手ほどき、それから 2
11:30、オバサンは来ない。
11:45、オバサンは まだ来ない。
12:00、俺はカーテンの隙間から勝手口を覗いた、が、勝手口は開かない。
ベッドに寝転び『フーッ』とため息をついた時、「健ちゃん、ごめぇん、おまたせぇ」と、オバサンが窓を叩いた。
『待ってましたぁ』
心の中では そんなガッツポーズをしながら ベッドから飛びおりた。
俺
「あっ、こんにちは、すみません」
と、カーテンをくぐり 窓をあけた。
門脇
「ゴメンね、仕事の電話が掛かってきちゃって、ホントごめんね」
「ほら、行こ、(カレー)出来てるから、ね」
俺
「はい、すみません」
《今日は どんな服なんだろ?、また 覗けるかな?》そんな期待をしていたのだが、今日のオバサンは 頭からスッポリとかぶるタイプがエプロンをしている、どうやら覗けそぅにはなかった。
が、そのエプロンからは『なま足』が出ている。今度は その中が気になりだした。
昨日のように茶の間に通された。
テーブルの上にはランチョンマットが2枚、オバサンはそのランチョンマットに カレー スプーン 水と、手際良く並べていった。
コップの水を見て ふと思いだした。
「あっ、忘れた、オバサンごめんなさい、ちょっとまってて」
母親から オバサンに渡すように言われていた ビールを忘れてしまった、慌てて部屋に取りに戻った。
俺
「オバサン、これ、母が…」
門脇
「忘れたって これの事?」
「こんな気使わなくて良いのに、山根さんたら、良いの?もらっちゃつて、お父さんの晩酌用なんじゃないの?」
俺
「ごめんなさい、良く分かんないですけど、朝 母が…、また お願いする事もあるかもしんないから って」
門脇
「そぉお?、じゃぁ、遠慮なく頂きます」
「ありがとうございます」
「今日の(カレー)は、ハンバーグ入りよ、ゆうべから作ったの、食べて食べて」
俺
「はい、頂きます」
門脇
「どお?、辛くない?、大丈夫?」
俺
「はい、美味しいです」
門脇
「そぉぉ、良かった」
「そぉだ、(ビール)飲んじゃおっかな、良ぃい?飲んでも?」
俺は クチをもごもごさせたまま 頷いた。
「健ちゃんは?、何がいい?、飲めるならビールでもいいけど」
俺
「あ、水、水で…」
大丈夫とは言ったものの けっこう辛かった。
「やっぱり辛かったよね?」
「何か 張り切りすぎちゃって、途中で味が分かんなくなってきちゃって、ゴメンね」
オバサンがビールを持って戻ってきた時には 空になっていた俺のコップをもって、そぅ言いながら台所に戻って行った。
「ゴメン、麦茶でも良い?、冷えてんの これしかないのよ、ゴメンね」
と、容器ごと俺の前に措いた。
オバサンも 一口食べては ビールを飲んで
「ゴメン、やっぱり辛いわね これ、大丈夫?無理しないでね」
俺
「大丈夫です、辛いけど 美味しいです」
門脇
「そぉお?、そぅ言ってくれると嬉しいけど、無理しなくて良いからね」
「でもホント、辛い、暑くなってきちゃった」
オバサンが立ち上がって エプロンを脱ぎだした。
《なま足》の正体はスカートだった。
エプロンが長かったのか スカートが短かかったのか、そのスカートがエプロンに持ち上げられてゆく、ドキドキしてきた。
カレーを食べ 麦茶を飲むふりをして 盗み見ていた。が、あと少し の所で、エプロンから解放されたスカートが落ちてきてしまった。
上はV字の カットソーとか言うやつ、『よっしゃー』心の中でガッツポーズ、目をこらすと突起が有る 2つの突起に 2度目のガッツポーズをした。
あとは スカートの中、大人の女性は どんなパンツを穿くものなのか?、何とかチャンスが やってこないか?、そんな事ばかり考えていた。
門脇
「そぅ言えばさぁ、もぅ1人の子、あの背の高い方の子 どぅしたの?、最近見ないけど」
俺
「ああ、根岸ですか?、あいつは高校違うんで 俺らとは」
門脇
「商業?」
俺
「いえ、都内の私立に…、落ちちゃって」
門脇
「そぅなんだ?」
「オバサン てっきり 1人に絞ったのかと思ってた彼女、あの いつも来る子の方に、違うの?、彼女なんでしょ?」
俺
「彼女だなんて そんな…」
門脇
「健ちゃん家が引っ越してきて すぐだったでしょ彼女たちが来る様になったの、それが最近1人になったから お付き合いしてるんだとばっかり思ってた、違ったの?」
俺
「… … …」
門脇
「どぅしたの?黙っちゃって、何か怪しいぞ」
「実を言うとね、頼まれたことが有ったのよ、山根さん お母さんに。その、『間違いを起こさない様に気にしてて欲しい』って」
「とは言ってもさ、高校生でしょ?、『好きな子』の1人や2人 居ない方がおかしいでしょ?、『彼女』が出来たからって おかしな事じゃないと思うけどなオバサン」
「で?、どぅなの?、何ていったっけ?」
俺
「綿貫 ですか?」
門脇
「そう。その綿貫さんと、どぅなの?。頼まれてんだから お母さんに…」
俺
「どお?、って言われても…」
門脇
「どぅなのよ?って聞いてもね、説得力ないかオバサンに言われても。去年は あんなトコ見られちゃったしね、健ちゃんにさ」
《駐車場で…、ワンボックスの男の人と…》
すぐにピンときた事はきたのだが…。
「去年?、去年 見た、って?」
門脇
「いいわよぉ、健ちゃんだって そぅいうのが分かる年頃でしょ、とぼけなくったって。そぅいう優しい所なんだろぅな きっと、分かる様なが気がするものオバサンも…」
「でもね!、でも どぅなの?彼女とは…」
「昨日だって オバサン 覗いてたでしょ、おっぱい、知ってんだからねっ!」
俺
「えっ。あっ。ご、ゴメンなさい」
門脇
「嘘よ、冗談だってば、怒ってないから」
「そぅいう年頃なんだもん 健ちゃんだって、そぅいう年頃だから皆心配なの、お母さんも。だから教えて、怒ってんじゃないから、ね」
俺
「チュー。チューまで…、でも その 『未遂』と言うか…」
門脇
「なにその『未遂』って、どぅいう事?」
俺
「俺がその…、チューしようとしたら…」
門脇
「チューしようとしたら?」
俺
「俺 初めてで、その、むこうも初めてで、その『ガン』って ぶつかっちゃって、綿貫に 跳ねとばされちゃって『痛ッ』って、唇とか張れちゃって…、で それっきり…」
門脇
「だから『未遂』かぁ、なるぼどぉ」
「でも、唇と唇は くっついた訳だ お互いの?、でしょ?、そぅよね?」
俺
「はい」
門脇
「…て事はだ、ファーストキスは済んでる訳よね?、でしょ?」
俺
「…ですか?」
門脇
「そぅいう事になるでしょ?」
「例え どんな形であれ キスしようとして そぅなったんだから、偶然に…とかじゃないんだもん、でしょ?」
俺
「はい」
門脇
「…て、事はよ、オバサンが健ちゃんに『チュー』しても 健ちゃんのファーストキスを奪った事にはならないわよね?」
「(チュー)してみる?オバサンと。今度はちゃんと出来るように、彼女に痛い思いさせたり 怖がらせたりしないように『その為の練習』してみる?、どぉお?、こんなオバサンとじゃ嫌?、ダメ?。頼まれてんだけどなぁ お母さんに『間違いを起こさない様に』って 間違ってからじゃ遅いでしょ?、違う?」
俺
「そぅ……、…ですよね?」
門脇
「そりゃそうよ、間違ってからじゃ遅いもの。それともアレ?、怖くなっちゃった?健ちゃんも、『チュー』するのとか『女の人』とか」
(俺は黙って首を振った)
「そんな事ないわよね?今日もずっと気にしてるもんね?オバサンの『おっぱい』、でしょ?見てたでしょ?」
(俺は 黙って頷いた)
「でしょぅ?見てたよね?。してみる?、『練習』。『練習』しよ、ねっ、健ちゃん」
『バレてた』、昨日も今日も、オバサンは気付いてた、俺が盗み見ていた事を。
ただ、綿貫との事は この際『嘘』で押し通してしまえ、そう思った。
何となく その方が『都合が良い』そんなふうに思っていた。
そして 願わくば そのまま『大人のすべて』を教えて貰おう、そんな ズルイ事まで考えていた。
妙な理屈で俺を説き伏せたオバサンが 俺の隣に座り直し、両手で俺の頭を撫でている。
頭を撫でていた その両手が 段々と頬におりてきた。
いつか綿貫が『凄い』と言いながらめくっていた『とっておき』のページが甦ってきた。
※元投稿はこちら >>