何度も何度も口へと運ぶグラス。飲めないお酒に苦労している訳ではありません。そうでもしないと、おばさんとのこの間が持たないのです。
そんな僕のことなどよそ目に、おばさんはソファーでくつろぎながら、グラス片手にテレビを観ています。
僕もテレビに視線を向けてはいますが、気が気でないのは当然のこと。今、ここでくつろいでいるおばさんと、これから性行為を行う訳ですから。
自然と目はおばさんへと向けられ、彼女の観察を始めてしまうのです。
高瀬のおばさん、61歳。中肉中背、特に美人でもない普通のおばさん。肩までの黒い髪、黒い眉は太目、肌は少し色黒、首の左側に大きなホクロがある。
小学4年の頃から知っているおばさんである。こんな情報など、ずっとずっと前から知っている。
しかしこの時の僕は、その一つ一つを確認でもするようにおばさんを見てしまっていました。
『涼ちゃん、彼女は~?』
テレビを観ながらも、僕に声を掛けてきたおばさん。しばらく会話のなかったため、僕は少し焦ります。
『ちゃんといますよ。』、これまではいつもこの言葉でウソをついてきた。居もしないのに、そう言って自分を守って来たのだ。
『いません…。僕、あんまりモテないんで。』
しかし、この時は素直に言ってしまっていた。この後、おばさんと何かあることは分かっていて、それを考えれば正直どうなるのかは怖い。
ウソをつけば、もしかしたら回避することも考えられ、またいつものように自分の部屋へと戻ることが出来るかもしれない。そんな葛藤もあった。
『なんでよぉ~?涼ちゃん、男前なのに~。』
それなりの顔はしていると思う。お世辞気味におばさんに『男前』言われても、どこかで『でしょ?』なんて思ったりもしてしまう。
それでも、『そうですかぁ~?』と遠慮気味に答えていました。
『それ、もう飲まない?』
ソファーから腰を上げたおばさんは、僕の顔を見ながらそう聞いて来ました。
半分も飲んでいませんでしたが、『うん、もういいです。』と答えてグラスを渡します。それを受けとると、おばさんはキッチンへと消えるのでした。
再び現れたおばさんの手には、布巾が握られていました。そう汚れでもないテーブルを拭きながら、さりげなくこう言うのです。
『涼ちゃん?涼太って、女の人の経験とかない?』
※元投稿はこちら >>