手ほどき… 10
受付に診察券と予約表を出して待った。
オバサンの ストッキングに包まれた太ももが気になってしかたがない。
「何か飲む?」
オバサンが自販機を指さしている。
「ジュースでいいの?」
「はい、何でも」
戻る途中でオバサンが手招きをしている。
見ると 壁際の隅の椅子が幾つか空いている。
俺は1番隅を空けて2番目に座った。
俺にペットボトルを渡しながら オバサンが隅に座った。
「右手、使え無いもんね」
オバサンは 俺が左側をあけて座った意図を理解してくれていた。
ジュースをひとくち飲むとオバサンがそれを預かってくれた。
俺は 太ももと椅子の間に手を差し入れた。
「ギプス取れると良いわね」
何事も無いようにオバサンが話し始めた。
「うん、そぅだね」
俺は指先でスリットを手繰った。
「痒いでしょ?腕」
オバサンが 片方のお尻を少し浮かせて協力してくれた。
「何か暑い この病院」
「そぅね。朝肌寒かったからかしら?」
「脱ぐ?健ちゃん」
袖も通さず ただ羽織っただけのパーカーをぬがすと バサッと俺の膝の上に掛けた。
周りから見たら パーカーの位置は あまりにも不自然に見えた事だろう。
が、そんな事は構わず 太ももを撫でた。
次第に上へ上へと…、潜りこませた手で オバサンのお尻を撫でまわした。
「何か痴漢されてるみたい」
オバサンは俺の耳元で小声で言った。
「あるの?、されたこと」
「…教えない」
オバサンは『にっ』と笑っていた。
『こっからどぅしよう?』
そんな事を考えてると呼びだしのアナウンス。
先生に診察してもらい、ギプスを取る為に処置室に入ろうとした時『お母さんは外で…』、看護婦さんが そぅ言っていた。
ベッドに寝かされ、カーテンで仕切られ、俺の腕はカーテンの向こうに。
男の技師さんがギプスを外してくれた。
ギプスを取る時には 電動工具が回る音がしていて、その音にかなりビビってしまった。
看護婦さんは 俺が腕を動かさない様に それと俺を怖がらせない為 俺の手を しっかりと握ってくれていた。
筋肉が落ちて 痩せ細った腕。
所々 黒く変色もしていた。
看護婦さんは 前のめりで 優しく アルコールか何かで拭いてくれた。
スタンドカラーの白衣、胸元は閉じられていたが オバサンよりも大きそうな胸が 時々 俺の手に当たる。
看護婦
「痒いよね?、帰ったら良く荒ってね」
「でも、あんまり強く擦っちゃダメよ」
「はい」
看護婦
「山根くんは大学生?」
「いえ、高1です」
看護婦
「ホントにぃ?、背も高いし。そうなんだ?、ゴメンね、看護婦さん てっきり…」
「そう、高1なんだ」
気のせいかもしれない、看護婦の胸の圧が若干強くなった気がした。
後でオバサンに話したら『からかわれた のよ、そんなの』と言いながらも 少し『ムッ』としていた。
看護婦
「明日から、マッサージとリハビリだから ちゃんとくるのよ」
「右手が使えるようになったからって あんまり無茶な事しちゃダメだからね、フフフ」と、
確かに からかわれて いたのかもしれない。
「お母さんだって ふふふ」
帰りの車、開口一番オバサンが笑っている。
俺は肘の辺りが痒くて痒くて 太ももどころでなかった。
「そんなに痒いの?」
「まぁ『垢』がたまるのも無理ないけどね」
「どぅしようか?」
「ちょっと見せて健ちゃん」
俺はパーカーの袖をまくった。
「ちょっと どうしたのそれ!?」
「そっか、筋肉が落ちちゃったんだ、『骨と皮』ってこの事ね、可哀想、健ちゃん」
「洗ってあげる、オバサン」
「でも、お腹もすいたでしょ健ちゃん。どぉしようか?。コンビニ弁当でもいい?」
「はい、何でも」
「じゃあ、取り敢えず お弁当買お、ね」
コンビニで弁当を適当に選んで車に戻った。
帰り道が若干違う気がした。
オバサンは市街地を抜けて川沿いを走った。
ポツンポツンと農家らしき大きなお屋敷があった。しばらくすると ブロック塀で囲われた大きなお屋敷が出てきた。
が、『お屋敷』とは幾らか雰囲気が違う。
ブロック塀の中には赤い屋根が幾つも見える。
『???、何だここ?』
青地に白抜きの『空』の看板、それが見えた瞬間 オバサンはそのお屋敷の門に入った。
入ってすぐに植木、その植木を右にまがった。
オバサンの運転する車に乗せて貰ったのは今日が初めてだが、この時ばかりは『植木にぶつかる』そぅ思ってヒヤッとした。
赤い屋根の小さな2階建てが 幾つも並んでいて、下半分は車庫になっていた。
オバサンは その1つに車を停めた。
「行こ、健ちゃん」
そそくさと降りたオバサンが 玄関横に立て掛けてあったボードで車のナンバープレートをかくした。
『そうか、ここが…』
初めて入るラブホテルだった。
玄関に入って 靴のまま階段を登った。
またドアが有る。
オバサンは そのドアから入ると『パチンパチン』と部屋の灯りをつけた。
「何処だか解る?、解るよね?」
「うん」
「何の為の…、かも(解る)?」
「うん、なんとなくは…」
「初めて?、健ちゃん」
「うん」
「そっかそっか」
「で?、食べる?、洗う?、どぅする?」
俺は『どぅする?』の中に『する』も含まれているもんだと思いこみ 返事に戸惑ってしまった。
「緊張してる?」
「そぅだ、お風呂溜まる間に食べちゃおっか?、ね、そぅしよ健ちゃん。オバサン お風呂汲んでくるから」
小さな丸いテーブルに コンビニ弁当とバッグを置いたオバサンが2つ有る扉の1つに まよわず入っていった。
と、すぐにシャワーの音がした。
「お風呂 汲んでるから」
「ほらっ、チンして食べよ 健ちゃん」
『初めてじゃないんだ オバサン、ここ』
『…あのワゴン車の…。』
そんな事を考えていた。
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