舌を入れなければ・・・。
そして俺はもう一度、柔らかい唇を奪いゆっくりと舌を挿しこんだ。
だが、うまく入らない。歯がしっかりとガードし、俺の舌の侵入を許してくれない。
俺は、時間の無駄と判断し、唇を離した。「クソッ!!!」思わず口から出てしまう。
これじゃ、キスの味が分らない。だが時間がない。あと5分ほどで徹は帰ってくるだろう。
俺は、これまで見たAVを思い出しながら次の一手を考えた。
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