ナツナにここまで言われて、はねつける訳にはいかない。
ナツナを傷つけたくない。
どうしたらいいのか?
俺が本気でナツナを好きになれば、、、
それなら、ナツナを利用したことにはならないんじゃないだろうか?
利用はしない。
もしもナツナが心の底から俺を求めているのなら、俺はただ真剣に応えればいい。
でもそれを急いではいけない。
自分にそう言い聞かせる。
「わかった、、、相談するときはナツナちゃんにする、、、それでいいだろう?」
「はい、、、」
ナツナは嬉しそうに、それでいてどこか物足りなさそうなぎこちない笑みを浮かべていた。
店を出て二人で並んで歩く。
こんなにいい女が自分を慕ってくれている。胸がときめき、恋する気持ちが溢れてくる。
それと同時に、ふと俺の思い過ごしだったらという不安が頭をもたげてしまう。
それでもいい、俺はナツナのことを大切にしたい、そう心に強く思う。
人通りのないところで立ち止まり、ナツナを熱く見つめながら優しく手を握る。
「あっ、、、」
驚いた声をあげて、ナツナが見つめ返してくる。
しかしナツナは握られた手を振り払うこと無く、強く握り返してくれた。
「今日はありがとう、、、少し気が楽になったよ、、、、それにナツナちゃんの気持ち、、、すごく嬉しかった、、、」
「わたしも、、、タカシさんと話ができて、、、すごく嬉しかったです、、、」
さっきよりも顔を赤くして瞳を潤ませている。
今ナツナを抱きしめたら、ナツナはどうするのだろう?
腕を振り払い、逃げるように立ち去るのだろうか?
それとも瞳を閉じて、唇を受け入れ、舌を絡ませ合うのだろうか?
俺は自分の欲望を必死に抑え込んだ。
ナツナを大切にすると決めたばかりだろう、、、
後ろ髪を惹かれる想いで、再び逢う約束をして別れを告げる。
ナツナはガッカリしたような、それでいてホッとしたような複雑な表情を浮かべていた。
でもそれも俺の自分に都合のいい思い違いかも知れない。
恋は人の気持ちを不安にするものだということを俺は思い出していた。
つづく
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