倉木ナツナ。
タカコと同期の入社で、年も同じく29だ。
そんなこともあって、タカコが会社を辞めたあとも二人は今でも仲の良い友人だ。
以前はよく家にもタカコを訪ねて遊びに来ていた。
ナツナはまだ独身だが、かなりの美形だ。
いや正確に言えば、美形と言うよりは可愛いタイプなのかも知れない。
タカコがまだ会社にいた頃、二人は男性社員を二分するほど人気があった。
美人のタカコと可愛いナツナ。
性格もタカコが陰なら、ナツナは陽。
ある意味対照的な二人は何故かウマが合い、お互い一番の親友と言っていい関係だった。
そんなナツナに声をかけられ、二人はとあるカフェで向かい合っていた。
こうして目の前にすると、正直改めてナツナのその魅力に視線が吸い寄せられる。
小さな顔にバランス良く整った、親しみを覚える優しい顔立ち。
ライトブラウンに染められたショートめの髪型が、更にその可愛らしさを引き立てている。
背はタカコより低めだが、胸と尻はタカコ以上に張り詰めていてスタイルも抜群で、女性とのしての魅力に溢れていた。
正直言って、タカシはタカコと交際しているときも男としてナツナに惹きつけられる気持ちを感じたこともあったぐらいだ。
そして、当時、ナツナはタカコよりも男性社員に人気があるとタカシは常々そう思っていた。
そんなナツナだったが、あまり異性関係で浮いた話は聞いたことが無かった。
こんなに魅力に溢れた女性だから、恋人の一人や二人はいたことがあるのだろうが、タカシはよく知らない。
まあ親友のタカコは知っているとは思うのだが、タカコからもそういった話は聞いたことが無かった。
「ナツナちゃんとこうして話すのは久しぶりだね、、、」
「本当にそうですね、、、」
「ところで、俺に話って何かな?」
「すいません、、、わたし、最近タカシさんが何かふさぎ込んで考えごとばかりしているのを見て、心配でタカコに聞いたんです、、、」
「そうか、、、」
「わたし知りませんでした、、、タカコが浮気をしていたなんて、、、」
そうだろうなと思っていた。
「わたし、怒ったんです、、、どうしてタカシさんみたいな素敵なご主人がいるのに、そんなことをしたのって、、、」
タカコはいったいどこまで本当のことをナツナに話したのだろう?
「タカコ、後悔してました、、、タカシさんに不満があった訳じゃ無いって、、魔が差したんだって、、、流されて関係を何回か続けてしまったって、相手とは別れようと思っていたと言っていました、、、」
確かに最初はそうだったかも知れない。
でもあとは違う。
アイツは自分から男を誘い、進んで躰を開いた。
そして何回どころではない、何度も何度も、終いには家の中にまで男を引きずり込んで。
都合のいい言い分に怒りがこみ上げてくる。
しかし、女の友情はそういうものなのかも知れない。
親友同志といえども女のプライドがある。
都合のいいように、少しでも自分を美化して話すものなのかも知れない。
男とのセックスに溺れ、相手の子供を妊娠したら、夫を誤魔化そうとしていたなどと決して口にしたりしない。
タカコはおそらく自分の都合の悪いことはナツナに話してはいない。
タカシはそう確信した。
つづく
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