メニューを見ても、こんな高級ホテルの料理なんか、良く分からない。
そう思ってメニューを見ていた茉莉香の目が、一つの料理の写真で止まった。
オムライス。
チキンライスを薄焼き卵で包んで、ケチャップを掛けた、お子さま向け料理。
亡くなったお母さん、よく作ってくれたな..。桃香もオムライスが好きで、茉莉香は時々桃香に作ってあげる。
でも、今は桃香に作ってあげても、奴隷だから自分では食べられない。
「あの..」
「あっ、何か食べたいのあった?」
「オムライス..、頼んで良いですか..?」
すごい少女らしい、可愛い表情だった。
はにかみと、遠慮とが、複雑に絡み合って、やっと口に出た言葉だな!
「おっ、オムライス、あったの?
よし、僕もそれにする!」
真はルームサービスを頼んだ。
「スープはポタージュ、メインがオムライス、デザートにプリン.アラ.モード。
それを二人分頼むよ。。
飲み物はオレンジジュース。
アルコールは要らないからね。」
てきぱきと電話すると、真は本当に嬉しそうな表情になった。
「僕もオムライス、好きなんだ。
子供の時、お母さんが何度も作ってくれてた。」
「スープもね、レストランとかでお父さんお母さんと食べる時、二人はコンソメ、僕だけポタージュだったんだ。
それと、プリンも大好きだった!」
茉莉香は、つい話に乗ってしまった。
「お母様、お料理がお上手だったんですね。」
「うん、でも僕が8才の時に、お父さんと事故で死んじゃったよ。
あと2ヶ月生きてたら、僕に弟か妹をプレゼントしてくれる筈だったんだけどね。」
茉莉香は、まずいことを聞いたと思ったが、真は全く気にしてないどころか、その頃の事を懐かしむように次々と話し出した。
ルームサービスが届き、真が食べやすいようにと、茉莉香は自分の分をテーブルから下げた。
「何で、一緒に食べないの?
奢ってあげる人のわがまま言うよ。
君もテーブルで食べて!」
こうして、茉莉香は、本当に久しぶりに、誰かと向かい合って食事をすることになった。
裸に、ホテルのふわふわのバスローブを着せてもらってる。
いつも、家では寒くても下着姿なのに。
真は直ぐに食べ始めたが、茉莉香はなかなかスプーンを、オムライスの薄焼き卵に指し込めなかった。
真から促されて、やっと一口食べてみた。
懐かしい味、香り、暖かさ..。
それからは、茉莉香は夢中でオムライスを食べながら、大泣きし始めた。
泣いて食べられないのではない。
えーん、えーん、と子供のように泣きながら、それでもスプーンでオムライスを口に運んで食べていた。
思春期のお嬢さんが、そんな姿はみっともない筈なのだが、真にとってそれは、本当に愛らしく思えた。
食べ終えても、茉莉香はしばらく泣き続けた。
真は、何も言わずに、ただ見守ってあげた。
「ここては死なないって言ってたよね。
明日の朝までは、大丈夫かな..」
そう言うと、まだスンスンとすすり泣いてる茉莉香を残して、自分だけ先にダブルベッドに横になった。
やがて茉莉香が、バスローブを脱いでベッドに入ってきた。
「あの、私、どうしたら...?」
と聞く茉莉香に、真は
「オムライス、美味しかったね。
また、食べようね。」
と言うと、強引に眠ったふりをしたつもりだったが、そのうち、本当に眠ってしまった。
夜中に、真ははっと目が覚めた。
横に茉莉香が寝ていない!
ヤバいのか?
部屋のメインのルームライトは消えているが、どこか明かりがついている。
落ち着いて見渡すと、備え付けのデスクのスタンドがついていて、そこに机の上に頭を着けて寝てしまった茉莉香の姿があった。
顔の下には、中学1年の数学の教科書が敷かれていて、横には途中まで解かれた式が鉛筆で書かれたノートが開かれている。
小さな唇が開いて、少しよだれが流れ出ている。
これも、お嬢様の姿じゃないけど、何でもこんなに可愛いんだろう?
取り敢えず、よだれで教科書が汚れないようにと、真は茉莉香の身体を抱き抱えて、ベッドに移した。
抱き抱える時に、こんないつも神経を研ぎ澄ましてる少女だから、目が覚めるかもしれないと思ったが、意に反して、ぐっすりと眠ってくれたままだった。
まあ、死のうと思ってる少女が、数学のベースはしないだろう。
真は、今度は安心してぐっすり眠った。翌朝、残念ながら、茉莉香は元の感情の無い人形に戻ってしまっていた。
「昨夜は、申し訳ありません。
貴方様のお楽しみに、何も役に立ちませんでした。
お休みの後にも、私が勝手に自分のことを仕掛けて、挙げ句、ベッドに運んでくださって..。」
そんな茉莉香を、真は学校まで強引に車で送って行った。
「助手席じゃだめ!
後ろに、偉そうに座って!」
そう言って、茉莉香を後部座席に座らせ、学校の近くまで来たら、真が先に運転席から降り、茉莉香の座ってる席のドアを外から開けてあげた。
「行ってらっしゃいませ。お嬢様。」
これでこの子は、今日中には逝かないだろう。
真は、茉莉香とエッチしなくても、十分楽しめた。
それと、自分はSでもあるが、それより重度のロリコンだと、はっきり理解できた。
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