『月に代わって、お仕置きよ!』
ああ・・・もう終わっちゃう、でもいいなあ・・・私もあんなに活発に出来たらどんなに幸せだろう・・・。
中学生にもなってそんなアニメばかり見ていたアニオタな私・・・。
幼稚園からキリスト教系の学園に通学していたせいもあり、周りは全部女の子。
出逢いなんか全く無い状態で過ごしてきたせいか、高校を出て就職した時には周りの男性社員がみんな美形に見えた程。
それでもアニオタな私は、白馬に乗って王子様が迎えに来てくれると信じる乙女だったのです。
ちょっと希望とは違ったけど優しい旦那様に出逢えて無事に結婚、専業主婦におさまります。
夢見ていた新婚生活、旦那様は仕事熱心でどちらかろ言うと、私は自宅警備員・・・。
朝起きて、お掃除・洗濯・お買物そしてご飯の用意と・・・夜の営みは、旦那様は淡白・・・。
早漏も災いして子宝にも恵まれず・・・妻だか家政婦だか判らなくなってきました。
毎日が同じ様な流れに身を任せる状態。
そんなある日、お買物で街を歩いていると店先にあのヒロインの垂れ幕が目に入ります。
『なんのお店だっけ・・・』
お店は外から中の様子は判らない作りになっていて、今ひとつ私にはなんのお店だか判りませんでした。
なんとなく本屋さん?の様な感じだったので入店してみる事に・・・。
入ってみるとナップサックを背負った、見るからにオタクチックな男性達が一杯です。
ちょっと場違いな雰囲気に私は怖気付き、店を出ようとします。
そんな時に、不意に声を掛けられました。
『あのう・・・、応募の方ですか、こちらにどうぞ・・・』
店の人でしょうか、甘いマスクの男性に声を掛けられます。
この店では売子の店員を募集していた様で、私がその応募にやって来たと思ったみたいだった。
内気で弱気な私は、違いますと言えないまま店の奥に連れて行かれました。
店は大きく二つのゾーンになっていて、半分は同人誌を扱う書店。
もう半分は会員制になっている為様子を伺い知る事はできませんでした。
案内されたのは二つのゾーンの真ん中にある、プライベートゾーンの中・・・。
扉を開くと机とパイプ椅子が何脚かありました。
『それでは、この書類に目を通して頂きサインして下さい』
それはやはり店員面接だったのでした。
『貴女だとピンと来ましたよ、僕結構人を見る目あるんですよ。
真面目そうな方なのに、よくここの募集広告見られましたね。
男性の応募は多いのだけど、貴女の様な方は初めてだ。
難しいお仕事では無いので気楽に始められますよ・・・』
私の反論する機会を与えられないまま話が進んでいきます。
『す・・・すみません・・・私・・・応募してなくって・・・その・・・
急に連れてこられて・・・私・・・困ります・・・』
店員の顔が少し曇って・・・。
『あ!こちらこそごめんなさい、勝手に思い込みでこんな所に連れ込んじゃって
でも、どうです?もし嫌じゃなかったら働いて貰えないですか?
貴女なら少しならバイト代上げても良いんだけどなあ・・・考えてみないですか?
ああ、時間は融通しますから・・・』
実際、私には渡に船なお話でした。
毎日のマンネリ状態から解放され、お小遣い迄貰えるんだから・・・。
けれど、さっき入った時の違和感はなんだったのだろう・・・。
その正体に気付く事が出来ずに、目の前の餌に引っ掛かってしまうのでした。
そのお店は同人誌販売とイメージパブだったのです。
ここで働くと言う事は風俗店で働く事に成るなんて思いもしませんでした。
自宅に帰って相談される事を恐れて、今すぐの契約を勧めてきていたのでした。
当然、こんな場所で風俗なんて営業できません、違法なんです。
店の可愛い装飾に私の警戒心は薄れてしまっていました。
よく読む様に言われた契約書も充分に読まずに軽い気持ちでサインしてしまいました。
『ありがとうございます、僕本当に嬉しいです貴女とお仕事出来るなんて・・・
それじゃ、明日からお願いしますね。
制服とシフト表は明日お渡ししますから、希望だけ教えて下さい。
隔日の9時から17時ですか、判りました、じゃあ、明日から9時から入れておきますので
8時50分にはこの奥の更衣室に入って下さい。』
そう言われて私は家に帰った。
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