翌朝、頭に響くようなベルの音で目が覚めた。目覚まし時計を止め時間を確認する。六時半を指していた。いつもならまだ寝ている時間であるが、昨夜考えた作戦の決行であり何時もより早起きをした。既に窓のカーテン越しからは朝の陽光が差していた。急ぎ制服に着替えると朝食もそこそこに家を出た。自転車に乗るとゆっくりと彼女の家に近づいて行く。いつもなら外で花壇に水やりをしているのだが今朝はまだ姿を現していないようだ。(早かったかな…そう上手く行かないよな…) また家に戻ると辺りを意味も無く歩き回った。10分ほどして再び自転車に乗って他人の庭を伺った。ちょうど彼女が出て来たところだ。自転車に加速を付け家の前まで漕いだ。『おはようございます!』おばさんに声を掛けた。黄色いTシャツにレギンスとか云うのだろうか、タイツのようなズボンを履いている。『あら、涼介君!今日は早いのね。もう学校に行くの?』驚いたように言葉を返して来た。『学校はまだ…。実はおばさんに御願いがあって…』『私にお願い?何かしら?』唐突の言葉に戸惑っている様子である。『実は学校に研究レポートをださなくちゃならないんです。夏休みのですけど…それで、迷ったんですけど、おばさんの向日葵を題材にしたいと思って』俄かに作った話しであるが、さも困った素振りで説明をした。『研究レポート?そんなのあるんだ?小学生なら、夏休みの自由研究ってあるけどね?高校でもするの?』『そうですね…僕の場合は、何かテーマを考えてそれを論文形式って言うか、報告書みたいなものなんですけど…』流石に言い訳も苦しくなっていた。自分でも何を言っているのか分からない状況であった。『でも、そう云うものなら、種を蒔くところからでないと…途中からでも大丈夫なの?』確かにモノの成長を記録するには基本的なところからであろうが、今となっては仕方が無い、『はい、大丈夫です。おおよその所は文献とかで調べますから…途中の生育を観察すると言うことでやりたいと思います。挿し絵代りに写真とかも欲しいし…』彼女は僕の話しを聞くと、『そう言うことなら、私にも異存はないわ。良いわよ。』『ありがとうございます。助かります…すみません、おばさんの趣味に便乗するようで…』そう言って頭を掻く素振りを見せた。[
※元投稿はこちら >>