「玲子さん。お客さん集まってますよ!十名限定なので、抽選になりました!
玲子さんが気に入りそうな方を厳選しますからね。」
菅原が、どんな宣伝をしたかはわからないが、朗読会に参加希望者はいたらしい。
数千円とはいえ、有料で、アイマスク着用のイベントにそんなに人が集まるなんて、ありがたいことだ。
アクセスが良く、防音完備、ということで会場は以前、橘 海斗と写真を撮ったスタジオで行うことになった。
どんな雰囲気にしようか。
照明は暗めにし、アロマをたいて、ヒーリングミュージックのBGMを流してお客様を迎えるのはどうかな。。。
結局、自分でも夢中になってあれこれ考え、当日を迎える。
そして、朗読会当日ーーー
受付と客入れは菅原が取り仕切ってくれたので、私は奥の小部屋で待機している。
準備はできているのだが、緊張しているせいか落ち着かない。
私は楽屋がわりのパーティション裏から会場を覗き見る。
うわぁ。。。
本当に、お客さんが入っている。
私が座る椅子を取り囲むように、半円状に10脚の椅子が並べられている。
そこに、既に7人ほど座っている。
あっ、また1人。。!
お互い顔を見られるのが嫌なのか、お客さんは皆、既にアイマスクをつけている。今、来た人も、座ると同時にそれに倣っている。
数分後、菅原から声がかかる。
「玲子さん、お客様、全員みえました。始めてください。」
私はもう一度だけ鏡を見て、ベネチアンマスクがずれていないか確認し、会場に向かう。
!!!!
怖い。。。
朗読をする椅子に座って、改めて顔を上げると、真っ黒なアイマスクで表情の見えない男達に、ぐるりと取り囲まれている錯覚に陥る。
私は、落ち着くためにペットボトルの水を一口飲んでから話し始める。
「皆様、こんばんは。本日は玲子の朗読会へ足をお運びいただき、ありがとうございます。そして、いつも私の作品を聞いてくださってありがとうございます。
今日は直接、皆様の前で朗読させていただく、ということで、新作を書いてまいりました。
タイトルは『人妻 玲子の白日夢 ~夜の遊園地~』です。どうぞ、聞いてください。
気のきいたことも言えないので、挨拶もそこそこに、すぐ朗読を始める。
「。。夜の遊園地。。。」
(続)
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