手ほどき… 13
帰りの車中、ボーッと外を眺めていた。
色んな思いが グルグルと頭の中を巡った。
「どぅしたの健ちゃん?ボーッとしちゃって、腕 痛いの?」
「ん?、そんな事ないけど…」
「なら どぅしたの?」
「何か いっぱい色んな事、その、オバサンと…。これって『浮気』って事になるんでしょ?、『不倫』してる とかって…」
「そぅね…」
「ゴメンね、健ちゃんの事巻き込んじゃって」
「… …(無言)… …」
「ゴメン。そぅね、そぅよね」
「終わりにしましょ、ね そぅしましょ」
「帰ったら近所のオバサンと高校生に戻るの、今なら まだ誰も気付いてないし私達の事」
「健ちゃんは 綿貫ちゃんと…、それは自然な事だから 誰にも遠慮する事もないし 誰も健ちゃん達を攻め立てたり出来ないわ。度が過ぎたら多少注意はされるだろうけど、2人の恋愛は自然な事だもの…」
「オバサンは良いわ…。『いい年したババァが高校生誑かして…』ってとか『色キチガイ』とか言われても。実際 健ちゃん誑かしたのオバサンだし、健ちゃんと『こう』なりたかったし。オバサンはいいけど 健ちゃんに変な噂がたったら健ちゃんが可哀想。だから……ね」
「そんな…」
「変な噂がたったら 最悪 引っ越しとか転校とかって事になっちゃうんだよ、嫌でしょ?そんなの。綿貫ちゃんとだってそぅだよ 度が過ぎたら 別れさせられちゃうからね 気を付けないと、『節度』とか五月蝿いから大人は…」
「… … だけど…」
「だけど、何ぁに?」
「オバサンはいいわ、『浮気』なんて珍しい事でもないし世間では、『噂』だけのも入れたらだけどね 結構 聞くもの、みんな『噂ずき』だからさ。だから『噂』で惚けられるけど健ちゃんは?、出来る?、出来ないでしょ?」
「そんな…、頑張る、頑張るよ俺」
「頑張るって 何を?」
「その…、『噂』にならない様に」
「いいの?、『オバサン』だよ ただの。出来る?、『健ちゃんとオバサン』、そのぉ『男と
女』、使い分け、出来て…、ね?」
「『出来て』って変ね、白状しちゃうとね オバサンも嫌 健ちゃんと終わりにするなんて」
「だから お願い『普通』にしてて普段は、『近所のオバサンと高校生』なの、ね。でも それ以外は…」
「それ以外…、って?」
「色んな事…」
「色んな事…、って?」
「そぅねぇ…?、今日から健ちゃんは『旦那様』、もちろん戸籍上の旦那様はあの人よ、それは代えられないわ、だけど それ以外、それ以外は健ちゃんが旦那様 身も心も全部、旦那様なんだから 何でもしてあげる、『メッ』って怒る時も当然あるけど 何でも言って ねっ。ね旦那様(笑)、やだ ちょっと恥ずかしい、これ、でも、いいかも、ね 旦那様」
「でも守って、2人きっりの時だけよ、ね、守って、守れる?」
「うん、守る、守るから絶対」
「守るから…」
「守るから…、何ぁに旦那様?」
「その、俺、何て…、オバサンの事…」
「何て呼べば良いか?、って?」
「うん」
「そんなの適当に呼んでよ、旦那様なんだから。旦那様なんだから『おい』でも『なぁ』でも『おまえ』でも、何なら呼び捨てでも良いわ『君子』って、そんなの健ちゃんの呼びたい様に呼んでよ、ね 健ちゃん」
「やだ、旦那様って…とか言いながら オバサンも『健ちゃん』って、どぅでも良っか?そんな事。でもね健ちゃんは私の『旦那様』、大切な人!、そぅいぅ事、ね?」
「でもさ健ちゃん、何処で覚えたの?、その 浮気とか不倫とかって」
「春休み。卒業式が終わって しばらくした頃に その おばさんが お袋の妹が1人だけで訪ねてきて何日か泊まって、従兄弟とかは来なかったからさ 春休みなのに。で、おかしいと思ってて…。『別れる』とか『離婚』とかって親が おばさんが帰ってから話してて、で、それ聞いちゃって…」
「おばさんが…?」
「で?、おばさんが したの? されたの?」
「何だか したみたい おばさんが…」
「そぅそぅなんだ?」
「やっかいね、それって。て 人の事言えないかオバサンも」
「で、もしバレちゃったら、バレちゃったら どぅなっちゃうんだろ?、って オバ お前と、って…。急に思い出して焦っちゃって」
「嬉しいッ、健ちゃんが『お前』って呼んでくれた。ね もっ回 もっ回呼んで」
「ヤだよ、恥ずかしいよ」
「でもさ、チャンとしてて、同じ事してるオバサンが言う事じゃないけどさ。ね お願い」
やぶ蛇だったのか何なのか、話しが思わぬ展開になってしまった。
毛頭、オバサンとの関係を終わりにするなど考えてもいない。もっともっと色んな事を知りたかった、1つの事を知れば その先へと…。
『上手くやらないと…』、そぅ思った。
車が通を曲り さらに細い道に曲がった。
家よりも先に見えたのは 自転車に乗った綿貫だった、綿貫が自転車でやってくる。
オバサンが 『プップーッ』とクラクションを鳴らして車を止めた。
「綿貫」、窓を開けて呼んだ。
「山根くん…」
「心配だったのよね?綿貫ちゃんも」
「そぅだ、ケーキか何か買ってくるわオバサン、降りて健ちゃん、待ってて」
俺の横から身を乗り出したオバサンは そぅ言うと車をUターンさせた。
「良かったぁ、(ギプス)取れて」
部屋に戻った綿貫の最初の一言だった。
そぅ言いながら抱きついて 唇を重ねてきた。
「学校は?、いつから?」
「来週ぐらい」
「今週は休む、リハビリとか有るし」
「来週かぁ、そっかぁ来週かぁ」
「何で?、来週じゃまずいのか?」
「来週なんて すぐでしょ、ノート届ける事も無くなっちゃうし…」
「そんなの どぅだって良いじゃん」
「そんな言い方ヒドイよ!」
「ゴメンゴメン、そぅじゃなくてさ、オバサン教えてくれるって ミシンとか、帰ってきたら聞いてみなよオバサンに」
「俺んち じゃなくて『ミシン習ってる』って言えば良いじゃん、オバサン家で…、だろ?」
「綿貫だって興味あるんだろ?、服飾って言うんだっけ? そぅいぅの、だろ?」
「それは そぅだけど…」
「あのさ 何も毎度毎度 真面目にオバサン家に来てオバサン家から帰るつもり?、出来ないだろ?そんな事、寄れば良いじゃん、そん時」
「そぅだけど、毎回って訳にも…」
「だからさ、毎回って訳にもいかないだろぅけど 学校でしか会えない訳でもないんだからさ、な?、そぅだろ?。毎回毎回 オバサン家に行く事もねぇんじゃねぇの?、だろ?」
「そぅだよね?。そぅだよ、そぅしよ」
「健ちゃん、健ちゃん?」
オバサンが窓を叩いて手招きしている。
俺が気付いた事を知ると オバサンは勝手口から戻っていった。
「オバサン?」
綿貫を連れて勝手口を開けた。
「どぅぞ、上がって、テレビでも付けてて」
「ケーキ、大丈夫でしょ?」
お勝手で 忙しなくしてるオバサンを横目に テレビをつけて座った。
いつもの癖でテーブルの真ん中に座った俺に
「私は?」と綿貫が聞いてきた。
「ん?、ここ座るか?」
端に寄って綿貫のスペースを空けた。
「ゴメンね、座布団も出さないで」
「お祝いしましょ、健ちゃんのギプスが取れた、ね、綿貫ちゃん?」
「はい」綿貫が恥ずかしそぅに答えた。
「ちゃんと紹介して下さい!山根くん、彼女なんでしょ?健ちゃんの」
「彼女なら彼女って ちゃんと、ね?綿貫ちゃん、そぅでしょ?。ほら 健ちゃん!」
「んと、ん、んッ、綿貫幸子さんです、彼女です。で こっちがオバサンで…」
「ちょっと健ちゃん、私だけオバサンはひどくない?」
「ゴメンなさい、いつもお世話になってるオバサンでって言おうとしたんだけど。その 門脇君子さんです」
「はじめまして。って初めてでもないけど 健ちゃんが ちゃんと紹介してくれたのは初めてだから、ね」
「ところで綿貫ちゃんは やっぱり『幸ちゃん』?、幸ちゃんでいい?」
「はい」
「何だか 服飾とか好きなんだって健ちゃんが…、そぅなの?。将来はそっちの方に…、とかって事?」
「なんとなく そんな感じです」
「そう。でも私スパルタよ!、ついてこれるかしら?、大丈夫?」
(綿貫が返事に困っていた)
「冗談よ。遊びにいらっしゃい、いつでも」
「教えてあげる色んな事、縫製だけじゃなくて…。お母さんや健ちゃんにだって話せない事もあるだろうし。お化粧のしかた とかも…」
「ね、遊びにいらっしゃい。堅っ苦しく考えなくて良いから、ね、そぅして」
「はい。ありがとうございます」
「もぉぉ、だから 固いって2人とも」
「そんな 急に言われても無理だよオバサン、綿貫は初めてなんだしオバサンと…」
「そぅだったわね、ゴメンね幸ちゃん」
「でも良いじゃない?、彼氏みたいで健ちゃん、何だか妬けちゃうわオバサン」
「でも本当よ、そんなに かしこまらなくて良いからね、遊びに来てんだと思ってさ、ね」
と、終始 オバサンに圧倒されていた。
残りのケーキを綿貫に持たせてくれたオバサンと2人で綿貫を見送った。
「じゃぁね」
「そろそろでしょ?、お母さん帰ってくるの」
「また明日。なんだね」
「明日、お迎えにあがります 旦那様」
そぅ言って 勝手口から帰っていったオバサンの顔が 心なしか 雲っていた。
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