ビールを片手にテレビを見ながら到着を待った。
おそらく10分経つか経たないかくらいでノックする音が聞こえた。
ゆっくりドアを開けると、上下スエットでやや小太りの男性が立っていた。
「〇〇〇です。料金15,000円になります。」
用意していたお金を渡すと、聞き取れないくらいの早口で注意事項なるものを読み上げていた。
「ではれいさんです。」
後ろからすっと俯き加減で入ってきた女性は、マスクを着けていたが、身長170センチのスレンダー体系で黒髪のきれいな女性だった。
「おお、いいな」と思った瞬間、緊張が走った。
マスクを外して顔を上げたのは、間違えなく妻の親友のまゆみだった。
「まゆみちゃん!?まじ!?」
「けんじさん・・・・」
驚いた。まさかだった。まゆみは妻の高校の同級生。個人的にまゆみのご主人の仕事でお世話になる機会もあり、子供が生れる前は野球観戦やディズニーランドにも夫婦同士で遊びに行くほど親しい間柄である。久しく会っていなかったが、よそよそしい感じはなかった。
まゆみは心臓に持病があり、国から難病の認定を受けている。子供を産む体力がない分、夫婦の時間を大切にしているが、ご主人が会社では役員ポストについていることもあり、出張で不在にすることも多い。
「アルバイトしていることは聞いていたけど」
というと、まゆみはその話を遮るように、「このことは絶対内緒にしてくださいね!!」
うん。それはお互い様である。言うまでもない。
それにホテルの一室で2人でいることに不自然はなかった。ただ、たまたま会って、部屋に遊びに顔出したといっても、疑う人は誰もいないような関係である。
自分の好みにピッタリの人が来たことに間違いはなかった。まゆみは昔から本当にきれいな女性で、正直自分のタイプだったのは間違いない。脚が細く、腰のくびれもいい。黒髪のきれいなセミロングで、芸能人に例えると清楚系にした大島優子のような感じである。友達関係でなければ喜んでいたところだが、今はそんなことを考えることもできなかった。
「まぁ、遊びに来たと思って、時間までゆっくりしていけばいいよね。」「下のコンビニでなんか買ってこようか。」
無言の時間が出来ると、その空気に耐えられなくなりそうで、なんとなく話をつなげようとしている自分がいた。
「でもお金払ってもらっているし」
申し訳ない思いなのか、それとも仕事として割り切っているのか。なら、キャンセル扱いにすればいいのでは?まだ数分しかたっていないから、キャンセル料払えば負担が少なくて済む。でも、そうなると友達を厄介払いすることになる。どうしたらいいのかわからなくなっていた。
「それはそれでいいじゃん。俺はそれで割り切れるから大丈夫だし」
そういって間もなく、まゆみは私の座っているベットの横に座り、
「けんじさん、わたしじゃだめですか?」
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