「そんなふうにアイツは言っていたのか?」
「違うんですか?タカコ、タカシさんが許してくれるまで、頑張るって、、、タカシさんを愛しているから、もう二度と浮気なんてしないって、、、涙を流して言っていました、、、」
何を今更、、、それに書類上はもうすでに離婚している。
「どうなのかな、、、アイツ、俺に知られたから浮気をやめただけで、、、知られなければ、まだ続けていたと俺は思う、、、」
「そんなことは、、無いと思います、、、信じてあげて下さい、、、わたし、タカシさんは関係無いと思うかも知れませんけど、二人には幸せになって欲しいんです、、、」
もうなれないよ、、、
心の中で断言する。
「俺たちのこと思ってくれるのは嬉しいけど、、、もうこの話はよそう、、、」
「そうですね、、わかりました、、、でも、タカシさん一人で抱え込まないで下さい、、、辛かったら、わたしに何でも話して欲しいんです、、、何も出来ないかもしれないけど、二人の力になりたいんです、、、」
自分のことではないのに、すがるような目で真剣に訴えかけてくる。
ナツナは本当にいい子なんだな、、、
自分のことしか考えられないタカコとはえらい違いだ。
でもいくらそう言われても俺の気持ちは決まっている。
「いや、それはやめておくよ、、、ナツナちゃんに迷惑はかけられないし、、、タカコに筒抜けになっちゃうから、、、」
「そんなことしません、、、、だって、、わたしにとってもタカシさんは大切な人だから、、、」
「有り難いけど、それは俺がタカコの夫だからだろう?タカコの為なんだろう?」
「それは、、、そう、、、、ですけど、、、」
ナツナにしてはいつもの歯切れの良さが感じられ無い。
そして何故か頬があからんでいるように見える。
「でも、わたし本当に心配なんです、、、タカシさんが辛いことがあったら、何でも話して欲しいんです、、、タカコには絶対に言いません、、、今日のことだって絶対ない秘密にします、、、二人のこともそうですけど、、わたし、、、タカシさんが離れていってしまうのがイヤなんです、、、」
えっ、それって、、、まるで告白みたいじゃないか?
まさかそんなことあるはすが無いよな、、、
「そんなふうに言われたら、俺、誤解しちゃうぞ、、、」
張り詰めた雰囲気に耐えきれず、ちゃかすように言い返す。
「誤解、、、じゃ無いかも、、知りませんよ、、、」
「うっ、、、」
驚きで思わずナツナを見つめてしまう。
ナツナは強い瞳で見つめ返してきた。
今思えばタカコと交際していた頃、ふとナツナがタカシのことを男として意識しているのではと、その仕草や言葉のはしから感じたこともあった。
でもタカシはまさか自分の気のせいだと思っていた。
そして自分もナツナへの好意はいけないことだと封印してきた。
でもこの状況でどういうわけかナツナが、自分の秘めた想いを表に出そうとしているようにに思えてしまう。
俺にも封印したナツナへの想いがある。
確かにそんなことはあり得ないかも知れないが、もし俺とナツナが男女の関係になったら、タカコは計り知れないショックを受けるだろう。
一番信じている親友に夫を奪われるのだ。
そしてそれは俺にとって、最高の報復になる。
でも俺はナツナをそんなことのために利用したくはなかった。
「すごく嬉しいけど、やっぱりナツナちゃんに迷惑はかけられないよ、、、気持ちだけ受け取っておくよ、、、」
「いやです、、、わたし、タカシさんが一人で悩んでいるのを見ているのが辛いんです、、、正直言ってわたし、タカコのしたこと酷いと思います、、、だから、わたしに出来ることなら何でもしたいんです、、、苦しくて相談するのならわたしにして欲しい、、、他の人になんて、絶対にイヤです、、、」
もうこれは告白だと思った。
ナツナの中で親友への思いと、その夫への秘めた想いを、その親友の夫への裏切り行為がその均衡を打ち崩そうとしているのかも知れない。
つづく
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