淡々と・・訥々と詳細な経緯を隠すことなく、ただし可能な限り客観的な事実として語り続ける姉。
父を貶めるつもりもなければ、己れの傷心ぶりをアピールする気もさらさらない。
ただ事実を共有することだけが目的であった。
頬を強張らせながら、妹は無言で姉の話に聞き入っていた。
語り出した時には高い位置にあった太陽。
だが、語り終えた時には既に黄昏時に近い。
姉は全てを語り終えると言葉を切った。
室内を沈黙が支配する。
その沈黙を破ったのは妹の嗚咽であった。
肩を震えさせながら泣き続ける妹。
姉は無言のまま妹の横に身を寄せて座る。
・・ごめんなさい・・。
繰り返し謝り続ける妹に対して、何ら言葉を返すこともなく横に座り続ける姉。
ただ、その手だけが泣き槌る妹の肩を優しく抱いていた。
父との別居から半年。
姉妹の生活と関係は急速に復していく。
二人の暮らすマンションのリビングで、またはダイニングでは、時に笑い声が漏れることすらある程に。
コダマは高校を卒業し大学に進学する。
もともと成績の良いコダマは、家から通える範囲の大学に推薦による入学を果たしていた。
ヒカリは進級し中学三年生となる。
素行が改まったとはいえ、過去の振る舞い故に教師からの内申書評価が低い妹は、せめて試験の成績で巻き返そうと必死だ。
二人の生活における暗黙の了解、それは父に関することには触れないというものであった。
全てを知った妹は、それでも事実を受け入れ切れていなかった。
だが、結果から考えれば姉の話は辻褄が合っていたし、不審に感じていた父と姉の関係性にも納得がいく。
結果、姉の話は受け入れざるを得ない真実として、妹の前に横たわっていた。
何よりも妹を守る為の防波堤として、己れの貞操を犠牲にした姉を、この件により、これ以上傷付けるには忍びなかったのだ。
大学生になり時間の自由が利くようになったコダマは、ヒカリに内緒で或る計画を実行に移す。
勿論、彼女の中にも躊躇いはあった。
だが、コダマには他の選択肢から解を選ぶつもりは、さらさら無い。
いや、そもそも他の選択肢は視野に入っていなかったといった方が正解かもしれない。
或る土曜日、それはヒカリが模擬試験に出掛けた朝であった。
かねてからの計画通り、外出の支度を整えたコダマは駅に向かう。
隣の駅で降車すると、住所を頼りに一軒のアパートを探し当てたコダマ。
ノックに応えながら顔を出した住人の顔が引き攣った。
幾らかの押し問答の末、住人はコダマを、、義娘をアパートに上げる。
途切れがちな近況報告を互いに済ませると室内が沈黙に支配された。
沈黙を破ったのは義娘であった。
「結局、お父さんは・・」
遠回しな質問、或いは確認事項。
義父の男性機能は復したや否や?
おどおどと視線を逸らせ、口籠もる義父。
だが、義娘にとって義父の機能回復なぞ、さほどの問題ではなかった。
立ち上がった義娘は、ゆっくりと立ち上がると、話しながら服を脱ぎ始める。
「あたしもね、お父さんと一緒・・」
義父との交わりでしか満足出来ない。
乱暴な性行為でなければ昂ぶらない。
そう言って一糸纏わぬ姿で義父の前に立つ義娘。
その獣の眼は淫猥な輝きを漲らせていた。
完結
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